第113話 望まぬ再会⑦
本日は、といっても昨日になってしまいましたが、予定通りの時間に更新できず申し訳ありませんでした!
今後、このようなことがある時は、必ず更新時間までに活動報告で報告するように心がけたいと思います。
実に様々な言葉がエルフィアとラフィーの2人に投げかけられた。
あいつだの、あんなやつだの、まあ本当に好き放題言ってくれたものだ。
そして終いには「いやいや付き合わされてるんじゃないか」などと言い出すやつまでいる始末だ。
それを聞いて、俺はとうとう堪えが効かなくなりそうになった。
俺が馬鹿にされるのはまだ我慢出来る。
元クラスメイトの連中からは生前から嫌という程虐げられてきた。
腹が立たないといえば嘘になるが、今更やつらになんと思われようと、どんなに罵倒されようと、正直もうどうでもいいと割り切れる。
だが、ラフィーとエルフィア、仲間との関係を否定されるのだけは、どうしても許せない。
一体、俺達の何を知っているというのか。
何も知らないやつが、知ったような口を叩き、勝手な妄言で俺達の関係を踏みにじろうとしてくる。
そんな事、許せるはずがないだろう。
しかし、込上がってくる激情をなんとか必死に堪えている俺に追い打ちをかけるような言葉が耳に入ってくる。
「それで、2人はどうなんだよ?」
「本当は迷惑してるんでしょ?」
「本当のこと言っていいんだよ? 私らは2人の味方だからね」
─────ブチンっ……。
自分の中で嫌な音がした。
こういう状況を、堪忍袋の緒が切れた、というのかはよく分からない。
ただ分かるのは、明らかに正常な音ではなかったということだけだ。
グツグツと湧き上がる激情にとうとう堪えは効かなくなり、突き動かされるままに手足は動いた。
怒り任せに思いっきり扉を開き、すぐにでも、溜まった憤怒を、憎しみを、黒い感情を、全部奴らにぶつけてやる。
そんな考えに頭の中を支配されながら、教室の引き戸に手をかけようとした、その時。
「───言いたいことはそれだけですか……」
聞こえてきたラフィーの声は、静かな怒気を纏い、凍りつきそうなほど冷たいものだった。
先程までがやがやと騒がしかった教室内は、彼女の一声で一気に静まり返る。
そしてその声は、暴走しかけていた俺の頭をも冷やし、引き戸に伸ばした手を引っ込めさせた。
「いきましょう、ラフィー。 この人たちと話すことなんて、何もないわ」
誰かが椅子から立ち上がる音が沈黙に落ちた教室内の空気を揺らしたと同時、尖った声音でエルフィアが言った。
エルフィアがそう声をかけると、ラフィーも椅子から立ち上がる。
しかし、これで終わりかと思ったその時、メルクが「……なんで」と、不満そうな声を漏らした。
「なんで、あんなクズ男の肩を持つんだ!」
エルフィアとラフィーが足を止める。
「2人は騙されてる! あいつがどんなに最低なヤツなのかが分かれば、絶対に────」
────バチィィンッ!
メルクがそこまで言いかけたところで、まるで平ゴムが思い切り千切れた時のような、鈍く痛快な叩き音が響いた。
がっつりと、平手打ちをくらい「ふがっ!」と呻きながら、メルクが倒れ込んだ。
「これ以上、ユウのことを愚弄するなら───許さない……」
敵意のこもった、エルフィアの冷たい声がメルクへと降り注がれる。
「あたし達は、自分の意思でマスターを慕っているんです。 それを身勝手に否定するあなた達が味方? あたし達を助ける? 笑わせないでください。 まったくもって、余計なお世話です!」
ラフィーがそう言い残すと、踵を返し2人は教室から出ていった。
◇◆◇◆◇◆
「───気に入らねぇ」
エルフィアとラファエルが教室から出ていくのを眺めて、アーサ・ライルボードはそう吐いた。
ホームルームの時、同じSクラスでユウ・クラウスと名乗る男を見た時、初め彼は目を疑った。
身長も伸びている、声変わりもしている、雰囲気も少し変わっている。
しかしその男は、どこからどう見ても、彼と同じ村で生まれた、ユウ・アッシュリッドとあまりにもそっくりだったのだ。
彼の知る限り、ユウ・アッシュリッドは、かなりの確率で野垂れ死んでいるはずだった。
『無職』という無能の天職を与えられ、何も出来ないたった11歳の子供が、生まれ故郷であるカーロ村から追放されて、1人で生きていけるはずがない。
だが、ホームルームの時の反応からしても、ユウ・クラウスとユウ・アッシュリッドが同一人物であることは間違いなかった。
一体どうやって生き延びた?
村周辺の森には獰猛な獣も生息していたはずだ。
アッシュリッドからクラウスへと改姓されていることが関係しているのだろうか。
しかし何にしろ、彼にとって、そんなことは微々たる問題に過ぎない。
彼が最も気に食わないとするのは、自分が1度貶め、どん底へと叩き落としたはずの相手が生きて、自分の前に現れたということだ。
あまつさえ、いまや世界にたったの10人しかいない勇者という立場である彼ですら持っていない『天聖武具』までをも持っている。
かつては抱いていたユウに対する恨みなど、彼にとっては正直もうどうでも良かった。
それらの事実だけで、彼の自尊心とプライドを傷つけ、駆り立てるには充分だったのだから。
(どうやってこの学園に入ったのかは知らねぇが、今度こそ、完全に叩き落としてやるよ。
────元親友くん)
アーサ・ライルボードは、静かにそう決心した。
更新時間を遅れた理由につきましては、活動報告にて書かせていただいたので、気になった方は見てみてください。




