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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第8章 〜新しい君へ〜
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第60話 悪夢

ついに第8章突入!

 



 またあの夢だ……。



 最近ずっと同じ夢を見ている気がする。



 辛くて、痛くて、寂しくて、冷たい、そんな夢だ。



 内容は漠然としていて、目に浮かぶ光景は不鮮明だが、その叫びは、嘆きは脳裏に焼き付いて離れてくれない。



 覚えている範囲で説明するならば、少女が何度も死ぬという夢だ。



 顔もはっきりしない、色も分からない、それでも何度も何度も死ぬ、そんな悪夢。



 その死に方は毎度毎度違うんだ。



 今回は溺死……。



 冷たい海に身を投げて、ゆっくりと沈んで死んでしまう。



 前回は確か、焼死。



 毒死、雷撃死、窒息死、あらゆる死が少女を襲う。



 けれど、今回はなぜだろうか、とてもはっきりとしているんだ。




 少女が、何か言っている気がする。



「どうして、私は死ねないの……」



 そんな風にぼそっと、消え入りそうな独り言のように零したように思える。



 鬱々とした運命から彼女を救ってやりたい、無性にそう感じる。



 意を決し何とか手を伸ばそうとするも、その前に少女は海へ身を投げた。



 その悔しさに歯噛みしているところで、俺の意識は現実へと還った。




「─────はっ!」



 どうにも息が苦しい。



 別に呼吸器に異常を来たしている訳でもないのに。



 荒立つ呼吸を必死に胸を抑えて整えようと試みる。



 何だこの痛みは、何だこの寒さは。



 ふと目尻が焼ききれそうなくらい熱くなっていることに気づく。



 そして、ようやく意識がはっきりしてきた所で、優しい声達が鼓膜を揺らした。



「───マスターっ! 大丈夫ですか!?」



「───ユウさん! お身体が良くないのですか?」



 俺は、そんな声のした方へ視線を巡らせた。



 まだ微睡む視界の中に映ったのは、曇った顔で不安げに俺の顔を覗く2人の人影だった。



 すぐにその声から察して、その人影が誰なのかを理解する。



「───ラフィー、それにリリー……どうしたんだよそんな顔して?」



 そう零した時、ふと頬を何かが伝ったような感覚を覚えた。



 そして気づく、自分の視界がぼやけているのはただ寝起きだからという理由だけではないと。



 その雫を俺は呆然と拭った。



「なんで、俺……泣いてるんだろう」



 自然とそんな声が漏れでる。




 何だかとても悪い夢を見た気がする、という感覚だけ残っていた。



 しかし、俺は2人に心配をかけまいと、涙を拭いきり言った。



「ちょっと悪い夢見たみたいだ。 けど、俺は大丈夫だよ」



 それを聞くと、2人は安心したような吐息を漏らし、リリーは「さぁ、朝食にしましょう」と朝の決まり文句を呟いた。



 ラフィーはそれに続くように嬉しそうに笑を零した。



 そうして、ようやくいつもの朝を迎えた。




「そろそろ時間か」



 俺は時計を見るやいなやそう呟くと、立ち上がって、部屋から出た。



 ラフィーと、今しがた部屋にやってきたミカエル、そしてリリーに「ちょっとサイオスさんとの用事がある」と言い残して。



 あの大きな扉をノックすると聞き慣れた「はいれ」が聞こえてきた。



 そしてサイオスは「待っていたぞ」と言って俺の方に近づいてきた。



「それで、頼みとはなんですか?」



 そう訊ねるとサイオスは「ふむ」と吐息を漏らして。



「まぁ、とにかく来て欲しい場所があるんだ」



 そう言って俺に、自分についてくるように促した。



 俺は首をかしげつつも、言われた通りにサイオスのあとについて行く。



 気づくと、久しぶりに見る光景が映るようになっていた。



 今俺達がいたのは、レイアース入国初日に初めてサイオスと話をした場所だった。



 しかし、あの木製の扉の前では止まらずサイオスは無言で歩き続けた。



 そしてあの部屋よりもさらに奥深くの場所へ向かう。



 漂う冷たい冷気に俺は身を縮こませた。



「こんな所にいったい何が───」



 俺がそう訊こうとしていた時にようやくサイオスは立ち止まって言った。



「ここだ」



 サイオスが指さすほうに視線を移すと、そこには大きな鋼鉄の扉が悠然と佇んでいた。






第8章60話を最後まで読んで下さりありがとうございます。

皆様のおかげで日刊ランキングも順調に上がってきております。

これからも本小説をよろしくお願いします。


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