第3話 自己紹介
第3話投稿です!
一日に一、二話更新していくつもりなのでどんどん読んでいけると思います。
それでは最後までお楽しみください。
パンッ!と瀬戸が手を叩いて、ざわめきを鎮めた。
まるで何かのスキルのようだ。
「はーい! それじゃあ話もここら辺にして、まず自己紹介をしようか」
瀬戸はそう呼びかけ、自己紹介をすることを促した。
自己紹介の流れは、まず現実世界での名前を言ってからこの異世界、サーナスでの自分の名を紹介する、という感じだった。
「じゃあまずは俺から。 あっちでは瀬戸 裕也、こっちではローク・ラシュダット。 異世界でもよろしく!」
やはり当然のように最初に言ったのは瀬戸だった。
そこから瀬戸は1人ずつあっちの名前を呼んでいき、呼ばれた人が自己紹介をしていった。
どうやら出席順のようだ。
彼は異世界に来ても、どこまでも委員長らしい。
俺の出席番号順は30番、このクラスの一番最後だ。
「じゃあ次は、柏田さん」
「わ、わかりました」
お、次は柏田さんか。
こっちではどんな名前になっているのか。
「え、えっと、柏田 伊織です。 こ、こっちではミリア・アーチェラといいます。 よ、よろしくお願いします」
すっごい緊張している。
文は途切れ途切れ。 さらに常に顔をうつむけている。
まぁ仕方もないことなのだろう。
柏田 伊織という少女は、転生前は、地味で、教室のひっそりと隅で本を読んでいるような少女だった。
それでも仲のいい友人はいたようだが。
そんな彼女がいきなり、人前で話すことなど、困難極まりないことは似たような人種としてよくわかる。
クラス内では、恐らく晴人の次に俺が接点をもっていた生徒だ。
たまに勉強に飽きて、よく本を読んでいた柏田に、おすすめの本を紹介してもらったことなんかもあった。
それゆえか、さっき俺と話した時は、あまりに緊張していなかったのだろう。
彼女の自己紹介中で柏田という名前が出たとき、広場が少々ざわついた。
「おい、あれ柏田か?」
「ちょっと、いや、すごいイメージとかけはなれてるんだけど?」
「やばい、可愛いんだけど。 あいつめっちゃ地味じゃなかったっけ?」
クラスの連中は、誰もがそのように耳打ちしあっていた。
結局のところ、このクラスの連中のほとんどが、柏田のことを見た目だけで判断しているということがよく分かる発言だった。
みんな、柏田の容姿が変わった途端に目の色を変え、態度を変えてしまうのだから。
別に俺には関係の無いことなのに、なんだか不快に思えてくるほどの手の平返しだ。
そんな光景に当のミリアはさらに動揺を膨らませた。
そして恥ずかしげに、雑踏の中に戻っていった。
「ありがとう、それじゃぁ晴人、頼む」
次は晴人の番のようだ。
ここだけはしっかりと聞いておかないとな。
「どうも、河村 晴人っす。 今はアーサ・ライルボードって言います」
俺は晴人の方を見やったが彼は何故か俺から目を逸らした。
この時どこか違和感を感じた。
なんだかいつもの晴人ではないような────
その後は順調に自己紹介は進行していき、俺の番迎えた時だった。
「よし、全員終わったみたいだな。 それじぁ解散にするけど、名前の確認とか個別でしたいことがあったらやっとくといいぞ」
瀬戸は何事もなかったかのように続ける。
俺は本来「おーい、俺のこと忘れてないか」とツッコミを入れるべきなのだろうが、それはできなかった。
脳裏にはある二つの可能性が浮かんでいた。
全員が本当に俺のことに気づいていない可能性とあえて気づかないふりをしている可能性。
おそらく後者の方が高いだろう。
なぜみんなそういう態度をとるのか一応は把握していた。
それは高校に入学したばかりの出来事だった……
読んでくださり有難うございます。
今話も伏線はりどであまり展開がありませんでしたが、これからどんどん進展していくので、どうぞこれからも読んでやってください。
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