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第31話 ミルザの日記

ついに第6章が始まりました!

この章も楽しんでいってください。

 



 その後は、ミルザの亡骸を厳重に木箱に入れ、火葬した。



 そして、迷宮の岩の中でもひときわ綺麗で硬そうな岩を切り抜き墓をつくった。



 ミルザの安寧の眠りを祈って手を合わせる。



 しかし、俺はもう彼女の前では絶対に泣かないと決めた。



 こんな俺を信じて、育ててくれたミルザにもう絶対に心配をかけないために。



「ミルザさん、ありがとうございます……」



 俺は墓の前で小さく感謝を呟くと、またクエスト区へ赴く。



 そして、魔獣を20匹ほど討伐し俺は、ステータスプレートを開いた。






『ユウ・クラウス

 人種 Lv91

 天職【 】

 スキル

 なし


 生命力─10230/10230


 体力─5690/6010


 攻撃力─4505/4505


 防御力─4020/4020


 MP─4190/4190


 SP─3450/4450


身体能力─3520/3520


【固有スキル】

 ・可能性⇩

 《身体能力倍増Lv4》《瞬発強化Lv2》《アイテムボックスLv2》《身体能力向上Lv4》《防御力向上Lv2》《魔力向上Lv1》《魔法耐性Lv1》《気配感知Lv1》《俊敏補正Lv2》《物理耐性Lv3》《毒耐性Lv1》《攻撃力補正Lv1》《隠密Lv1》』





「スキルも増えたし、レベルもかなり上がったか」



 俺はそれだけを確認するとすぐにステータスを閉じた。



 まだまだこんなのじゃダメだ、もっとレベルを上げなければ。



 俺が勇者や賢者に追いつくにはまだまだ努力が足りない。



 ミルザのレベルは300を超えていた。



 ならばまずはそれを超えなければならない。



 そう決意し、次の日もそのまた次の日も、俺はクエスト区でレベル上げに勤しんだ。



 取得できそうなスキルは片っ端から条件を満たして獲得していった。



 そして、狩が終われば魔獣の肉をミルザの墓に備えて、手を合わせ自分も食べる。



 こうすればまた一緒に食べている気がしたからだ。



 もちろん正常な判断はできている。



 踏ん切りももう付いている。



 それでもこれくらいは許してくれてもいいだろう。







 そんな生活を繰り返して、ついに2年が過ぎた。



「こんなもんかな」



 俺は大きなリュックにミルザの形見である分厚い本や、日記と、食料を詰めて一息を付いていた。



 そう、今まさに俺は旅の支度をしていたのだ。



 あれはミルザがなくなって数日が経ったときのことだ────




「はぁ……」と俺は寂しげに溜息をつきながらミルザの残した日記をペラペラとめくっていた。



 これは別に魔法やスキルのことが書いてあるわけではなく、ミルザの日常を日記として記してあるものだ。



 そこにはミルザの苦労や寂しさが数多く綴られていた。



 そして終盤に近づくと、俺のことが書かれており、それはとても楽しそうに記してあったのだ。





『私はユウくんのお母さん代わりになれているかな、とても心配だよ』



 なれていたよ。



『ユウくんはすごい子だ。 きっともっと強くてかっこいい男になってくれる』



 大げさだよ。



『ユウくんは勉強も熱心だし、とても優しくて、まるでアルくんみたい』



 そんな、アルマークさんはもっとすごいはずだ。



『ユウくんのレベルが今日も上がった。 すぐに私のレベルも抜かれてしまうなぁ』



 俺なんてまだまだだ。



『もうすぐ、天命がなくなってしまう。 ユウくんを1人にしてしまうのがとても心配だよぉ』



 俺は1人でも頑張れるよ────いや、本当は全然ダメだ。 やっぱりあなたがいないと、俺はダメだよ。



『きっと明日には私の天命は完全に尽きるだろう。 ユウくんと離れ離れになるのはとても心苦しいけど、最後の時間まで絶対に笑顔でいるんだ』



 最後の1ページを読みきったとき俺は必死に我慢していた涙をついに流してしまった。



 俺はすぐに拭って「今のはノーカンで」と、苦笑いしながら自分と、安らかに眠るミルザに言い聞かせた。



 どこかでミルザが笑った気がした。




 そして日記を閉じようとしたとき、はらりと紙切れのようなものが地面に落ちた。



「なんだ?」と俺はそれを拾い上げて、その手紙の内容を見た。



『やあ、ユウくん。

 これを読んでいるってことは私はもう死んでしまっていると言うことだよね?


 きっとたくさん泣いてくれたんだと思う。

 本当にありがとう。


 私はあなたに出会えてよかった。


 あなたに最後にいろんなものをもらえて、私の憧れまで叶えてくれた。


  突然なんだけど、あなたは今結構途方に迷ってるんじゃないかと思うさね。


  だから最後に道だけつくっておくさね。 最後の母親の、師匠の仕事を受け入れて欲しい。


  私がいなくなったら、まずはレベルを200まで上げて、それができたら、エルフの国に行くといい。


 レイアース王国という国で、サイオスという男のところに行くといいさね。

 きっとそこであなたはさらに強くなれる。


  私の首飾りをその男に見せればきっと歓迎してくれるはずさ。 まだ他人を信じられないかもしれないけど、その男は信用できるやつさね。


 だから心配せずに向かって欲しい。 きっと、辛いことだって多いと思う。

 けどね、絶対楽しいこともあるはずさ。


 その楽しいことをあまり教えてやれなかったのが、1番の心残りだった。


  だから、ユウくんにはこれからの人生を楽しんで欲しい。 少し長くなってしまったね。


  それじゃあ最後に、あなたと出会えて本当によかった。


  ありがとう。


 あなたの師匠、ミルザより……』



 それを見て、ミルザが最後の贈り物をしたのだと思った。



 全く俺はもらってばっかりだな、と苦笑いしながら、必ずそれに見合った成果を上げることをミルザの墓に向かって誓った。



 そして俺は言葉通りレベルを200まで上げ、こうして旅の支度をしていたというわけだ。



 まるでミルザの操り人形だと思ったが、彼女の操り人形なら別にそれでも構わないと思った。



 俺の命は、全てあの人のために使う。 使って使って使い潰す。



 目的はただ一つ、ミルザの願いを叶えることなのだから。



 レイアース王国までは歩いて1ヶ月はかかるはずなので、それ相応の荷物を用意した。



 腰には俺の愛剣を携えて、最後にミルザの墓に手を合わせると、いざ迷宮を出た。



「う、まぶしっ」



 久しぶりに浴びる太陽の光に思わず目を細める。



 こうして、俺の新たな旅が始まったのだ。







今回の第6章ではヒロイン登場させる予定なので、お楽しみに。

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