第7話 クラスメイトは上級職
縦長な断面正六角形のような結晶が柱のようにそこに立っていた。
エメラルド色に光るその結晶を指差して神父は言う。
「方式は簡単です。 この結晶に手を当てていただくだけでいい。 わしはそこに写し出された情報を魔版に刻み込むだけじゃ」
そして、誕生日の早いものから順に触れるように促した。
「最初は僕みたいだね」
この中でロークは1番早く生まれているため、彼が1番最初ということになる。
彼は慎重な足取りで結晶に近づき、ゆっくりと手を触れさせた。
すると触れたそれは眩く燐光を放って、数秒でおさまる。
ロークは少し安堵したようにホッと吐息をついた。
不安な気持ちも少なからずあったのだろう。
果たして天職を受けるとはどういうことになるのか、と。
「なんじゃとっ……!?」
結晶の向こうで何やら操作している神父が急に目を丸くして叫んでいた。
何かあったのだろうか、とロークやクラスメイトたちがざわざわとなる。
「どうしたんですか?」
ロークが神父の方を覗き込んで尋ねる。
すると神父は慌てたように彼に駆け寄り、膝に手を当てて荒だっている息を整える。
「どうしたもなにも、すごいものを見てしまってな。なんということだ」
だからなんなんだ、とロークは思う。
神父は戸惑う彼に魔法陣のようなものが刻まれた1枚の板を見せる。
「その板に手をかざしてみてくれ」
ようやく神父の息が落ち着いてきたようだが、丸くなった目はもどっていない。
「こうですか?」
ロークが言われた通り手をかざすと、魔版から画像のようなものが空気中に映し出された。
「それがマジックプレート、通称ステータスプレートだ」
全員がその不思議な光景に目を奪われた。
俺たちからすればあれはまるで想像上の未来テクノロジーのような技術だ。
それが現実に見えているのだから、目を引くのも仕方がない。
「それよりも、それの上の方に刻まれている君の天職をみてくれ」
「なんか色々書いてある。えっと、天職は───勇者⁉︎」
ロークも先ほどの神父と同じように目を丸くしていた。
勇者という言葉を聞いたまわりも呆然となる。
「そうだ、君は世界にたった10人しかいない、勇者に選ばれたんだ。 わしも生きている間にこんな瞬間に立合えるなんて思ってもみなかったよ」
数秒の沈黙が神殿の広い空間に訪れる。
それが終わるとここにいるクラスメイト全員が大声をあげて歓声にわいた。
「さっすがロークだ!」
「勇者なんて、お前にぴったりじゃないか!」
賛同の声が空間を駆け巡る。
耳障りなまでな拍手喝采に俺は顔をしかめた。
「ありがとう、みんな。でもまだ僕しか受け取っていないんだ。早く全員もらわないと」
彼は歓声を感謝と手で制して、クラス全員がステータスプレートを受け取ることを促した。
みんなそれに頷く。
「そ、それでは次の人、手を触れてくだされ」
そうして次はメルクが前に出る。
しかし、再び放たれた燐光の奥には、またもや目を丸くして、口をパクパクとさせて尻餅をつく神父の姿が見えた。
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