6 一石三鳥猫一丁
しまった。完全に二度手間だ。二度手間だってことは気づいていた。
気づいてたのに。。
1デシベル聞き漏らさなかった説明によると、どうやら依頼のキャンセルはお金を払わにゃできないらしいので、渋々人を探す。
「でも、召喚者探すついでに人も探して依頼の人を探したらお金ももらえるし、一石三鳥じゃね!?」
蓬は混乱している。
「ヘイ姉ちゃん!」
後ろから陽気な声が辺りに響く。
びっくりして振り向くと、だいたい店1個分後ろからフードを被った(声から推測して)女の子がぶんぶん手を振っていた。
顔は薄暗くて見えないから不気味だ。
今、私の周りには人がいないので私に手を振っているようだった。
でも、心当たりは全く全然これっぽっちもないし、忙しいのですぐにまっすぐ歩き始める。
「姉ちゃんってば!」
しつこく話しかけてくるので、話を聞かない方がめんどくさいと考え、立ち止まり後ろを向き彼女を待つ。
「人探してるんでしょ?」
足元をピチャピチャと音を立てながら正面まで歩いてくる。
「探してるけど、何でですか?」
「いや、姉ちゃんがさっき女の人と話してるのが聞こえてさ。」
ベルとの話しが聞かれてたのか。
でも、周りに人はいなかったはずだが?
「立ち話もなんだからさ、あそこの店入ろーよ。」
昨日入ったピンクの外装を指差して言う。
ここまでペースに乗せられたら、最早反論はできない(私基準)。
「ここ一回来てみたかったんだよね。」
大きな看板を見ながら彼女は言う。
「あの、お金ないんですけど。」
この世界の通貨は0だ。
「しょうがないな。お金なら立て替えるから、私の頼みも聞いてね?」
店に入って席へ案内されると、彼女はフードを取った。
頭には黒い長い髪三角が生えて?いて人間じゃないことが分かるが、顔は整っていて可愛らしかった。
何故私の周りには美少女が集まるのか。
類は友を呼ぶからか?(自意識過剰)
私の視線に気づいたらしく、さっきまでの元気はどこへやら、申し訳なさそうに話し始める。
「この耳でわかったかもなんだけど、私は魔族なんだ。姉ちゃんびっくりした?」
「うん。びっくりした!すごいかわいいですね!」
嘘偽りのない純粋な感想だ。
「あ、ありがと!」
やや俯きつつ彼女は答える。かわいい。
「そ、そういえば自己紹介がまだだったね。私はテンマル。よろしくね。」
「私は蓬。単刀直入に聞くけど、何で私を呼んだんですか?」
「いや、実は私も人を探してて…」
蜂蜜をかけたホットケーキを頬張りながら言う。
「ついでに一緒に探して欲しいと?」
「ん、姉ちゃんがギルドから受けた依頼は私がギルドに頼んだんだ。」
どうやら、名乗った後でも姉ちゃん呼びは変わらないみたいだ。
「だから、一緒に探して?」
結局一緒に探すんかい。
けど、人手が増えるならこっちとしても願ったり叶ったりだ。
すると、答えは1つ。
「もちろん。」
「ありがと。」←かわいい。
横を歩いている彼女を靭ほどではないが体格が全体的に小さいからかわいく見えるのだと1人で分析しつつ納得していると、
「このへんで探している人の情報の確認だけいい?」
と、2本に別れた尻尾を大きくゆっくり揺らしながら聞いてくる。後で触っていいか聞こ。
耳の方もさっき私が褒めたからか、フードで隠していないから非常に触りたい。
そんな欲求を押さえつつ
「うん。お願い。」
と、短く答える。
結局、ギルドの依頼の紙に書いてあったことを互いに確認し合っただけだった。
だが、ギルドの情報も信憑性があることが自分で確かめられたので小さくはあるが進歩だろう。
彼女…テンマルとは手分けした方が速いという結論に早くも至り別れた。
別れる時に、子猫の様な目で見てきた時にはさすがに良心が傷んだが、そのことは一旦忘れて通行人や店の中にいる客など目を凝らして探す。
すると、道の真ん中で男の人と話しをしているベルを見つけた。
魔族。
テンマルはどうやら地方の伝承によれば猫よりてんの方が姿としては正しいのだとか。
しかし、よく火車と同一視されるのでテンマルと命名致しました。