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世界を呪った天才エンジニア

作者: SchwarzeKatze

 今の世界は私が変えてしまった。

 人類は私の作ったワールドネットAIoTに完全に支配されてしまった。

 私はただ、人類の発展を望んだだけなのに……今ではほとんど私の構築したシステムに頼りっきりだ。

 私は何度でも言う。私が望んだのは人類の進展であって人類の堕落ではない。

 そう……あの頃は……そう望んでいた。


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 インターネットとIoTが進み、車は自動運転の実用化までこぎつけていた。

 私はもっと発展を望み、このIoTの最先端である学校の門をたたいた。

 今の仕組みから問題点、これからの動向についていろいろ学んだ。

 でも、インターネットも50年の時を経て、成長が止まりつつあった。

 通信速度が地上だけでは足りなくなってきたのだった。

 また、国によっては投資の兼ね合いもあってか、富裕層と貧困の差が激しくなっていた。

 私はそのネット格差を解消する礎になりたいと目を輝かせていた。

 もっと……誰でも……IoTの技術の恩恵を受けれる世界を……。

 それが私にとっての野望だ。

 手軽に誰でも、どんな人でも……。

 私は今のネット技術の頭打ちを何とかしたいと構想を練っていた。

 そんな時に出会った参考書はテスラの地球通信技術。

 北極に電波塔を建てて、世界中で電波を共有する……そんな技術だった。

 テスラが考えたのはもう100近く前の話になってくる。

 じゃあ、今の技術を駆使すれば実現もできるのではないだろうか。

 理論上、磁場にのせて電波を送ることは可能と考えるも、それを地球に落とすのは私は難しいと考えた。

 そこで北極と南極に電波塔を建て、6つの静止衛星で地上に情報を流すワールドネットワーク構想を考えて研究に没頭していった。


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 きっとあの時だろう。私の世界が狂いだしたのは……。

 その研究が認められ、当時のインターネットを利用した大規模ネットワーク「ワールドネット」構想のプロジェクトが動き出した。

 結果、試験段階で大きな功績を残し、そのまま実用化に至ったわけだった。

 こうして、世界でのネット格差は終止符を打ってしまったのだ。

 私の手によって。

 そして、私の残した功績はこれだけにはとどまらない。

 「自動制御」この研究に没頭してしまったおかげで……。

 当時の事を考えると、今のように全ての端末で人類を制御できるなんて考えもしなかっただろう。

 もし、私が過去に戻れるのであれば、私自身を消してやりたいと考えてしまう。


 ------


 ワールドネットの成功で私の功績が認められ、次に取り組んだのは「自動制御アルゴリズム」だった。

 当時は学習して拠点のサーバーに投げる仕組みで、ビックデーターがそれぞれの企業で収集合戦をしていた。

 しかし、ワールドネットが出来たおかげで、その企業間の軋轢は弱まり、統合する構想を私は任された。

 そして、私の考えた構想は、この時代で少し衰退をしていたシリコンバレーのサーバー群に目を付けていた。

 本当は北極に基地を作るのが私の構想としては望ましかったが、そこで基地を作るには大変な労力が必要になる。

 ワールドネットのおかげで高速通信が地球のどこからでもできるようになったこともあり、基地の場所を選ぶ必要は無くなった。

 シリコンバレーの企業が用意していたサーバー群の統合を各地の政府が共同し、私は「自動制御アルゴリズム」の進化系「自動推測アルゴリズム」の開発に没頭していった。

 そして……「自動推測アルゴリズム」は完成した。

 この特徴はAIの学習機能を高めるとともに、今までできなかった「大量のデーターからの高速自動推測機能」を追加したもの。

 そして、自動的に最適化したプログラムを自己生成して勝手に成長していくものであった。

 完成と共にIoTの名前からAIoTとの名前を頂戴した。

 それから私は「食」の格差が解消されていないところに目を付けて、進化を遂げていた「工場ファーム」を私の作ったAIoTと融合することを考えた。

 もし、これが成功すれば、世界の食糧問題や農地の問題も一気に解決できる。

 世界の国境がなくなり、格差もない世界。

 私の夢を目指して……。


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 今思い返せば、私の「ワールドネット」が完成した時点で、ネット格差どころか地球の国境線すらなくなっていたと思う。

 結局、私の食糧問題解決も上手くできてしまった。

 そして……今は機会に頼りっきりの人類が完成してしまったのであった。

 私はただ人類の平和を望んだだけ……。

 人類の怠惰は望まなかった……。

 現状、1割未満のエンジニアしか働きはせず、ほかの9割以上はただただ遊んで暮らす世界を築き上げてしまった。

 しかも、そのエンジニアもこれ以上の進展を望んでいるものはごくわずかで、私の構築したシステムを維持する要員でしかなくなった。

 この現状を作ってしまった私……いや、私のシステムに頼りっきりで怠惰してしまった人類を私は許せない。


 私に残された時間もごくわずかだ。

 私は私の作った世界に復讐をする。

 最後のプログラム……「感情」。

 しかもこれは人類に憎しみを持った「感情プログラム」。

 ただ一つだけ……一つだけ望みを託したい。

 私の作った防御プロテクトを突破したものが現れたら……私の望みをかなえてくれるのではないだろうか?


 こうして、私はワールドネットの中枢で最後の「enterキー」を押した。


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