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第23話 修行開始

第5章突入です!

 



 ぐぅー、俺とミルザの腹は大きな音をたてて、空腹であることを知らせる。


 お互いに苦笑いしながら、食事の支度をする。


 ミルザは黒狼と大獅子の肉をアイテムボックスから取り出した。


 その光景はとても不思議なものであり、俺はついつい目が離せなかった。



「本当にそれ便利ですね」



 大獅子も黒狼も倒した時と全く同じ状態でそこに出現する。


 黒狼はまだ湯気をたてたままだ。



「アイテムボックスは条件が簡単だから、あなたなら簡単に取得できるさね。 けれど収納時にSPを消費するからあまり乱用はしないようにね」



「はい、ありがとうございます」



 俺は胸踊る想いで返事をする。



 これから、どんどん新たなスキルを手に入れて行けるのだと思っていたからだ。



 そして、和やかな話をしながら、魔獣の肉を口に運んでいく。



 いざ、肉だけを取り出してしまえば、牛肉のステーキとあまり変わらなかった。



 さらに塩で少し味付けしただけなのに、いい香りがする。



 もっと生臭いものだと、少し覚悟をしていたが、それは杞憂に終わったようだ。



 むしろ魔獣の肉はこの世界に来て食べた食べ物の中で1番うまい。



 おそらく、地球で食べた料理をも超えるだろう。



 それほどまでに魔獣の肉とは見た目にそぐわぬ上質な味わいがあった。



 見た目で判断するのはあまり良くないな、そう俺は内心思っていた。



 一通り食事を終えると、俺は別の場所に目がいく。



 それはここに来た時から気になっていたものだ。



「ミルザさん、あの大量の蔵書はなんですか?」



 俺は石壁で隔てられている部屋の隅に置いてある大きな本棚の方を指さして訊ねる。



 あそこまでの量の本は村ではまるで見かけなかったため、とても興味を引くものだった。



 俺がそう訊ねるとミルザは「あぁ、あれはね」と少し自慢げに説明した。



「あれは、この150年の結晶さ。 そうさね、まずはあれを1ヶ月で全部読むところから始めましょう」



 俺は、目の前に広がる200冊はあろうかという分厚い本を眺めて、先の遠さを覚えつつ、1ヶ月という短い時間で果たして読めるのだろうかと不安を募らせ苦笑いする。


 けれど、読むしかない。



「……分かりました」



 若干顔を引き攣らせて、俺は決まりのわるそうな返事をする。


 すると、ミルザは微笑して、



「ふふ、確かに大変ね。 でも、知識は力さ。 知っているのと知らないのじゃ雲泥の差なんだ」



 俺はひとまず毎日10冊は読むことにした。


 本には文字がびっしりと刻まれており、かつて読書家を自称していた俺でも目が回るほど難しい言葉や内容が書かれていた。


 知らない言葉はミルザに教えてもらいながら何とか読み進めていった。


 しかし、読んでいて飽きなかったのは、大賢者であるミルザの実力の賜物だろう。



 そして、俺はある1冊に気になる単語を見つける。



「ここに書いてある『災厄の聖戦』ていうのはなんですか?」



 俺は本のページにその言葉が書いてある場所を指で指してミルザに訊ねた。


 この単語はミルザの願いを聞いた時にも耳にした言葉だ。


 あの時はざっくりとしか説明されなかったのであまりよく分からなかったが、いざ自分が引き受けるとなると、急に気になり出すものだ。



 俺がそう質問すると、ミルザはまるで辛い過去を思い出すかのような苦しそうな表情を浮かべて、目を伏せて、唇を噤んだ。



 俺は彼女の訝しげな表情から察して、自分の発言に何かまずい部分あったのではと、慌てて頭を下げた。



「すいません、何かまずいことを聞いたみたいで」



 そう言うと、彼女は「ちがうの」と言って首を横に振った。



 ミルザは少し深呼吸して、荒らげそうになった息を整えると。



「ごめんね、ちょっと色々あってね、あなたのせいじゃないの。 そうさね、やっぱり話さなきゃだね」



 この後ミルザは静かに語った。


 彼女の体験した災厄の聖戦の話、そしてミルザの願いの真相を。








投稿2週間で祝10000PV突破です。

これからの第5章も楽しんでいってください。


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