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第131話 シルバ・ラッドロー①

久しぶりの更新です!

ただ、今話と次話はシルバの掘り下げ回で、本編の進展はありませんが、是非こちらも楽しんでいただければ幸いです。

 


 それは入学式の日の夜、シルバと食堂で夕食を食べ終えた後のことだ。



 俺もシャワーを浴び終え、一息ついたところ。


 お互い、各々に割当てられたベッドに腰掛けていたり、寝そべっていたりしていた。


「───え!? シルバも特別推薦試験で入学したのか?」



 交わしていた会話の途中で、シルバがふと零した衝撃の事実に、俺は目を見開いた。



 今年は俺以外にもう1人だけ、特別推薦試験を受けた人がいるとは聞いていたが、まさかそれがシルバのことだだたとは想像もしていなかった。



 驚く俺を見て、シルバはにししと得意げに笑う。



「まァな。 実のところ、お前さんも、特別推薦だったことは知ってたんだ」


「そうなの!?」


「あァ。 オレはァ、昼前に試験が終わったんだんけどよォ、午後にもう1人やるって聞いてたもんで、どんなやつか興味湧いて、次の試験の様子を覗いてたんだ」


「そこで俺の試験を観戦してたってことか」


「そゆこと。 いやァ、あの戦いはなかなかに震えたぜェ」



 そう言いながら、シルバは腕を組み、どこか意気揚々としたような表情を浮かべてその後も話を続けた。



「アルド先生……アルド・オルフィスつったら、あの、グラディウス流大剣術の最上段だぜ? それで実力を認められて、あの若さでこの学園の副講師長まで務めてんだからなァ。 そんな大物と戦った上に、まさか勝っちまうなんてよォ」


「グラディウス流か……」



 グラディウス流。


 この国だと、主流とまで呼ばれている剣術の流派だ。



 大剣術以外にも、短剣から槍まで幅広い武術を扱っていると聞く。



 グラディウス流はそれらの武術の習得度を十段階に分けており、そのなかの最上段にいるのがアルド。



 試験の後にレイシアから聞いた話だと、アルドは当流大剣術唯一の最上段らしい。



 他にも、槍術では九段と、とてつもない実力者。



 実際に戦って、その実力は肌で感じてはいたが、そのことを聞いた時は、さすがに自分の事ながら、よく勝てたなと苦笑いしたものだ。



 今、あの時の模擬戦のことを思い返してみても、手が少しだけ痺れる。



 だが、前向きに考えれば、それだけの相手に勝つことができるだけの実力が身についているということの証明にもなった。



 もちろん、慢心はしていないが、これまでの努力が確実に身になっていることを確認できたのは今後のことを考えても大きい。



 とは言え、まだまだ自分に足りないものが多くあることも明らかだ。



「あれは本当にギリギリだった。 というか、もし模擬戦じゃなきゃ、あの一撃で俺の体は真っ二つだったろうしな」



 模擬戦の時のことを思い出しながら、俺がそう言うと、シルバはクスリと微笑する。



「謙虚なやっちゃなァ。 まァ、だからそんなに強ェんだろうけどよ」


「別に謙遜してるつもりはないよ。 事実だから。 それに、このくらいで満足しているわけにはいかないんだ」



 そうだ。

 ただでさえ、俺は相当劣った状態からスタートしてるんだ。


 足しても足しても、不足している。



 そんな俺の言葉を聞くと、シルバは「なるほどねェ」と呟きながら、先程とはまた少し違った笑みを零していた。



「にしてもよォ、まじですげェ剣戟だった。 ユウのは見たことない型だったが、ありゃ我流か?」


「いや、基本はある人に教そわったんだ。 そこに、俺なりのアレンジを加えてるって感じだな」



 剣の握り方や、構え、体術などの基礎はサイオス仕込みだが、随所の動作に少しだけオリジナルの形を組み込んでいる。



 まんまサイオスの技を模倣するだけでは、彼には決して敵わない。



「ていうか、シルバって剣術とか詳しいのか?」


「まァ、そこそこな。 オレは、今まで冒険者やってたからよォ、色んな剣術とか見てきたんだわ」


「えぇ!? シルバって冒険者やってたの!?」


「あァ。 12の時からな」


「まじかよ……」



 またしてもシルバの口から飛び出した衝撃的な発言に俺は呆気にとられる他なかった。



 それもそのはずだ。



 ───冒険者。


 それは仕事のひとつ。


 魔獣の討伐や、薬草の採集。


 商人の護衛から遺跡探索など、普通の人には危険とされることを、依頼として請け負う職業だ。



 彼らは一般的に冒険者ギルドという団体に所属し、そこに寄せられる依頼を達成することで、その依頼料を受け取って収入とする。



 個人からの依頼や、大きいものだと国からの依頼まで、様々な依頼が毎日のようにギルドには寄せられる。



 ただし当然、命懸けの仕事。


 故に冒険者になるのは基本的に戦闘に長けた者だ。


 それでも、年に何人もの冒険者が依頼中に亡くなる。


 それくらい、危険を伴い、いつ命を落としてもおかしくは無い仕事なのだ。



 だからこそ、子供の頃から冒険者になるなんていう事例は滅多にない。


 だが、ともすれば、シルバは相当、戦闘に向いた天職を得ているということになるが……。



「ちなみに、シルバの天職って聞いてもいいか?」


「あァ、まだ言ってなかったか。 上級拳闘士だ」


「上級拳闘士……上位戦闘職か。 ならまぁ納得だが……でもそれなら、なんで学園に入ったんだ?」


「……んま、ぶっちゃけ金のためだな」


「金?」



 俺は思わずそう聞き返した。


 これまでということは、およそ4年も冒険者をやってきたということになる。


 恐らく冒険者としての実力を買われて、推薦試験を受けることができたのだとは思うが、お金のため且つ、それだけの実力があるのなら、冒険者を続けた方が良いのではないか。



 俺がそんな疑問を浮かばせていると、



「そうだなァ、ちと長くなるが、まァ聞いてくれや───」



 そう言って、シルバは自分の身のうちを話し始めた。




最後までご拝読ありがとうございました!

明日の24時にこの話の後編を投稿する予定です。

お暇があれば是非読みに来ていただければ幸いです。

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