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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第10章 〜望まぬ再会〜
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第126話 決闘⑤

昨日は定期更新できずに申し訳ありませんでした!

 



 鈍い呻き声と共にしんと静まり返った仮設スタジアム。


 舞い上がった土煙は直ぐに晴れ、フィールド上では、最初の攻防の勝者と敗者が既に決定していた。


 この場にいるほとんどの奴が、その敗者である方が俺であると思っていただろう。


 そして本当に呻き声上げ、敗者となって地に這いつくばっていたのが俺であったのならば、スタジアム内は歓喜の嵐と、嘲笑の雨に満ちていたに違いない。


 ───しかし、現実はそうではなかった。



「一体、なにが……」



 俺のカウンター攻撃に、フィールドの端まで吹き飛び、うずくまったメルクが、呆然と目を丸くして呟いていた。


 それは本当に、ほんの一瞬の攻防であった。


 メルクは木剣を握りしめ、凄まじい勢いで俺の方へと突進。


 勢いを殺さず、俺の上へと跳躍し、重力をも使って、渾身の一振を叩き込んできた。


 確かに、それは速く力強い、必殺の一撃となりうる攻撃であった。


 だが────、



「確かに終わりだったな、メルク」



 俺は、膝を着きながら、不思議そうに自分の木剣を見つめるメルクを煽るようにそう言った。



 スキルの効果はまだ消えておらず、炎の渦は纏ったままであるが、心做しかその炎は先程と比べて小さく、弱くなっているように見える。



「これで終わりだぁぁ! だったか? ある意味、有言実行じゃないか」



 小馬鹿にするように、メルクの先の発言を真似して、更に煽り立てる。



 すると、ようやく現実を、自分が敗北したという事実を理解したのか、怒りに真っ赤に仕上げた顔を上げ、俺を睨みつけてきた。



「……てめぇっ! どんな卑怯な手使いやがった!」



 はい出た。 まぁ予想はしてたけど。


 とは言え、さすがに、ここまであからさまな言いがかりに、思わず呆れて溜め息が出てしまった。



 そんな俺を他所にメルクの完全無根拠な言いがかりは更にエスカレートしていく。



「なにか仕組んでたんだろうが! じゃないとこの俺が、てめぇみたいなクズに負けるわけがねぇんだよ!」



 ───あー、これはもう手遅れだな。



 メルクの痛すぎる言い分を聞いて、俺は内心そう呟やかずには居られなかった。



 これは茶番だ。

 もとより、この決闘自体が茶番以外の何ものでもなかったが。



 だが我慢だ。


 エルフィアやラフィーに心配と迷惑をかけまでも、この茶番を利用すると決めたのは、他でもない自分自身なのだから。



 自分にそう言い聞かせて、メルクの俺に対する言いがかりついて言及する。



「そこまで言うんなら、どこが卑怯だったか言ってみろよ」


「っ、それは……」


 当然、事実無根な言いがかりにただひとつの証拠があるはずもなく、メルクは何も言い返せず口を噤んでいた。



 しかし、そうなってまでも懲りずに、メルクは無謀に開き直って、苦し紛れに訳の分からない怒号を散らす。



「……う、うるせぇ! バレねぇようにしてるから姑息だっつってんだよ!」



 こいつまじかよ……。



 そのふてぶてしい態度と発言には、正直ゾッとするものさえある。


 胸糞悪さとか、呆れとか、もうそんなもの全部飛び越えて、はっきり言って気持ち悪い。



「なぁ、みんなもそう思うよなぁっ!? こんな奴が、小細工もなしに俺に勝てるわけねぇって!」



 俺がドン引きして言葉を無くしている間にも、メルクはスタンド席に座るクラスメイト達に向かってそう呼びかけていた。



 すると、先程まで虚をつかれたよう静まり返っていたスタンド席の中から、



「───そ、そうだ!」



 そんな一声を発端に、メルクに賛同する声や、俺への非難の声が次々と上がっていく。



「メルクの言う通りよ!」


「そうだ! 絶対ズルしたに違いない!」


「卑怯者がっ!」


「メルクがこんな奴に負けるはずがねぇよ!」


「ズルしてまで勝ち誇って、嬉しいか! このゲス!」


「はやく白状しなさいよ!」



 などなど、そんな声声で、スタンド席は一転して騒然となる。



 だがしかし、恐らくここにいる誰しもがもう既に悟っているはずだ。


 メルクは俺に負けたのだと。



 最初の一撃は、明らかにメルクが勝利したように思わせてもおかしくない威力の攻撃だった。


 そこに、小細工の類で止められる要素はひとつもない。


 それは、実際にその剣を受けた俺が1番分かっている。


 そしてそんなことくらい、誰だって見れば分かっただろう。


 メルクが自分たちよりも強いと知っているなら尚更だ。


 それでも俺への悪評と、自らのプライドがそれを許さない。


 恐れているのだ。

 信じたくないのだ。


 無職である俺が、勇者であるメルクに勝ってしまうことを。


 つまり、勇者以下である自分たちが、無職の俺よりも弱いということになってしまうことを。



 ───本当に、いつまで経っても、救い難い連中だ。



 俺は騒がしくなったスタンド席を見渡す。



 その中には、俺のために怒り、歯がゆそうな表情をしている、エルフィアとラフィーの姿があった。



 今度2人には、日頃の感謝を込めて何かプレゼントをしよう。 そう思った。



 その時、



「はははっ! 油断したな! バァカがぁ!」



 メルクはニタリと下賎な笑みを浮かべてそう叫んだ。



 すると、奴の全身を渦巻いていた炎が、木剣の周りに一斉に集合し、横に長い大太刀の斬撃を型どっていく。


 その刹那、



炎斬(フレア・エッジ)!」



 その詠唱(かけごえ)と同時に、メルクは刃を振るうように、剣を振りかざすと、俺の方へ向かって物凄い速度と熱量で大きな炎の刃が迫ってきたのだ。



最後までご拝読ありがとうございます。

平日ということもあって、なかなか定期更新に設定していた水曜日に更新できていませんが、今週はもしかしたら更新できるかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] メルクがチャンスだと思ったのか仕掛けてきましたね。汚いですが判定は下されていないので違反ではないですね。まぁ、ユウさんに「卑怯なことをしたな」と言っていたやつがやるのには勇者の風上にも置けな…
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