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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第9章 ~精霊契約と入学試験~
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第82話 精霊契約③

久しぶりの連日投稿!!

 



 柔らかな感触に、すべすべとした手のひら。



 やはり比べてみると、男の俺の手は彼女の手よりも随分と大きく見えた。



 そして、指と指を重ねて完全に密着させる。



「よし、それじゃあユウ。 そのまま魔力を手のひらを経由して流してみてくれ。 やり方は分かるな?」



「は、はい」



 魔力を流し込む。 以前リリーに教えてもらったように、体内に流れる魔力の流れを意識して、一点に集中させる。



 脈動の刻むリズム、それを感じ取る。



 じんわりとそこが熱くなってきたら、それを外に吐き出すイメージで。


 今回は形としてのイメージはしない。 ただ放出して流し出すということだけをイメージ。



 すると、重なった手のあたりがきらきらと光を帯び出し始めた。



「なんだか、体がぽかぽかしていくみたいな感じ……」



 エルフィアはその光る手を見つめて、ひっそりと呟いた。



 それを聞いたサイオスは「それでいい」と頷く。



「ユウ、そろそろ魔力の放出を抑えてくれ。 そして、今度はエルフィアくんの方から受け取った魔力を返還するようにユウに流すんだ」



 そう促されると、今度浮かびがったのは、エメラルドグリーンの光の粒子だった。



 どうやらこれがエルフィアのヴァルナのようだ。



「本当だな……。 確かになんか温かい感じだ」



 エルフィアが言った通り、その光が現れてから10秒ほど経つと、体の中が温かくなる感じがした。



 さらに別の変化も現れていた。



「なんか、手の甲に別の光が出てきたんですけど?」



 俺の右手の甲には真っ白な光がじんわりと円を描くように浮かび上がっている。



 サイオスはそれを聞くと、目を丸くして呟いた。



「まさかこんなに早くに現れるとはな……」



「どういうことですか?」



「そこに浮かんでいるのは、契約の証『精霊紋』だ。 それはお互いにその魔力を共通のものだと認識した時に現れる。 精霊契約の最終工程さ。 つまりこれで『契約』はほぼ締結されたってことだな」



「ほぼ、ということはまだ完了はしていないんですね?」



「ああその通りだ。 あ、もう手を離してもいいぞ?」



 その言葉で俺は彼女の手から自分の手を離した。 もう少しだけああしていたいとも若干思わなくもなかったが。



「2人ともさっきの手の甲の部分に光の輪っかみたいなものが見えるな?」



「はい」



「ええ、見えるわ」



「それじゃあ、ユウはエルフィアくんの、エルフィアくんはユウの手の甲にあるその光を押さえつけるように、指でなぞってみてくれ」



 俺達は言われるがままに、今度は手の甲を出し合う。



 最初はエルフィアの番だ。



 彼女が左手の甲を差し出して、俺はそこに浮び上がる不思議なリングを指でなぞっていく。



 するとなぞった部分からは光が出なくなり、代わりに何かの線のようが刻まれていた。



 1周し終えると、円の中におかしな紋様が浮かんで、そのまま円ごと手に溶け込んでいくように光が消えていった。



 次は同じことを、エルフィアが俺に対して行った。 結果は同じ、俺の手の中に溶け込むように紋様が刻まれていく。



 その様子を見たサイオスはふぅっと吐息を零して言った。



「これで契約は終了だ。 ここまで早く終わるとは思わなかったよ。 どうやら、2人はかなり相性がいいらしい」



 その一言を聞いて、俺達は少し照れくさく感じながらも一安心していた。



「何だか実感がわかないな」



 手の甲にうっすらと浮かび上がっている、紋様を見下ろしながらそう零す。


 光はなくなったものの、刻まれた精霊紋はそのまま残っていた。


 なぞった白い円線の内側に刻まれる花弁のような紋章。


 それが証として残っているが、どうも今までと変わった感じがしない。



 しかし、エルフィアの方はそうでも無かったようだった。



「私はなんだか、不思議な感じがするの」



 彼女は自分の左手の甲に浮かび上がる、俺と同じ紋様をうっとりと見つめながら呟いている。



「へぇ、どんな感じなんだ?」



「今までより、すごいほっとしてるって感じ……。 ずっとね、ユウとどこかで繋がっているみたいに思える」



 エルフィアはその左手の甲を右手で包み込むようにして、胸のあたりに置いた。


 そして目を伏せながら柔らかな吐息を漏らす。



 狙ってやっているわけでは決してないだろうが、なんというか、エルフィアが不意に見せる儚げで可愛らしい仕草が悪戯に俺の心を掻き乱していく。



 俺は昂る気持ちを落ち着かせるためにバレないように小さく深呼吸をすると、若干上擦った声で返した。



「た、確かに、言われてみれば、俺もそんな気がするよ」



 彼女の言うように、俺とエルフィアは見えない何かで繋がったような気がしていた。


 他人のことを信じる、そういう普通の行為が簡単には出来ない俺達にとって、この『精霊紋』は強い安心感をもたらしてくれる。


 これが人間不信、いや生物不信という病に陥った俺達にとって、どこまでありがたいものかは、想像もつくまい。



 俺達にとっての『精霊契約』は、不安も懸念も全てひっくるめて、お互いを信頼していくということを誓い合う儀式のようなものだったのだ。



 そして、エルフィアと俺の間には精霊と契約者という関係が築かれた。







明日も出来れば投稿します!

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