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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第6章 〜エルフの国へ〜
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第37話 気配感知

 



 翌朝、俺は肩に感じた感触で目を覚ました。



「あ、マスター、やっと起きたんですね」



 天使が俺の肩をゆらゆらと揺さぶって目覚めを促していた。



「ん、ラフィー、か?」



 俺はまだ眠気のたゆたう声で呟いた。



 目をこすりながら、視界をだんだんと鮮明にしていく。



 どうやらあのままいつのまにか寝てしまっていたようだ。



 寝ている間に敵意を向けられることはなかったようだ、と俺は安堵に胸をなでおろした。



 そしてようやく、意識がはっきりするようになり頭も回転を再開した。



 今日の目標はここから1番近くにある、大きめの街、『ステージア』へ向かうことだ。



 少なくとも丸一日はかかる距離に、ここから30キロは森の中だ。



 道中何が起こるかわからない。



 俺は警戒を強めて辺りを見回した。



 気配感知のスキルの効果は残り2時間弱だが、これだけ明るければ、魔獣の1体や2体は容易に退けられるだろう。



 それでも大群に襲われた時は最悪スキルを使用することも考えなければならない。



 いざという時のために、スキルはあまり乱用できない。



 俺は立ち上がり、ラフィーに声をかけた。



「さぁ、テント片付けたら出発しよう」



「はい! マスター」



 飯については朝昼兼用で途中で野草か、魔物でも捉えればいいだろう、と思い今日はすぐに出発する。



 街に入る前に夜になってはまた野宿しなければならないからだ。



 そして俺たちは、緑の生い茂る深い森林の中を再び歩き出した。




 俺は道中でラフィーに昨日気になったことについて訊ねた。



「なぁ、ラフィー、昨日寝るときにその羽と輪っかがなくなっていたんだが、あれはどうなっていたんだ?」



 俺の質問に対してラフィーは「ああ、あれはですね」と一拍おいて答えた。



「寝る時は羽とかあると邪魔なので、具現化しないようにしているんです」



「というと?」



「この羽と天輪は本来具現化しない限り、存在もしないものなんです」



 俺は聞きながら、具現化という言葉を気にし、腕を組んで首を捻った。



「つまり、どういうことだ?」



 俺が訊ね直すと、ラフィーは自分の背中の翼をつまんで言った。



「つまり、これ、ただの飾りってことです」



 そういうと同時にそこにあったはずの翼と天輪が消えた。



「なるほどね、別に出すこともできるし、出さないこともできるってわけか」



 俺はふむふむと頷きながらメモをとった。



 その途中ラフィーが「そんなことまで書かなくていいです」と恥ずかしそうに言ってきたので、こういう個人的なことは自重しておこうと決めた。



 俺がやめるとラフィーは安堵の吐息を漏らした。



 だが、これから大きな街へ行くというのに、羽や天輪がくっついているようなことがあればおそらく悪目立ちするか、最悪、不審者扱いで、衛兵に追い出されかねない。



 そんな考えの上で俺はラフィーに提案した。



「なぁ、それ出さなくてもいいなら、これからはあまり羽とかは出さないでくれないか?」



「まぁいいですけど、なんでです?」



「これから大きな街に行く予定なんだが、そんな格好していると、悪目立ちしすぎる」



 俺の提案にラフィーは一瞬不思議そうに首を傾げたが、そのあとは特になんともなく頷いた。



 俺は「ありがとう」と言って、一安心する。




 その時だった。



 ピクッとなにかが背中を通って行くような感覚を覚えた。



 どうやら、気配感知が反応したようだった。



 残り時間ギリギリでついに初めて気配感知のスキルが活用される。



 スキルの効果か、感覚的に相手の情報が手に取るように分かった。



 おそらく敵は4体、小型の魔獣、もしくは魔物。



 距離はおよそ20メートルと言ったところだろうか。



 相手も警戒して、ゆっくりと距離を縮めているようだ。



 俺は警戒心をより一層強め「ラフィー」と愛剣の名を呼んだ。



 ラフィーは俺の意思を汲み取るかのように無言で頷くと、ゆっくり目を閉じて、うっすらと燐光を放つ。



 その瞬間、俺の手に何かが握られていた。



 それはあの神父が俺によこし、俺の戦いには欠かせないものとなっていた、愛剣だ。



 俺はそれを確認すると「いくぞ」と相棒に向かって言う。



 蒼い鋼が木漏れ日に照らされ煌めく。



 それと同時に頭の中に可愛らしい声が響いた。



「はい、マスター!」



 これはラフィーから事前に聞いていたことなのだが、剣化した状態でも『念話』と言う手法でラフィーと意思疎通ができるというものだ。



 そして、愛剣を片手に構えて、俺達は臨戦態勢に入った。







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