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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第7章 〜剣聖と白銀の少女〜
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第55話 魔法

 




 俺は毎日中央闘技場にて、鍛錬に励む。



 ラフィーは相変わらず部屋でミカエルと過ごしているらしい。



 サイオスの仕事が忙しい時は自主トレーニングだ。



 ランニングに筋トレ、素振り、とにかく1人でもできるトレーニングをひたすらにやった。



 もちろん体を痛めない程度である。



 もしサイオスがあんなふうに言っていなければ俺は、体が壊れるまで鍛錬していただろうが、今はしっかりとした計画とビジョンをもって勤しんでいる。



 たまにサイオスが抜き打ちで模擬戦を組んでくれるが、なかなか1本とまではいかなかった。



「また、負けたーっ!」



 俺はそう叫んで、心地よい気持ちで地に大の字で寝転がる。



 悔しい気持ちはあるが、それ以上に自分が少しずつ成長している実感があったのだ。



 俺が寝そべっていると、いつもドリンクとタオルを運んでくれる人がいた。



「ユウさん、お疲れ様です。 どうぞ」



 リリーはいつも俺の特訓に付き添い、補給品を届けてくれる。



 毎日作ってくれる弁当が俺の鍛錬の中の楽しみのひとつだった。



 俺とサイオス、そしてリリーで食べる昼食はそれだけでとても疲れが取れた。



 そして、サイオスがいないある日のことだ。



「ユウさんも魔法を習得されてはどうですか?」



「魔法?」



「ええ、おそらく魔法を使えることで戦いの幅は大きく広がるかと」



「けど、言っちゃなんだけど、俺は無職だし、魔法なんて使えるのか?」



「魔法とはスキルなどとはまるで異なるものです。 魔力という内なるエネルギーを具現化し形を整えて放出する、それが魔法です」



 リリーは噛み砕いて俺に魔法のことを説明してくれた。



 スキルはその者にそもそも備わっている才能であるのに対し、魔法は才能を問わず訓練次第で誰でも使えると言う。



 しかし、使える魔法の種類はその人の属性に依存するそうだ。



 属性は基本5つに分けられる。



 火、土、水、光、闇だ。



 そして魔力の属性には必ず色がついている。



 火なら赤やオレンジ、水なら青や水色などが一般的だが、実際にはその色は無限にあると言われている。



 この色のことを『ヴァルナ』と言うそうだ。



 その人の属性はこのヴァルナを見ることで判断できる。



「というわけで、ヴァルナの出し方を簡単に説明しますね」



 リリーがそう言って、その方法を教えてくれた。



 まずは一点に魔力の流れを集中させ感じ取る。



 体のどこでもいいらしいが、手のひらが1番わかりやすいそうなので、言われた通りにやってみた。



 魔力の流れ、つまりは脈動を感じ取る。



 俺は手首の静脈に指を当てて、実際には感触でそれを確かめる。



 そして一定に刻まれるテンポを記憶して、そこに意識を持っていく。



 すると手のひらから不思議な蛍光のようにちらほらと青白い光が浮かび上がった。



 俺はそれを目を見張ってワクワクしながら見つめていた。



「これが、ヴァルナか。 本当に出た……。 なぁ、リリー。 これは一体何属性なんだ?」



 俺が手のひらから視線をリリーの方へずらすと、そこにはまるで見たこともないような光景を目の当たりにするように驚嘆して目を丸くするリリーの姿があった。



 俺は首を傾げながら呆然とするリリーに声をかける。



「どうしたリリー?」



 俺の言葉でふと我に返ったリリーは何だか言葉に詰まっているようだった。



 何か言いかけて、それでもそれは正しいのかと歯がゆそうに口を開閉させている。



 そしてようやく言葉を見つけたようにリリーは言った。



「信じられません……。 しかし、確かにこれはヴァルナです」



「何が信じられないんだ……?」



 俺は少々の不安感を頭の内によぎらせて、首を捻りながら訊く。



「先程言った通り、ヴァルナとは属性の色のことです。 ですが、ユウさんのヴァルナにはどうしてか色がないんです……」



「……それは、どういうことなんだ?」



 俺は、じわりとかいた手汗をズボンでぬぐいながら訊ねた。



 その質問にリリーはすっと息を吸うと、一拍おいて答えた。



「断定はできませんが、ユウさんの属性は……無いと、思われます」



 俺はその言葉で思考停止した。



 なぜならリリーは先ほど、魔法とは使用者の才能とは別のエネルギーで働くのだと言っていたからだ。



 そして必ず属性があり、それはヴァルナの色で確認できると。



 しかし、今目の前にある俺のヴァルナは完全に無色透明、宙に蛍の光のようにちらちらと光がチラついているだけだ。



 リリーの態度と、先程のリリーの説明から察するに、おそらく無属性ということは、魔法の適正がない……ということなのだ。



 俺はなおも手のひらの光を見つめて呆然と立ち尽くしていた。



 まだこんな所にも別のハンデが隠れていたとは、と肩を竦めて。



 そんな俺を見てリリーが「ですが」とポツリと呟いた。



「あくまで可能性の話ですが、もしかするとこの属性は全ての属性を扱えるかもしれませんし、もしくは無属性特有の魔法というのが存在するのかもしれません」



 俺はその言葉で一筋の光が見えたように顔をはっとあげた。



 可能性、それは不確かで曖昧なものに過ぎない。



 だが、それは、今俺が持ちうる1番の才能(スキル)でもあった。







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