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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第6章 〜エルフの国へ〜
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第32話 天使

 



 およそ3年ぶりに吸い込んだ外の空気はなんとも爽やかだった。



 そよ風が木々を揺らす音はとても心地よく感じる。




「行ってきます」




 俺は振り返って、ミルザにしばしの別れを告げて歩き出した。




 あまり見覚えがない場所なので、土地勘がなく、ミルザの持ち物である地図を見ながら進んで行く。



 レイアース王国は、ロッドハンス王国の属するフェーエル大陸の南方に位置する国だ。



 エルフ族の中では随一の大国で、エルフの6割がその国に籍を置いているという。




「はぁ、よりによってあそこを通らなきゃならないのか」



 俺は地図を見ながら大きな溜息をついた。



 なぜなら、進路の途中には、あの忌まわしきカーロ村が位置していたからだ。



 まぁ、すこし危険ではあるが、迂回して、山を登るしかないか。



 そして再び歩き出そうとした時だった。



 腰に据えてある剣が、ぶるぶると震え出したのだ。



 まるで意思を持って動いているかのように、鞘に収められた剣はひとりでに動き出したのだ。



「───なんだっ!?」



 動きが収まったと思えば、次は眩い燐光を放つ。



 なんて忙しい剣だのだろうか。



 いや、しかし、いったい何が起きている?



 あたりは白爆発でも起こしたかのように真っ白な光に包まれていた。



 次第に光が散っていき、目があけられるようになる。



「いったい、何が────」



 目をおおっていた腕を退けて、ゆっくりと瞼を上げていくと、とんでもない光景を目にした。



「あぁ! やっとこの姿に戻れました!」



 そこにはぐーん、と背筋を伸ばし、欠伸をしている天使のような少女がそう呟いていた。



 薄い水色の透き通った艶やかな髪の毛は、肩に届かないくらいのショートカット。



 瞳は大きな宝石のサファイアを埋め込んだようなくりっとした目。



 幼さの残る柔らかくぷっくりとした輪郭。



 まるで天使を想像させるような華やか過ぎずかつ、単調過ぎない、純白のワンピース系ドレスに身を包ませ、頭には不思議な光のリングが浮き、そして驚くべきことに背中には大きく、真っ白な翼が生えていた。



 俺はつい、口が空きっぱなしになる。



 驚愕の光景に目を剥き、腰を抜かすように地面に座り込んだ。



「……おまえ、は、いったい?」



 空いた口が閉じたと思えば次の瞬間そう訊ねていた。



 すると、少女はニコッと歯を見せて笑いかけてきた。



 その笑顔はまさにその幼き容姿に見あった、可愛らしい笑みだった。



「あ、宿主、おはようございます」



 目を擦り欠伸をしながらあたかも本当に寝起きのような態度で放たれた言葉に俺は困惑の色を深めていく。



 は、宿主?



 というか、この少女はいったい何者だ?

 


 見たところ、正直天使としか言い様がないのだが。


 見た目からして12、3才といった所だろうか。



 数秒で何とか動揺を抑え、冷静な風を装って訊ねた。



「宿主って、なんの事だ? それより、お前は一体何者なんだ?」



 そんな問いかけに、少女ははてな、といったような表情を浮かべて、首を捻って言った。



「んー、そうですね。 宿主は、宿主なのです。 あたしはあなたの……言わば、相棒、でしょうか?」



「いや、相棒って……もっと具体的にだな」



 俺は抗議するかのように少女に訴えかける。



 すると「そうですねー」と口元に指をやって自己紹介をはじめた。



「宿主は少し面倒くさいお方なのですね。 まぁいいです。 あたしの名前はラファエル、12天使の1柱なのです」



 その態度に少し苛立ちを覚えつつも、ラファエルと名乗る少女のその存在の正体の説明に耳を傾けた。




 ラファエルの話の内容はこうだ。



 彼女は、天界からこのサーナスに転生した神の子供、『天使』と呼ばれている存在らしい。



 そして、ここにいるラファエルは12天使と言われる、転生した天使の1角。



 12天使は大天使セラフィムによってこのサーナスの地に転生させられた。



 ラファエルの他には、ルシフェル、カマエル、ラミエル、ザフキエル、レミエル、バラキエル、ミカエル、ラグエル、ウリエル、ガブリエル、メタトロンという天使がいるらしい。



 それぞれは見込みのある者の剣、もしくは剣以外の武器に魂を転生させる。



 その武器をのことを【天聖武具(サンティルム)】と呼ぶのだという。



 他の天使がどこに転生したのかはラファエルにも分からないらしいが、世界各地に散らばって転生したのは確からしい。




 なかなかどうして、俺はついそんな話に胸を踊らせた。



 不思議な話だ、信じられない話でもある。



 それでも、まだにわかに残る厨二病もとい、少年心をくすぐるのには十分だった。



 しかし、簡単に信用するわけにはいかない、と自分に言い聞かせて、少し警戒しながら訊ねる。



「お前の存在は大方わかった。 だが、俺が宿主ってのはいったい何故だ?」



 そう訊ねると、ラファエルは「んー?」と、またしても不思議そうに首を傾げた。



「そんなの決まってますよ、あたしが宿主を見初めたということです。 宿主の人間性に惚れ込んだといってもいいですね」




 それを聞いて俺は、ラファエルがいったい何を言ったのか理解できなかった。









たまに設定が若干変わっていることがあるので、気になった方は、前に戻って読むか、感想で教えてください。お手数をお掛けします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コミックから来て、今更読ませていただいております。 前回のエルフの国目指して〜からのヒロイン登場告知でヒロインエルフか…と思わせておいてからのこれで上手く騙されました笑。 「あー剣が震えた…
[気になる点] 弱冠14歳と書いてますが、転生前の年齢を足したら精神年齢は30歳超えてませんか? 厨二の最中って感じかもですけど、なんか違和感を感じました
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