4 もしかして:能力 ない
ギルドへ向かってまっすぐ歩いて数分。
ここの地理はちんぷんかんぷん。
疲れて歩きたくない当分。
イェー。
そういえば、さっきよりもここは多く人が行き来していて、その中には鎧を着て剣を腰にさしている人も珍しくなくなってきた。
ベル曰く、もう着くらしい。
ベルの近いとか、遠いとかはあまり当てにならないことがこの短時間でわかった。
そういえば、「ギルド」という物が具体的にこの世界でどういうことをする場所かは考えていなかったが、私の浅はかな知識から導き出すと魔物の討伐や薬草の採取の依頼を冒険者にするテンプレ的な施設?であっているのだろうか?
「そういえばヨモギ、ギルドというのは···」
ベルの話しを聞くに合っているようです。はい。
別に遠い訳ではなかったのだが、足が地味に痛い。足を休めるため片足を上げて足首をプラプラーとしていると、ベルがかなり大きめの建物の前で立ち止まる。
ここからベルまで10M程度離れていたので小走りで建物の前まで行く。足を休めた意味はなくなった。
「ここがこの国で一番大きなギルドだ。」
そう言って看板に「ギルド」と書いてある、特にこれといった飾りもない質素な2,3階程度の高さがある建物を見上げる。
書いてある?おかしい。さっきもホットケーキ屋の看板を読めた。明らかに日本語じゃないのに。言語の壁は完全に取り除かれてるって…コト!?
ベルに続いて中に入る。中は教室1つ分位の広さで、ギルドの中に点々とある丸い机には数人の人で集まって話し合いをしているところが幾つかあった。
集まっている人達はだいたいは男の人だがこのギルド内に2,3人だが女の人がいるところもあった。
入って右の壁には多くの四角い紙が張り出されており、動物や植物の絵の他に小さな文字でお金や日にち、絵の説明等が書いてあるようだった。ここからじゃ小さくて見えない。
ベルは入り口からまっすぐ、「受付」と書いてあるカウンターへと進んで行き、カウンターを覗き込みながら一言二言喋った後、未だ入り口で立ち尽くす私に手招きをする。
周りをキョロキョロしながらカウンターの前まで歩き、ベルの横へと立つと、
「では、これを」
と、カウンターの中の女の人が水晶をカウンターへと置く。
「手をかざして」と説明する。
出た!今から水晶を私の魔力で割るからよく見とき!
水晶へ手をかざすと水晶の中に文字が浮かび上がる。
「手を下ろして」と、丁寧な説明に従って手を下ろすと
天下 蓬 様
と、これまた丁寧に「様」付けで名前だけ書かれている。これも何故か読める。
「あれ、おかしいですね…??」
女の人が首をかしげて言う。
「スキルも名前といっしょに出るはずなのですが…。」
あれ。雲行きが怪しいぞ。
「壊れてるかも知れないので」と、女の人はカウンターの奥へと引っ込む。
あぁやっぱり壊したのかな?
私なんかやっちゃいました?
ベルはその様子を静かに見つめている。
「お待たせしました。1週間前に届いた新品なので、今度は大丈夫だと思うのですが…。」
女の人が水晶をもう1つカウンターの上に置く。
「他の召喚された人達の足かせにならないように強いスキルを下さい」と一応願いながらさっきと同じように水晶に手を置き離す。
すると、
天下 蓬
と、今度は呼び捨てで名前が書いてあるだけ。
名前に様がつくなんて珍しい壊れ方もあるもんだ。
しっかし、今日はもしかして仏滅かw?
朝カレンダーを見た時は大安だったような…。
「あの、もう一度」
今度も奥に引っ込もうとする女の人を
「もういいですよ。」と、引き止める。
これ以上は無意味なのは自分でも分かっている。女の人にも迷惑がかかるし、私達がここにいる以上ギルドの仕事も停滞するしそれはギルドにとっても手痛いはず。
「でも、」
女の人が最後に言いかけたが
「私疲れているのですが宿、あります?」
というベルにした質問でかき消される。
ベルは特に水晶やスキルのことに触れることもなく、
「宿はこっちだ。」
と、店を出て街の中を再び先導する。
私は慌てて彼女の左後ろに着いて行く。
前をどんどん進んで行くベルに
「あの」
と、声をかけるが
「心配するな。剣の稽古位は私がつけられる。」
まっすぐ歩いたままこちらを見ずに彼女は言う。
やっぱり心中お察しされてたみたい。
他の人達の足を引っ張るんじゃないか、けどベルに頼ったら迷惑なのではないか、そんなことを考えている私の脳内を読んだかのような発言に少しびっくりしたが、
「はい。よろしくお願いいたします。」
と今あるできる限りの元気をこめて返事をする。
その瞬間今にも沈みそうな太陽の光に照らされた彼女の横顔が少し笑ったように見えた。
もしかして:展開 遅い←言いたかっただけ
他の作品見てて思ったのですが、私の作品って展開遅い!?
遅いですよね、そうですよね。
3話なんてここではただただ蓬達がホットケーキ食べただけですが、
展開が早い作品は起承転結の転の字まで行ってるものもありますし。。
その代わりと言ってはなんですが、来月から投稿頻度上がる予定ですので今後ともよろしくお願いいたします。