第107話 望まぬ再会①
更新が遅れて本当に申し訳ありません。
本当は今週末は3話ほど更新したかったのですが、現在絶賛風邪に襲われていまして、その上に一昨日インフルエンザの予防接種をしたせいで風邪が悪化してしまい、ベッドと離れることが出来ませんでした。
来週には風邪も治ると思いますので、来週末こそは少なくとも2話は更新しようと思います。
ひとまず、今話もお楽しみくだされば幸いです。
※2020年1月30追記
現在試験勉強中のため更新停止中。
時間に少し余裕ができたので今週中に1話更新予定。
3月頭から本格的に更新再開します。
ケイルが降壇し、予めに用意されていた所定の席に戻ると、クレアは「では」と言葉を切り、続けて式の進行を図った。
「次に、ミシェド学園高等部、在校生代表、学生会会長より挨拶があります。 当人は登壇してください」
クレアがそう促すと「はい」と応える声が聞こえてきた。
声の元、アリーナ前方を窺うと、1人の男子生徒が壇上に上がっている。
「えー、新入生の皆さん。 僭越ながら、在校生代表として挨拶させてもらう、高等部3年のグレイ・アドラーだ。 まずは入学おめでとう。 君達を後輩として迎え入れられることをとても喜ばしく思うよ」
金髪長身のイケメン好青年。
きっと誰もが、彼の容姿な言動をみて口を揃ええそう言うだろう。
実際に、新入生の多くの女子生徒達が、彼の爽やかな笑みと声に、うっとりと見惚れているように見える。
ヒソヒソと彼の容姿を語り合う黄色い声声も、ちらほらと聞こえてくる。
しかしその一方で、俺の隣に並んでいるエルフィアとラフィーは、顔を少し顰めていた。
「なんというか、嫌な感じがする人ですね」
「不気味」
「2人とも辛辣だな!? 俺もその気持ち分かるけど」
そうツッコミはしたが、正直俺も2人と全くの同意見だった。
初対面相手にどうこう言うのはどうかとも思ったが、上から塗ったくられたあの作り笑いには、ゾッとするような、一種の不気味ささえ感じる。
甘いマスクの裏側には、果たして何が潜んでいるのやら。
まあ、多分関わることなんてないだろうが、何故か警戒しておいた方がいい気がする。
そんなことを考えているうちに、予めに用意していたであろう挨拶の言葉を5分ほどで語り終えると、クレアの指示で降壇していった。
「次に、新入生代表は登壇し、挨拶を行ってください」
クレアがそう言うと「はい」と、俺たちの並ぶ列の先頭あたりから、快活な返事が聞こえてきた。
どうやら、新入生代表に選出されたのは、俺達と同じSクラスのようだ。
しかし何故だろうか……。
そいつの声を聞いた瞬間、背筋が冷たくなるような感覚を覚え、鳥肌がたった。
無意識にも指先がぴくりと震える。
そんな謎の事態に首を捻る間もなく、そいつの姿は俺の視界の端に、忌々しくも入り込んできた。
「───あい、つは……」
まるで何が起きたのか分からず、目をぎょっと見張った。
しかし、俺の視界に入ったそいつが何者なのか、そんなことは一目で分かった。
見覚えがあるとか、そういう次元の話ではない。
人違いかもしれない、なんて考えだって、微塵も頭には浮かんでこない。
もう二度と会わないと思っていた。
もう二度と会いたくないと思っていた。
考えるだけでも忌々しい。
俺を地獄のどん底に、ケラケラと嘲笑を以て突き落とした、
俺が最も憎んで止まない相手。
なんでだ、なんで今ここにお前がいるんだよ───?
「────晴人」
憎悪に満ちた息と共に、その男の名前が俺の口から溢れ出た。
身長も高くなっている。
声だって低くなっている。
あの時よりも随分と大人びている。
それでもあいつは正真正銘───河村 晴人だった。
腹の中身が煮えたように、胸の奥がムカムカして、思わず叫び挙げそうになる。
久しく、こんな黒い感情を抱いたことは無かった。
無際限に溢れ出すその感情に、奥歯を噛み締め、拳を握りしめる。
頭に血が昇ったせいか、視界が真っ赤に染まったような錯覚さえ覚える。
忘れかけていた。
いいや、忘れた振りをしていた。
俺を裏切り、全てを奪った河村 晴人。
そんな俺を嘲笑うクソッタレな元クラスメイト。
俺のことを無実の罪で村から追放した村人ども。
ミルザやサイオス優しさで覆い隠してくれていた、ヤツらへの憎悪がいま、腹の底で爆発し、俺の中に蘇った。
そうして湧き出た憤怒の情に肩を震わせていた時、誰かが俺の手を強く握りしめる感覚があった。
その、小さく柔らかな手の温もりに触れた瞬間、手や肩に入っていた力が抜け、頭に昇っていた血もすっと降りていく。
視界と頭の中は鮮明になり、荒くなりかけていた呼吸も落ち着きを取り戻す。
右隣に視線を移すと、そこには、今まで見たこともないような表情をする、青髪の少女の横顔があった。
『マスター、その気持ちはすごく分かりますが、一旦落ち着きましょう。 あたしも今、頑張って落ち着きます……』
そう、小さく震えた声を念話で伝えてきたラフィーの瞳と表情には、紛れもなく、激しい怒りが映っていた。
発言から察するに、どうやらラフィーも気づいていたらしい。
こんなにも怖い顔しているラフィーは、普段の優しく愛らしい姿はからは想像もつかない。
しかし、俺はそれがとてもうれしかった。
普段は滅多に怒らないラフィーが、俺のことで今、こんなにも怒ってくれているのだから。
俺は握ってくれていた手をそっと離し、ラフィーの頭の上に持っていった。
『ああ。 ありがとう、ラフィー』
すると、ラフィーも落ち着きを取り戻せたようで、いつものように可愛らしく笑ってみせた。
短かったかもしれなませんが、最後までご拝読ありがとうございました。
いやー、やっとここまで来たって感じですね。
個人的にここからが本編みたいな感覚です。
次話も元クラスメイトとの再会の話になってきますので、是非お楽しみに。
 




