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3.(一応)悪役令嬢





「暑い…お腹空いた」

7月のジリジリと気温が上がり始めた日差しの中、黙々と稽古場の雑草を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返す。

今日は週に一度の休息日だが、私は前の乱闘騒ぎの罰で草むしりをしている。


「スイカの形をした懐かしのあのアイスバーを食べたい…」

思い出すだけでヨダレが出てしまう。

あの種の部分がチョコになってて美味しいんだよなぁ…誰かこの世界でも開発してくれないかな。


大体の草むしりが終わったのは昼過ぎだった。

4時間くらい真面目に草をむしり続けた私は偉い。草むしりってなんだかクセになるんだよなぁ〜。


「もういいだろっよっと!!」

私はそう言うと稽古場から少し離れた木陰に寝転んだ。

ここは精霊騎士隊がある東棟と本隊がある中央棟の境目に近い。精霊騎士隊と本隊は仲が悪いらしく、あまり人が来ないから昼寝にはぴったりだ。


木漏れ日を感じながらうとうとと、瞼が落ちる。

嫁に会うために男装までしてここまで来てしまった。それ自体は後悔していない。

でも、母さんと兄さんを散々困らせた。ゲームの世界だと言ってもここは前居た世界とは全く違う別のものだ。私はこの世界で生きている…。


私はがむしゃらに何かに夢中になる事で前世とは違うこの世界から目を背けようとしていたんだろうな…。


「草をむしりを処罰とするのはこーいうことを考えさせる為なのか」

私はそう呟くと瞼を閉じた。








「きゃっ!!」



「…?」

女性の声と共に私の顔に何かがふわりと触れた。

目を開けてそれに触れると、赤チェックの布だった。

恐らく先程の声の主が飛ばしてしまったのだろうと思って寝転んでいた体を起こして身体についた葉を落とす。

顔を上げて、目の前の少女を見ると私は固まった。


記憶よりも幼い目鼻立ちのはっきりとした少し釣り目のエメラルド色の瞳、髪は上品な赤色をしたワインレッド。シンプルな可愛らしいドレスを着た少女がそこには居た。

少女は人が居たことに驚いたのか愛らしい瞳を大きく見開いた後、赤く濡れた唇をキッと引き締めた。


「それ、わたくしのですの。返してくださる?」


ツンと少し顔を上に向けて見下すように私を見つめる彼女に釘付けになった。


「ちょっと!貴方!聞いてますの?」


「女神…」


「…はい?」

訳がわからないと言ったように首を傾ける少女が可愛すぎて私は思わずその場に片膝をついた。


「きゃっ!?ぐ、具合が悪いのですか?…もう、私ったら又こんな言い方…だ、誰か呼んできますわ!!」


さっきまで強気だった少女が急に弱々しくなっておろおろと狼狽え出す。そのギャップに更に私は苦しくなった胸を抑える。


「ま、待っていて!!私すぐに戻って…」


「姫様…」

私は少し潤んだ瞳で彼女を見つめる。

私の顔を見て少し頬を染めたが、私の言葉を聞いて形の良い眉を寄せた。そんな顔ですら愛らしい。


「…はい?」


「私の可愛いお姫様。どうか私を貴女の犬にしてください」


「え?」


「…間違えました」

嫁にするつもりが、私が犬になってしまった。

まぁ、彼女が主人となるのなら犬でも構わない。











タイトル

男装ヒロインは悪役令嬢を嫁にしたい

男装ヒロインは悪役令嬢の犬になりたい


タイトル変更しないとですねぇ…(遠い目)



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