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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第8章 〜新しい君へ〜
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第74話 なんだか愛おしい

少し間を空けての更新すいませんでした。

部活の合宿などで色々と忙しかったものですので、1週間も更新を空けてしまいました。

しかし、これからは通常速度に戻しますので、何卒よろしくお願いします。

 



『ハーミットがそう言ったのか?』



 それを耳にした途端、いろんな感情が心の中を掻き乱していった。



 ずっとずっと、自分なんて害悪にしかならない、そういう存在なんだって、そう思ってきた。



 生きているだけで、誰かを傷つけてしまう、そんな有害な存在。



 現に、私の【魔眼】は見たものすべての命を消し去るような呪いのスキルだ。



 これまで、気づけば誰かを殺してしまっていて、自分にはどうしようもできなかった。



 私は、こんなものをはめ込んだあの人間たちを殺したいとさえ思うほど憎んだ。



 なぜ自分だけがこんな目に会わなければならない、何度だってそう感じたけれど、それを押し殺して、どうにか生きてきた。



 こんなスキルを与えておきながら、自分たちは怯えて私を牢屋に閉じ込めるあの研究者たちには心底腹が立ったが、それに怒ることさえも馬鹿馬鹿しかった。



 どうせ、自分には何もできないのだから。



 この牢屋こそが自分の唯一の居場所なのだから、甘んじてこの苦痛を受け入れていくしかない、そうやって自分に言い聞かせて、何も考えないようにしていた、なのに……。



「ここから逃げましょう」



 ある日、同じ牢屋に入ってきた1人の女性がそんな風に言ってきた。



 あとから考えれば、彼女は精霊だったので、女性と呼ぶには少し語弊があったのだが、それを抜きにしても、やはり彼女は彼女なのだ。



「あなたは、なんなの……?」



 久しく、閉じていた口を開く。


 その声には何の感情もこもっていない。



 それでも彼女は優しく手を伸ばしてくれる。



「私はハーミット。 あなたを助けにきたの」



 美しい緑色の髪を揺らしながら微笑む彼女を見て、ついうっかりその手を取ってしまった。



 まだ自分に生きたい、逃げたいという我欲があったことが不思議でならなかったが。



 それからどうやって逃げたかはよく覚えていない。



 とにかく、ハーミットの言う通りに動いていたら、いつのまにか研究所の外にいた。



「どうして、あなたは私のことを助けるの……?」



「だって、あなたは私の娘みたいなものだもの」



「娘?」



「そうよ。 娘を助けたい、ただそれだけなの」



「……そう」



 いくつも疑問に思うことはあったけれど、どうしてかすんなりと受け入れられた。



 なぜ【魔眼】が発動しないのかは最も疑問だったのだが、そんなことはもはやどうでもよくなっていた。



 それほどまでに彼女の温もりは、私の心を癒してくれた。



 数週間後、エルフの国に到着し、そこでハーミットは息を引き取った。



 ハーミットのいない世界、再び暗くて狭い場所に閉じ込められる憂鬱。



 己を憎み、殺し、殺し続けて消し去ろうとする日々。



 ああ、これが私の運命なのだ。 そう考えることでこの苦痛を受け入れていく。



 そんな時、彼があの様な言葉を私に言ってみせたのだ。



 瞬間、ハーミットとの、短い間の母との温かい記憶が懐古していく。



 自分なんて、そう思っていた私に優しくしてくれる人が、ハーミットの他にもいるということにようやく気付いた。



 出会ってから日も浅く、不審な点はあげればきりがない。



 なぜ私を助けようとするのかもまるで理解できない。



 けれど、彼の温もりは、ハーミットのそれとどこか似ていた。



 また失ってしまうかもしれない、また私のせいで傷つけてしまうかもしれない、そう思っていたのに、人の温かさに飢えた私の心は揺るがなかった。



 そんな気持ちから、あの時と同じようにうっかりと手を取ってしまったのだ。



 自分はなんて弱い生き物なのか、そう呆れてしまうけれど、まだこの温もりを感じていたい。



 すると口が勝手に喋り出したのだ。



『死にたくない』と。



 その後、急に倒れた彼に駆け寄って、どうしようかと迷っていた時、ちょうどハーミットが自分にしてくれたことを思い出した。



 意識を失った彼の頭を軽く持ち上げて、正座した自分の膝にのせてみる。



 髪の毛が少しむず痒くて、顔がすぐ近くにあって、どうも恥ずかしかったが、今私にできることはこれくらいしかない。



 本当は【スキル耐性】なんてあっても、きっと【魔眼】の効果は消え去ることなんてできないはずだ。



 そうまでして、私を救ってくれた彼の顔を見ていると、どうしようもなく愛おしく思ってしまった。



 こんな気持ちは初めてだ。



 眠っている彼の顔についつい触れたくなってしまうような、けれど触れようとすると脈動が高鳴って耳まで熱くなってしまうような、そんなもどかしい気持ち。



 これは一体なんなのだろうか。



 そうこうしている間に数時間が経過して彼が目を覚まし、新しい私は彼、ユウ・クラウスという少年と出会ったのだ。





第8章ラスト!

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。 そしてこれからもよろしくお願いいたします。

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