表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第7章 〜剣聖と白銀の少女〜
56/187

第49話 会談

 


 サイオスの驚きの発言に俺は体を怖張らせていた。



 最初の発言から彼がサイオスという男で間違いないことはわかっていた。



 その上で話を切り出すのに1番最適な身の程を聞き出すという手法に打って出てみたが、まさか国王と言うとは予想していなかった。



 このレイアースはエルフ総人口の6割を抱える相当の大国だ。



 その国のトップと今俺は対峙しているということにさらに緊張が高まり、背筋が伸びる。



 しかし、こんなところで引き腰になっていては意味がない。



 俺はそう自分に言い聞かせて、気づかれないように小さく深呼吸し、ようやく口を開いた。



「あなたがサイオスさんだったんですか。 しかし国王様ともあろうお方が、自分にわざわざ直接出向いてくれるとはどういったお心で?」



 威圧感に体が震えるのを必死に堪えながら、ややぎこちなく訊ねた俺に対して、彼は微笑した。



「そんなに緊張せずともよいよ。 さっきも言った通り、ミカエルが会いたいと言ったからだ。 ミカエルが興味をもった人間だ、おそらく大物だろうとこちらも控えていたのだが、君のような穏やかな人間でこちらもホッとしているのだよ。 お互いにラフに行こうじゃないか」



 全然そうは見えないのだが、と言ってやりたかったが、ここであちらから対等な立場であろうと提案してくれているのならば、願ったり叶ったりだ。



 俺は唾を飲み込み、強張った気持ちを落ち着けるように吐息を吐いて言った。



「そんな、自分は全然大物なんかではありませんよ。 ですが、お互いにラフに行くというのは賛成です」



 サイオスは俺のまだ下手に出るような態度にやや疑問を持つように首を傾げたが、しばらくして納得したように頷き、言った。



「まぁいい。 さて私に用とのことだったな」



 俺は緊迫から忘れかけていた本題を思い出したようにはっとなった。



「そう、でしたね。 まずは単刀直入に訊ねたいことがあります」



 そう言うと、サイオスは「ふむ」と顎を少しずらして、続けるように催促し、俺の話に耳を傾けた。



 俺は一息分おくと、ついに本題に入った。



「まず、ミルザという女性に心当たりはありますか?」



 まず俺はこのサイオスが本当にミルザの言っていたサイオスかどうかを確認するようにそう質問した。



 さて、どのように返ってくるのかと構えて彼の顔を覗いてみると、そこには意表を突かれたように目を丸くした屈強な男の姿があった。



 その瞳には、まるでなにか大切なものを懐古するような光が映っている。



 俺はそんな彼の態度に「どうしました?」と首を捻るような仕草を見せながら訊ねた。



 おそらくこのサイオスこそがミルザの言っていた男だろうと、この時点で既に確信を得ていた。




 なにかを言いたげに口を半開きにしていた彼が俺の言葉を聞くと、ようやくそれを言葉にした。



「な、ぜ、ミルザのことを知っている……?」



 俺はここぞとばかりに話のペースを掴むように口を回す。



 そして、ミルザから託された首飾りを彼の目の前に掲げてみせた。



「俺にとってのミルザさんは、師匠であり、養母であり、そしてとても大切な方です」



 そしてサイオスは予想通り、食いつくように話にのってきた。



「それは!? 君の言っていることは、本当なのか……? ────いや、本当であるのだろうな」



 一瞬疑いの目で俺を窺ってきたが、すぐに思い直したように目を伏せて呟いた。



「なるほど確かに。 君の瞳はあの人とよく似ている……」



 俺も彼につられて、目を伏せ呟く。



「でも、俺とミルザさんは血が繋がってはいませんよ」



「それはわかっているよ。 けれど……」



 そこで、昂ぶる気持ちを抑えるように吐息をふうと漏らし、一拍空けて続けた。



「その瞳には、彼女と同じ志が宿っている。 まるでミルザがそこにいるみたいに感じるんだ」



 俺はそれを聞くと、胸がきゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。



 それは不快なものではなく、急にあの温もりが、ミルザの優しさが恋しくなったことから来たものだ。



 目の前の彼も、俺と同じような感情を抱いていることが、手に取るようにひしひしと伝わってきた。



 きっと彼にも、ミルザへの強い思い入れ、そして優しい思い出があるのだろうと感じた。



 緊迫したこの部屋を、ミルザという存在の記憶が優しく包み込んで行くように、2人の間にはしばらくの沈黙が落ちた。



 俺は改めて、彼女のすごさをしみじみと感じていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ