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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第6章 〜エルフの国へ〜
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第42話 宿屋

 



 俺たちは、先の一味を衛兵に預けた。



 その際「これは、あなたが?」と驚き、疑うように訊ねてきたが、俺は面倒なことになりそうだったためとぼけたように答えた。



「通りかかった親切な方が一網打尽にしてくれたのです。 すぐへあっちに行ってしまいましたが」



 俺がそう言うと、衛兵は納得したように頷き「あっちにいったんだな」と呟き俺が指した方に駆けていった。



 俺たちは最後に衛兵に宿の場所を訊ねて、なんとか宿に到着することができた。



「食事付きで1泊頼む」俺は宿屋の主人に向かって言うと、商売笑顔で応対してくれた。



「かしこまりました、1名様ですね。 では、銅貨31枚になります」



 しかし俺はポケットの中から言われた枚数の倍の枚数を差し出して、



「いや、これで2人分の部屋にしてくれないか? 広い部屋が好きなんだ」



 俺がそう言うと、主人ははてな、と首を傾げたが、部屋の空きを確認すると「わかりました。 2名様分のお部屋にご案内します」と言って従業員に案内させた。



「こちらになります」と案内された部屋に入ると、俺は即座にベッドを吟味した。



 宿の良さは食事とベッドの清潔さほぼ格付けができる。



 俺はベッドの状態を確認すると「まぁまぁか」と呟き、座り込んだ。



「ラフィー、もういいぞ」



 そう言うと、腰に携えた剣があっという間に人間の姿のラフィーに戻った。



 そしてラフィーは呆れたように眉間を抑えて呟く。



「1人分の部屋にしておけば節約できたのに」



「いや、でも1人分の部屋だったらベッドが1つしかないだろ?」



「1つで十分です」



「だが、それじゃあどっちかが地べたで寝ることにならないか?」



「2人で1つのベッドを使えばいいじゃないですか」



 ラフィーのそんな発言に俺は慌てて待ったをかけた。



「それは流石にまずい。 ラフィーは天使といっても、見た目は普通の女の子だ。 その、気まずくて眠れない」



 俺は頬を人差し指でかきむしりながら目をそらして言った。



 そんな態度にラフィーはすこし顔を赤らめたような表情で返した。



「べ、別にあたしは気にしませんよ。 むしろそっちの方が……」



 最後はごにょごにょと何を言っているのか聞き取れなかったが、ラフィーは顔を真っ赤に染めていた。



「やっぱりなんでもありません。 さ、さっさと寝ましょう」



 はっと我に帰り、まだ若干紅潮した頬のまま、そう言って俺が座っていたベッドの反対側にあったベッドに逃げるように潜り込んだ。



「おかしなやつだな」



 そう呟き俺もベッドに横たわった。



 すると、いきなりどっと疲れが押し寄せて来る。



 灯りを消すと、すぐに睡魔に襲われ、俺の意識はそれに抗うこともしようとせず眠りに落ちた。





「…………」



 翌朝、俺は腕に感じた、柔らかく暖かい感触に意識が覚醒した。



「……ん? なんだ?」



 俺はそんな感触ん不思議に思い、ゆっくりと体を起こす。



 しかし、異様に腕が重かった。



 目をこすり、視界を鮮明にすると、そこには小さい寝息をたてて俺の腕にしがみついていたラフィーがいた。



 まさか、俺が寝ている間に潜り込んできたのだろうか。



 そう思いながら「おい、ラフィー」と肩を揺さぶる。



 すると、大きな欠伸をかいて体をぴーんと伸ばし、目をこすりながら呆けたような口調でラフィーが言った。



「ふわぁー、あ、マスター。 おはようございます」



「これはどういうことだ?」



 俺はラフィーの頬をつねりながらジト目で言った。



「だってぇ、マスターの腕、とてもあたたかいんですよぉ」



 まだ意識がはっきりしていないのか、そう言いながらさらに強く腕にしがみつく。



 俺は呆れたとばかりに溜息をこぼして。



「お前なぁ」



 そう呟いて、これからは1人部屋にして節約しようか、と検討することにした。



 どうせ、2人部屋をとっても、毎回、俺のベッドにラフィーは侵入くるだろうから、と。



 それなら1人部屋にして節約のした方がよっぽどいい。



 それにラフィーがしがみついていても快眠ができることに変わりがないことは今日でわかった。



 そう考えて、俺はラフィーの頭に手をおいて溜息混じりに言った。



「はぁ、これからは節約することにするよ」



 こうして、この日以来、宿に泊まるときは1人部屋をとるようになった。



 回を重ねていくごとに慣れていき、じきに気にならなくなっていった。




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