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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第11章 〜学内序列決定戦〜
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第148話 後悔

今回はアーサ視点です。

 


 ◆◇◆◇



「これで勝負は終わったんだ。 約束通り、今後一切、俺に関わるな」



 ユウは俺にそう言い下した。


 その約束は俺から言い出したものだ。


 この試合が終われば、ユウには一切の干渉をしない。


 しかし、こうして敗北した今、俺はどうしてもその条件に納得がいかなかった。


 俺は背中を向けようとするユウを引き止めるように口を開く。



「それだけなのかよ」



 そう呟くとユウは動き止め、再びこちらへ向き直った。


「どういうことだ?」と言いたげな表情を浮かべる彼を見て、俺はとうとう我慢ならず「だってそうだろ……」と零すと、腹の底から込み上げてくる言葉が次々と口をついて出た。



「俺はお前に散々なことをしてきたんだ。 この勝負でも卑怯な手を使った。 恨んでるはずだろ。 関わらないって……たったそんだけで済ませるのかよ」



 本当は今まで、ただ気付かないふりをしていただけなんだ。


 自分のしていることが、どれだけ愚かで罪深いことかなんて、とっくに分かっていた。


 でも、気がついた時にはもう歯止めが効かなくなっていた。


 だから俺は、気付かないふりしていた。


 自分の罪から目を背けて、逃げ出したんだ。


 俺は罰が欲しかった。


 そうでなければ、この罪の重さに心が押しつぶされそうだったから。


 しかし、ユウが意見を変えることはない。



「そうだ。 お前は俺に関わらない、それだけでいい」


「なんでだよ……」


「なんだ? お前は復讐でもしてほしいのか?」


「それは……」


「別にお前を恨んでないことはねぇよ。 むしろ死ぬほど恨んでたよ。 復讐したいとも思ったさ」


「だったら……」



 だったらなんで、復讐しようとしない?


 俺がそう言い返そうと口を開いた時、ユウは「でも……」と切り返し、その口からは予想もしない言葉が飛び出した。



「お前には感謝もしてるんだ」


「……!?」



 その発言に、俺ははっと目を見開いた。


 ユウが俺に感謝?


 恨まれる理由はいくらでもあるが、とても感謝されるような心当たりなんてない。


 動揺を隠せない俺を他所にユウは続ける。



「お前と過ごした、あの時間だけは、正直、心底楽しかったって、今でも思うよ」



 ユウはそう言いながら俺に向かって微笑んだ。


 その顔を見て、俺の中でかつての……奏真と過ごした時の記憶がふと想起した。



「お前とは本当の親友になれたと思ってもいた」



 あぁ……そうだな。


 そうだった。


 思い返せば、やっぱりそこにたどり着く。


 奏真と過ごした時間。


 お前は、俺が演技で仲良くしてる振りをしていたと思ってるかもしれない。


 俺も、自分は演技をしているのだと思い込んでいた。


 いや、思い込もうとしていた。


 そうしないと、目的を見失ってしまいそうだったから。


 だけど今になって思い出した。


 本当は俺も同じ気持ちだったんだって。


 今更後悔しても遅いって分かってるけど、俺はあの時、何よりもお前を選ぶべきだったんだ。



「それに、あの時村から追放されたおかげで、俺はもっとかけがえのない人と出会った。 だから、俺はお前にこれ以上何もする気はない。 何かして欲しいとも思わない。 俺とお前は、もう完全に別世界の人間なんだ」



 そう言って、ユウは最後に「じゃあな」と言い捨てて、俺に背を向けると、歩き出す。


 その背中を見て、俺は無意識にも「俺も……」と零してしまった。


 するとユウは背を向けたまま立ち止まる。



「俺も、お前と一緒にいた時間は……悪くなかった。 もし、あんな出会い方じゃなければ……」



 心からの本音が、言葉が溢れてくる。


 悪くなかったなんてものでは無い。


 奏真と過ごした日々は最高だった。


 冗談を言い合って、笑いあって、なによりも楽しい時間だった。


 だからきっと『もしも』なんて言ってしまったんだ。


 だがそこから先は、俺には言う資格がない。


 言っても全くもって意味が無い。


 だから俺は口をぎゅっと噤んだ。


 もし、あんな出会い方じゃなければ────お前と本当の親友になれたんじゃないかって。


 そんなことは口が裂けても言えなかったんだ。


 俺が黙り込むと、直ぐにユウの足は動き出した。


 ゆっくりと遠くなる背中を見て、ユウと……三木原 奏真と……親友になれたかもしれない男と完全に決別した気がした。




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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的には何話も続けて回想みたいな事で繰り返し同じような話を読むと飽きてしまうと思います。
[一言] うわー……。 想ったよりも納得のいく心情……。 ちょっと辛いなぁ……。
[一言] これはあれだ。 きっと、あれだ。 ユウがピンチになった時にアーサーが助けに来てくれて、そこから少しずつ仲直りしていくやつや。 読者からすると、なんだかんだ言ってアーサーの好感度低くないし、楽…
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