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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第9章 ~精霊契約と入学試験~
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EX 宿屋の娘は大変です

1週間ぶりの投稿です。

テスト期間はやはり投稿するのは難しく、こんなにも時間が空いてしまいました。


 



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 私の名前は、サーシャ・スコーロン。 15歳です。


 サナンという辺境の小さな町でしがない宿屋の看板娘をしています。


 祖父の代から始まったこの宿屋は、サナンにあるたった2つの宿の1つです。


 ここは辺境ということもあって、そんなに多くのひとはやってこないので、宿はもはや1つでもいいんじゃないかと思います。


 もちろん私が働いているこの宿は潰れて欲しくはありませんが、こんなにお客さんがこないのでは、働いているという実感も持てません。


 だからせめて、お客さんがいらっしゃった時には手厚い対応をしたいと、いつも思っているのです。



「よし、今日も一日頑張りますよ!」



 最近に旅の人や行商の人たちが4人ほどこの宿を取ってくれているので、私はいつにも増して張り切って接客をします。


 お客様にお出しする食事は父が作るので、基本的に私はお部屋の掃除や、受付をやります。


 そして今日、またお客さんが増えました。




 ぎしぃ、と扉が開かれる音と同時に私は気持ちを引き締めて、笑顔で接客に当たります。



「いらっしゃいませ!」



 私は入ってきたお客様に向かって、張り切ってそう言いました。


 こうしてお客様を出迎えることこそが、今の私の1番のお仕事ですから。



 お客様は合わせて3人、暗い灰色の髪の少年と青い髪の女の子、それと白い髪の女の子。


 少年と白い髪の女の子は私と同じくらいの歳でしょうか。


 男の子の方は少し目つきがきついところがあるけど、そこまででもなくて、なんとなく凛々しい感じがしてちょっと男前かも。


 白髪の女の子は、すごく綺麗な人です。 神秘的な美貌を秘めた感じで、目が釘付けになりそうなくらいです。


 けれど2人とも、どこか似たような雰囲気がある気がします。


 どちらも不思議なオーラを纏っているような。


 容姿は全く似ていないので兄弟ということは多分ないと思うんだけど。


 もう1人の青髪の女の子は、歳は12歳くらいでしょうか。


 愛らしく、あどけないその顔は、いつまで見ててもほほが緩みっぱなしになりそうなほど、可愛らしい子です。


 外見的には幼そうなんだけど、どこか大人びた感じもする、この子もなんだか不思議な感じがします。


 不思議な3人組のお客さんです。


 ということは部屋が少なくとも2つはいりますね。


 まぁ、この宿は部屋だけならいくらでも余っているので心配はありませんが。


 そしてお客様がこちらへ近づいてきました。



「お部屋はどうなさいますか?」



 私は笑顔でそう尋ねます。


 2部屋とるか、3部屋とるかどちらにするのでしょうか。


 お値段的には2部屋で済ませるのが、お財布に優しいので個人的にはお勧めですが、個別に取りたいというやもしれませんしね。



「あ、一泊で3人部屋を1部屋お願いできるか?」



「────え?」



 彼の注文を聞いて私は絶句しました。


 え、ええええええ!?

 今3人部屋を1部屋って言いましたか!?


 確かに言いましたよね?


 え、ということは、男一人に女二人で同じ部屋で寝泊まりを……。


 そんなそんな、確かに私ごときいち店員がとやかく言う問題ではないのだろうけど、でも、こんないたいけな少女2人と同じ部屋に泊まろうとするなんて、そんな、み、淫らなことを。


 でも、この2人も嫌がる気配はないし、むしろ喜んでる!?


 これから3人で一体、な、何をする気なんですかーー!


 いいや、落ち着きなさい、サーシャ・スコーロン。

 そうよ、何をしようが、私がとやかく言う権利なんてありません。


 彼らが、これから、い、いかがわしい事をしようとも、私は気付かないふりをしなければなりません。


 それが、一流の宿屋の娘なんですから。



「どうした? もしかして部屋余ってなかったか?」




「あ、あぁ、だ、大丈夫ですよ! え、えっと、一泊で、3人部屋を、ひ、1つですね。 しょ、承知しました! だ、代金は、えっと、銅貨52枚になります。 お、お食事はお付けしますか?」



 ああ、やっちゃった……。 やっぱり落ち着いて接客なんて出来ませんよぉ。


 どうしてもテンパってしまい上手く口が回らない。


 でもだめ。 ちゃんと最後まで、手厚くお客様をおもてなしする、それが私の仕事。


 やり遂げないと。



「じゃあ夕食を」



「で、では、銅貨62枚になります。 お部屋は、に、2階の204号室になります」



 そう告げると、少年は女の子2人に先に部屋に行かせて、代金を払ってくれました。


 せめて、お釣りくらいはキョドらずに渡さないと。


 実は私が1番得意なのは、計算の速さとお釣りの引渡しだったりします。


 私は手早く、速やかにお釣りと鍵を渡しました。



 それを確認すると、少年は部屋へ向かおうと背中を向けます。



 けれど私は、どうしてかその背中を呼び止めてしまいました。


 そして立ち止まった彼の耳元へ駆け寄り、恐る恐る耳打ちをしました。



「えっと、うちの宿、そ、その、そういう目的のためには設計されていないので、べ、ベッドもあまり頑丈ではないですし、お風呂も小さな浴場が一つあるだけです。 なので、む、無茶なことだけはご控えください」



 よくよく考えてみれば、この店は普通の宿であって、そういった類の店ではないのです。


 なので店の中を壊してしまうような、ハードなことと他のお客様に迷惑がかかるようなことだけは控えていたいただきたくてそう言いました。


 これだけは注意してもらいたかったのです。



 私の注意に、首をかしげながらも彼は頷いてくれました。


 彼が理解して納得してくれたかは定かではありませんが、私にこれ以上、何かを追求することは出来ません。


 あとは何も無いことをただひたすら祈るばかりです。


 私は彼が階段を登っていく姿を眺めながら、ふっと溜息をつきました。



 そして結局、夜は何も騒動などは起きず、今日も平和な一日が過ぎていったのです。


 本当に物音ひとつしませんでした。




 翌朝、ロビーで、彼を待っているという1人の行商人が私を訪ねてきました。



 どうやら話を聞くと、彼はこの行商人と王都へ連れていってもらう約束をしていたようです。



 行商人の人は準備があると言って、外へ出ていってしまい、呼びに行けるのは私しかいませんでした。


 父は朝食の仕込み、他の従業員は、まぁ、従業員と言っても私とあと1人しかいないのですが、その方もまだ出勤していなかったからです。



 私はしぶしぶ、彼らの部屋を訪ね、行商人の人が呼んでいると伝えました。



 さすが扉を開く勇気はありません。


 私の勘違いだったら気まずいですし、本当に何かあったら、それも気まずいですから。



 そして私は返事を聞く前に、扉の前から立ち去ってしまい、彼らが起きたかどうかは分かりませんでしたが、物音がしたので、どうやら私の呼びかけは届いていたようです。



 そのあとは、彼らは支度を済ませた状態で、チェックアウトして行きました。


 その時に、あの少年がこっそりと私に耳打ちしてきたのです。


「あの、俺達は別にそういう関係ではなくて、心配していたようなことは絶対にしていないので、安心してください」



 私は、彼が何を言いたかったかに気づいて、慌てて謝りました。


 彼はちゃんと私の誤解を解きに来てくれたのです。


 確かに、ここは普通の宿なので、もしそういったことがしたいなら、この宿は取らないはず。


 何故私はそこまで考えが至らなかったのでしょうか。


 変なことを想像してしまった自分自身がとても恥ずかしいです。



 私は顔を真っ赤にして「本当にごめんなさい」ともう一度謝ると彼は笑いかけて。



「大丈夫。 気にしてないから。 それよりご飯美味しかったよ、ありがとう」


 そう言って私を励ましてくれました。



 なんて紳士的なのでしょうか。


 こんな人だから、あの女の子達も安心してついていけるのでしょう。



 行商人の方は外で待っているということを伝えると、3人はこの宿をあとにして行きました。



 それにしても王都かぁ。


 私はそんなことを考えながら彼らを見送りました。


 私もまだ若い娘です。 王都への憧れはやはり強いのです。


 いつか行けたらいいんですけどね。


 若しかすると、また彼らと会えるかもしれませんし。



 しかし、宿屋の娘として生まれてきた以上、ここでの仕事を疎かにする訳にはいきません。



 私は鏡の前で身なりを整え、気を取り直して仕事を開始します。


 看板娘として、見てくれと清潔感は大切ですから。



「よし、今日も一日頑張りますよ!」



 掃除に洗濯、今日も少ないものの仕事はあります。


 しかし、少ないからこそ、一つ一つのお仕事に全力を欠かしません。


 こうして、私の一日はまた始まるのです。





これからはまた週3回程のペースで更新していきます。

余裕があれば毎日投稿する可能性もあるので、その時は活動報告をしようと思います。

それではこれからも本作をお楽しみ頂けると幸いです。

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