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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第12章 〜孤高の魔女〜
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第160話 オルセンへ

 

 それからしばらく歩くと、15分ほどでパトリアに到着し「あら、いらっしゃい!」と、いつものようにリンダが元気いっぱいに彼らを迎えた。

 リンダには、あと2人来ると伝え、席に案内してもらった。


 しかし、せっかくの食事中にもレイシアは少しだけ浮かない顔をしていた。

 そんな時、店先の扉が開く音がして、リンダは「はーい!」とにこやかに扉の方へ向かう。


「あら、待ってたわよぉ! ほら、こっちこっち」


 嬉しそうなリンダのその言葉を聞いて、レイシアははっと顔を上げる。


 もしかしたら、ユウが来たのではないかと思い、ぱあっと頬がゆるんだ。

 がしかし、その人物───いや、天使を見てその表情は再び陰る。


「やぁやぁ皆さんお揃いでー! ウチも混ぜてーな」


 おかしな訛りでそう言う陽気な天使。


「レミエルか……」


 彼女を見て、レイシアは残念そうに溜息をついた。


「え、なんでウチのこと見た途端残念がるん? レイシアたんちょっと冷たない!?」


 レミエルは不満げにぷんすかと地団駄を踏む。


「ちゅーか、みんなで来るんならウチのことも誘ってーや」


「いや、ボクもさっきエルフィア達に誘われたところで……君は部屋にいなかったし。 それに君のことだから、どうせすぐに嗅ぎつけて勝手に来ただろう?」


「えー、酷い。 ま、来るんやけどなぁ。 そしてもう座ってるんやけどな」


 にぱぁっと何の気なしに言いながら、いつの間にかレミエルは席に着き、リンダさんになにやら色々と注文し始めていた。


「にしても、なんやちょっと雰囲気暗ない? どしたん?」


 レミエルはある程度注文し終えると、けろっと笑いながらレイシア達に向けてそう言った。


「まさか、うちが来たから、なんて言わへんよなぁ……なんて」


 不安げに苦笑いするレミエルにレイシアは「うん」と抑揚のない声で返す。


「う、うそやん……」

「うそだよ」


 面食らい、本気で泣きそうになるレミエルにレイシアは少し笑いそう告げると、


「もー、やめてやぁ。 レイシアたんも人が悪いで?」


 レミエルは安堵したように笑ってレイシアの肩をぽんぽんと叩いた。


「まぁ、今は君よりもユウに来て欲しかったところではあったけどね」


 痛い痛いと言いながら、レイシアはそう呟く。

 それを聞いたレミエルは「ん?」と首を傾げた。


「ユウちゃんならさっきおうたで?」

「それは本当かい!? どこで!」


 レイシアははっとなってレミエルの肩を掴み慌てたようにそう迫る。


「レイシアたんちょっと落ち着いてぇな」


「す、すまない。 それで、ユウは?」


「ユウちゃんとは、さっき学園の正門前ですれ違ってな。 先生に呼ばれてたみたいやわ。 ほんで、なんや大事な用事ができたって言ってどこかへ行ってしもたんよ」


「どこかって。 いったいどこへ……」


 レミエルの話を聞き、レイシアは沈んだ声を零し、目を伏せる。


 そして突然「はっ!」と何かを察したように顔を持ち上げ、泣きそうな声を漏らすと、顔を深く俯かせた。


「もしかして、ボク、避けられてるのかな……。 彼に嫌われてしまったのかな……」


 そんなネガティブ発言を落としながら、ついにレイシアは泣き出し、その顔をばっと両手で覆った。


「やっぱり、昨日のことで嫌われたんだ! ボクはなんてことをしてしまったんだ……」


 ネガティブ思考を次第にエスカレートさせていくレイシアをレミエルが慌てて宥める。


「だ、大丈夫やって。 ユウちゃん、別に怒ってる様子とかなかったで?」


 それに続くようにシルバ達も席を立ち、レイシアに寄り添った。


「そうだぜ。 寮に帰ってから、ユウはレイシアのことすげェ心配してたって」


「シルバの言う通りですよ。 マスターはとても優しい方です。 きっと何か事情があるんですよ」


「そうよ、レイシア。 ユウはそんなことであなたのことを嫌いになったりはしない。 それはあなたもよく分かっているはずよ」


 4人の優しい言葉と眼差しに、レイシアは鼻をすすりながらも落ち着きを取り戻した。


「そう、だよね。 ありがとう。 ユウのことを疑ってしまうなんて、ほんとうに、こんな自分が情けない」


 沈んだ声のレイシアに、シルバが雰囲気を和ませようとしたのか「まぁなんだ」と咳払いをした。


「レイシアも意外と普通の女子だったってことだな」

「シルはん、それセクハラやで?」

「女の子にそういうこと言うのはちょっと、良くないですね……」

「良くない。 早く謝った方がいいわよ」


 そんなシルバをレミエルを始めとした女性陣が糾弾した。


「なっ! そうなのか!? よくわかんねェけど、すまんレイシア! 今のセクハラだったらしい」


 レミエル達に言われて、慌てた様子で謝るシルバに、ずっと硬い表情していたレイシアもぷっと笑い、冗談目かしく片目を閉じる。


「ほんとだよ、まったく。 シルバはボクのことなんだと思ってたのさ」


「マジですまねェ!」


 膝に手を付き真摯に謝罪をするシルバに、レイシアは「冗談だって」と笑いかけた。


「はァ、なんだよそれ……」


 シルバはぽかんとなりながら、内心で密かにこう思った。


(ユウ、頼むから来てくれェ……)


 そんなこんなで、沈みこんでいた雰囲気は和やかさを取り戻し、5人は食事を楽しんだのであった。



 ◇◆◇◆



 ───ちょうどパトリアにレミエルが入ってきた頃、ラフィーとエルフィアの2人の元にユウから念話がかかってきていた。


『ラフィー、エルフィア。 今、いいか?』


 2人は問題ないことをユウに知らせる。


『もうパトリアには着いたか?』

『はい、着いてます』

『食事中のところごめんな。 レイシアの様子はどうだ?』

『そうね。 思ったよりも元気そうよ。 でもまだかなり不安定ね。 ユウにも昨日のこと、とても謝りたがっていたわ』

『そうか……。 レイシアには悪いことをしたな』


 ユウは申し訳なさそうな声音でそう呟く。


『マスターはこれからどうするんですか? パトリアには合流できますか?』

『みんな待ってるわ。 特にレイシアは、ユウが来なくてもう泣きそうな顔してる』

『その事なんだが……』


 ユウの声がよりいっそう重くなる。


『ごめん。 合流できない。 俺はこの後すぐに王都を出なきゃいけないんだ』

『王都を、出る?』

『どういうことですか!? マスター!』

『それは───』


 ユウは2人に手短に理由を説明した。


 これからレイシアの故郷であるオルセンへ向かうこと。

 アルド先生に計らってもらって、王都から出られるようにしてもらったこと。

 少なくとも2週間は帰ってこられないこと。


『急ですまん。 詳しいことは、こっちに戻ってきてからちゃんと話す』

『そんな……』

『あたし達も行きます!』

『すまん。 今回は俺1人で行った方がいいんだ。 2人にはレイシアの様子を見てやっていて欲しい。 頼む……』


 そんなユウの頼みに、歯がゆさを感じながらも2人はユウに余計な苦労をかけまいと、努めて明るく返事をした。


『分かりました!』

『こっちは任せて』

『2人ともありがとう。 レイシアには、このことは伏せといてくれ。 俺のお節介のせいで余計な気を遣わせたくないんだ』

『了解です!』

『分かったわ』

『すまん。 戻ったらちゃんと埋め合わせするから』

『ほんとですかぁ! それでは、期待してお待ちしていますね!!』

『待ってる。 だから、ちゃんと帰ってきてよね』

『もちろん。 ごめん、もう馬車が来る。 それじゃあ切るよ』

『道中お気をつけて、マスター』

『行ってらしっしゃい。 気をつけてね』

『あぁ、2人の方も頼んだぞ』


 そこでエルフィアとラフィーへ繋がっていた念話はぷつりと途絶えた。

 それはちょうど、レイシアが泣き出した頃だった。



 ◇◆◇◆



 俺は2人との念話を切ると、急いで王都の中央馬車ターミナルへ向かっていた。

 もうすぐ出発の時間、今は一刻も時間が惜しい。


 アルドにはうまく計らってもらい、俺の外出許可証と休暇を誤魔化す手筈を整えてもらっているが、それにも限界がある。


 アルドの言うところでは恐らく休暇は伸ばせても1週間だろうということだった。

 だからこそ移動に関して悠長にしている時間はない。


 全力疾走すること10分、なんとか馬車に間に合い、俺は王都を出発することが出来たのだった。


 自分でした選択だったか、1人できてしまったことを今更ながら寂しいなと感じながら、俺は馬車に揺られるのであった。



 ───王都を出発してちょうど1週間後、オルセン近くの大きな街で俺は馬車を降り、徒歩に切り替えた。

 そしてその翌日、ついに俺はオルセンに到着した。




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[気になる点] 二週間離ればなれですが 武器はどうしているのかな? 武器が天使になるのなら手持ち武器無しで行動している事になるかと。 武器が天使になる 武器の中に天使が入ってる どっちなのかな? …
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