表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス転生譚 〜最弱無職の成り上がり〜  作者: 美夜尾maru
第9章 ~精霊契約と入学試験~
105/187

第97話 入学試験⑨

更新が遅れて申し訳ありません!


今回も楽しんで頂ければ、幸いです。

 



「不束ものではあるが、これからよろしくな。 ユウ、エルフィア、ラフィー!」



「いきなり呼び捨てか?」



 俺が悪戯っぽく笑って、そう返してやると、レイシアは照れくさそうに顔を赤らめて。



「い、いいだろう別に。 と、友達なんだから!」



 少し慌てた様子が、可愛らしくて、本当にいじったかいがあった。

 これは、レミエルがレイシアを気に入っている気持ちも、なんとなく分かってしまうというものだ。



「あはは、嘘だよ。 好きなように呼んでくれ」



 冗談めかしく笑い、そう言ってやると、彼女は「な!」と、狼狽した様子で口を開け、短い息を吐いた。

 その後、すぐに肩を竦めて、小さく溜息をつくと、苦笑いを浮かべる。



「はぁ……。 君って、良いやつなのか、悪いやつなのか、どっちなんだよ」



「んー、良いやつにも悪いやつにも、なってるつもりはないな」



 俺の応えが予想外だったのか、レイシアは一瞬、首を傾げたが、それ以上追求するのを諦めて、嘆息する。



「……まあいいか。 そ、それより、せっかく友人同士になったんだから、ボクのことも、な、名前で呼んでくれ、ないか?」



 レイシアはうっすらと頬を染めながら、照れくさそうに、そう言ってきた。


 まあ、友達がいなかった、という箇所においては、俺達はよく似たようなものだ。


 ついさっき知り合った相手に、名前で呼んで欲しい、なんて言うのにはかなり勇気がいるというレイシアの気持ちもよく分かる。



「ああ、分かったよ。 レイシアさん」



 俺が笑顔でそう答えてやると、レイシアは、いじらしく口を尖らせる。



「さん、は、付けないでくれよ」



「いや、でも年上だし……」



「それは、いいから! さん、なんて、何だか他人行儀じゃないか。 呼び捨てで構わない、というか、そうして欲しい」



 確かに、『さん』付けは少しばかり他人行儀な気はするが、相手は年上だ。


 ただ、俺がどうしてもそう呼びたいという訳ではあるまいし、レイシア本人が望まないことをしてやるのもどうかと思う。


 そう思案して、俺は短く嘆息すると、


「……レイシア?」



 これでいいか、と訊ねかけるように、俺は呼び捨てでその名前を呼んだ。


 すると、レイシアは頬を薄紅色に染めて、唇を綻ばせた。



「……ふふふ、しかしなんだか少し、照れくさいものだね。 男の子の友人に名前で呼ばれるというのは」



 レイシアは目を細め、満悦そうな声音でそう呟く。


 しかし、彼女のそんな様子を見ていると、なんだかこっちまで、照れくさくなってきて、思わず目を逸らした。



 他人なんて誰も信じない、と、頑なに思っていた時期もあったし、今だって若干、抵抗はある。


 しかし、今は、友人ができたということが、とても嬉しいと感じる。


 少しずつ変われている、前に進めているという実感がある。


 まあ、レイシアがとびきり美人だったからという理由も、なきにしもあらずとも言えなくもない気がするが。



 俺は頬を掻きながら「まあ、満足してくれたようで何よりだよ」と、一言返した。



 そのあとは、色々と追求しなければならない事案もあったため、1時間ほど立ち話をした。


 結局、最初の質問にあった、俺が一次選考試験で落とされた理由については、ステータスプレートの偽装を疑われたためだそうだ。


 毎年、何人かは、ステータスプレートの偽装で入学しようとする愚か者がいるそうだから、俺もそれを疑われたのだろう。


 確かに、天職『無職』で、あのステータスなのだから、偽装したと思われてもなにも不思議ではないが、だとしても悔しいものだ。


 他にも、明日のエルフィアの二次選考試験と、俺の特別推薦枠試験の日程について話し合い、辺りがかなり暗くなってきたところで解散となった。





「ふぅ……」



 話が終わり、解散となった後、ユウ達の背中が見えなくなった所で、レイシアは胸のあたりを擦りながら、深い溜息を吐いた。


 そして、がくっと膝を折り、その場にしゃがみこむと「緊張したぁ」と零す。



「よう、頑張ったね」



 レミエルは静かに近寄って、そう囁きながら、レイシアの頭にそっと手をおいた。



「なあ、レミエル。 ボク、不愉快なやつだって思われてないかな……」



 レイシアが心配そうに呟くと、レミエルは「大丈夫やて」と、優しい声音で応える。



「そんな風に考える人らやないて思うたから、レイシアたんもあそこまで頑張れたんやろ?」



「そうだね。 本当に直感だったよ。 彼らとならきっと、って」



 一次選考試験の結果発表を見に来ていたユウ達を一目見ただけで、どうしても目が離せなくなった。


 気づいた時には、彼らのあとを付けてしまっていたのだ。


 さすがに、それを知られた時は、苦い顔をされてしまっていたが。


 それでもこうして、彼らと友人になれたということが、今は心の底から嬉しい。



「彼らなら、きっと、大丈夫だよね……」



 レイシアは、噛み締めるように、そう小さく呟いた。

 もう二度と、あの日のような思いはしたくないと、強く思いながら。




「よし、そろそろ、戻ろうか。 明日は早いし」



 しばしの静寂のあと、レイシアは、ぱっと立ち上がると、レミエルの方に振り向き、そう言って、学園の寮に足を向けた。


 するとレミエルは「せやな」と頷いて、歩き出すレイシアの隣に並び、



「なあ、レイシアたん。 戻ったら約束通り、この服着てなぁ?」



 先程までの、穏やかな態度が嘘のように、いつもの陽気なテンションに戻ると、そう言って、手に持った紙袋を、自分の顔の前に持ってくる。



「はぁ……仕方ないなぁ。 ただし、あんまり夜遅くまでは付き合わないからな」



 レイシアは溜息をつきつつも、微笑して、そう返した。



 そして、レイシアとレミエルは談笑しながら、街灯の光がうっすらと道を照らす暗闇の中、学園の寮に戻っていった。






最後までご拝読ありがとうございました。

予定ではあと2話分で第9章が完結すると思います。

明日20時、次話更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ