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クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第10章 〜望まぬ再会〜
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第125話 決闘④

今回はちょっと短いです。

 




「あれは、まさか……」



 メルクの周りを炎の輪のようなものが幾本も渦巻いている。



 奴の持っている木剣にもその炎は燃え移り同じような状態になっていた。





 見たことの無いスキル、もしくは魔法。



 だが、メルクが『赤の勇者』だと分かっていれば、あれが何かは見当が着く。



 熱がこちらまで届いてきて、肌をピリピリとさせる炎の気配。



 魔法かとも思ったが、明らかに別物と分かるそれ。



炎精(サラマンダー)気配(オーラ)


 脳裏にぱっとそのスキル名が浮かび上がった。



 勇者という天職には、必ずそれぞれを特徴付ける『色』が定められている。



 メルクは確か『赤』───赤の勇者。



 そして、勇者はその『色』に応じて、決まってひとつ、天職を受けた時から固有スキルを所持している。



 その固有スキルには、基本的に身体能力の大幅な向上の効果に加えて『色』特有の特別な能力が備わっている。



 今メルクが纏っている炎の渦がそれだろう。



「意外だな。 まさか最初から使ってくるとは思ってなかった」



 ボソリとそう呟いて、改めて気を引き締め、メルクの次の動きを窺う。



 恐らく『炎精の気配』を使った後の残ったSPで『強化、向上、補正』系のスキルを使えるだけ使ってるのだろう。



「まじでなんちゅー贅沢な使い方だ……」



 メルクがスキルをふんだんに使ってくることを悟った俺は、ため息混じりにそう零した。



 まぁそんなこと、最初から分かっていたことだ。



 俺は『無職』───そして奴は『勇者』だ。



 俺が大きなハンデを抱えてることなんて、百も承知。



 だが、その分、アドバンテージがあることを俺はちゃんと知っている───教えてもらったんだ。



 ―――【身体能力向上】【防御力向上】―――


 俺も2つのスキルを発動させた。



 そして変わらずメルクを観察していると、その表情が変わる。


 まるで、もう既に勝ちを確信したような、卑しいニタリ顔へ。



 それは多分、準備が整った合図だ。



 来るぞ、構えろ!


 自分にそう言い聞かせる。



 ───その刹那。



「俺の、勝ちだぁぁぁあ!」



 高笑いを上げ、そう叫びながら、メルクは猛烈な勢いで突進してきた。



 肌を焼き焦がすようなジリジリとした熱が、まるで風の如く迫ってくる。



 スキルの効果が大きかっのか、メルクは思っていた以上の速さで俺との距離を詰めると、強く地を蹴り、大きく飛び上がった。



 そして、その勢いのままに、炎を纏った剣を、俺の頭上目掛けて振り下ろしてくる。



 別にここで避けても良い。



 確かにかなりの速度と言えるが、このくらいは余裕で反応できる。



 このまま、俺が攻撃を避けようとら横へ飛べば、メルクが自信満々に振り下ろした剣は、ただただ惨めに空を切ることになるだろう。



 ───だが俺は、この場から動くつもりは毛頭ない。



それは決して、メルクを侮っているからではない。



そんなことをしてしまえば、この決闘が俺にとって、何の意味も持たなくなってしまうからだ。



 俺はメルク(こいつ)に勝つためにこの決闘を受けたのではない。


───元クラスメイト(こいつら)を黙らせるために、今、この場に立っているんだ。



「さぁ、こい!」



 メルクの剣先を見つめ、足腰にぐっと力を入れると、最も剣撃の威力を削ぎ、吸収できる体制で剣を構える。



 その瞬間、メルクが真っ逆さまに振り下ろした渾身の一撃は俺の頭上へ到達し、凄まじい轟音がスタジアム内に響き渡った。



 それと同時に、大きく舞い上がった土煙と、炎の渦が俺の全身を覆い隠す。



 その時、スタンドが、メルクへの歓声と俺を嘲笑する声声で再びざわめいた。



 恐らく、この決闘を観戦していた元クラスメイトの連中は、もう既に勝敗は決したものだと思っているのだろう。


 もちろんこっちが負けという結果で。



 ────それでいい。



 鳴り響いた轟音は、メルクの剣が俺の頭蓋へクリーンヒットした音ではない。



 俺はメルクの剣撃を真正面から受け止め、受け流すと、そのままの勢いで、奴の大きく開けた脇腹へ、横薙ぎを思い切り叩き込んでやると、



「ぐぁっ!」



 メルクはインパクトとの瞬間、そう呻いて、面白いように吹き飛び、みっともなく地面を転げ回っていった。



 先程まで騒々しかった、元クラスメイト連中は、土煙のなかから飛び出してきたメルクを見て、驚愕したのか、すっかりと黙り込んでしまっていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 良いですねぇ!「勝つ」ためではなく「黙らせる」ための一撃!!これには回りの元クラスメイトの連中も驚きですわ。これが誰よりも多く努力し、いろんな人の想いを引き継いだ力ですね。自らの天職に甘え、…
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