第0話 序章
初投稿です!
ただひたすら書きたいことを書いたので、つたない文章ですが楽しんでいって貰えれば幸いです。
最後までごゆるりと
その年、その村は多様な意味で豊作だったそうだ。
「村長! 今年は麦の育ちが尋常ではありません。まさに豊作、神の恩恵です!」
頬に泥を付けたまま村長と呼ばれる老人に青年は慌てて駆け寄った。
「どうした? そんなに慌てなすって。 麦が多く収穫できたなら、それはとてもめでたい事ですね。ならば宴会の準備でもこしらえますかな」
ゆったりとした声音で言うその老父が、皺が多く座る頬を軽く緩めそろそろと自宅へ向かおうとした時。
「それだけではないのです!」
興奮はまるでさめっきっておらず青年は続ける。
村長もそれに耳を傾け足を止めた。
「なんとな?」
まだあるのかと言いたげな老人は青年の方に振り向き直す。
「なんと、今年に入って子供が三十人も生まれました。 これはこの村では異例すぎます。 しかしなんと喜ばしいことでしょうか。 うちにも一人男の子が生まれたんです!」
そんな発言に目を剥く村長は「───あぁ」と息を漏らして、天を仰ぎ、神を仰ぎ奉り、その感謝に心を踊らせて。
「ありがたや。 この村もこれで安泰じゃ」
両拳を固く握りしめ感動が絶頂に至ると、その皺がこしらえられた頬を何滴も何滴も涙が滴り落ちていくのであった。
この村で起きた出来事を、後に人々は『宝子の奇跡』そして、英雄譚の序章と謳った。
短めでしたが最後まで読んで下さり、有難うございます。
次からは話も展開していくので、足を運んでやってください。
それではまた