第一話 出会いと別れ
「ここちゃん天国いっちゃったよー……」
夜中十二時頃、突然母からの電話だっだ。
十六年前飼い始めた愛犬が他界したのだ。
僕は上京していた為、急遽帰ることもできず最後のサヨナラを東京で告げることになった。
愛犬のこころは僕がまだ十六歳の高校生だった今から十六年前の話だ。今は亡きじいちゃんが知り合いの繁殖場から連れてきたメス犬で、片目がブルーだから売りに出せないという理由で、産まれてまだニ週間足らずでもらってきた赤毛のミニチュアダックスフンド。
僕の家庭は父親の借金が理由で離婚している為、母と妹と僕と三人暮らしだった。
母子家庭でお金も厳しい状況で、母は実家が営む縫製業と水泳のインストラクターと居酒屋の掛け持ちで毎日必死に働いていた。
そんな中ポツン現れたのがこころだった。
母とこころは十六年間ずっと付き添ってきた硬い絆で結ばれた運命的出会いだと言っても過言ではない存在だった。
そのこころが肝臓の病気で母の寝る側で静かに眠る様に息を引き取ったのだ。
食欲旺盛だったこころが急に食べなくなり嘔吐もするし様子がおかしいと母はいつもお世話になっている動物病院へ向かった。
そして院長からこう告げられる。
「このままだとお盆までもたない。肝臓に合う注射が敵面したら食欲もでるし症状もおさまるから毎日来てください。毎日合う注射を試していきましょう!明日はお休みですが来てください!」
お盆となればニ週間もない間に注射が敵面しなければ覚悟をしなければならないということだ、
母は愛すこころの為最善を尽くしてきた。
なかなか症状は変わらずで、とうとう最後の注射となった。
しかし症状は治ることはなかった、、、。
その夜 、「ここちゃんどうだった?」
僕がそうテレビ電話で告げると妹のサキは「全然症状変わらずやし心の準備やな…」と告げる。
その夜テレビ電話からは、ここ二・三日は多少苦しそうであったが、こころの元気そうに尻尾を振りお尻をプリプリしながら応接間を歩いている姿が見えた。二十二時半くらいのことだ。
妹は実家から直ぐ近の場所に住んでいて子供も旦那に預けてきていた。
何かあれば直ぐに駆けつけられる場所だ。
「子供旦那に預けてきてるし、心配やけどまた明日来るね」
そう告げテレビ電話は終了した。
電話を切る前、画面の向こうから最後に見えた映像では、お母さんが寝ようとしている布団の側で、こころもいつもの寝る体制に入っていた。
僕はその映像がこころが生きている最後の姿となる。
元々お盆に里帰りする予定を7月当たりに考えていたが、こころに会えずの里帰りとなった。




