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オークション幕間③ ~妖精への頼み事~




私がそう尋ねると、妖精は一瞬目をパチクリするも「コクッ」と頷いた。





「おお!本当に!?」





コクッ・・・





再度彼女は頷く。


それを見て私は「うしっ!」っと心の中でガッツポーズをした。


これで筆談に持ち込むことが出来る。





「じゃあ、ちょっとそこにいてね!」



「今、紙とエンピツひっぱり出してくるから!」





私はエノクの文房具が置いてある場所まで急いで行き、


計算やメモで使っているエンピツやノートの切れ端を引っ張り出した。


ノートの切れ端をくるくると丸め、エンピツを槍のように担ぎながらまた妖精の所まで戻ってくる。





「お待たせ、はい!」



「・・・・・」





妖精の子にエンピツを渡す。


そして、ノートの切れ端をレジャーシートを敷くような感じで妖精の前に広げた。


彼女はこちらがやりたい事を理解しているのか、素直にエンピツを受け取る。





「これで、あなたの聞きたいことを書いてみて?」





コクッ





妖精は私の言葉に頷いた。


そして、自分の身の丈と同じくらいのエンピツを肩に担ぎながら文字を書き始めた。





カキ・・・カキ・・・・





妖精はたどたどしくエンピツを紙の上に走らす。


その字は所々カクついていて、ミミズが紙の上を這っているような感じだ。


・・・でも、これだったらなんとか読めそうね。


えーっとなになに・・・


妖精がエンピツを走らせている横で私は文字を読み始めた。





”あ・な・た・は・ほ・ん・と・う・に・に・ん・げ・ん・?――――”





「・・・・『あなたは本当に人間』・・・て書いている?」





私が妖精に尋ねると、彼女は文字を書き続けながら「コクッ」っと頷いた。


さらに彼女は続ける。





”に・ん・げ・ん・は・も・っ・と・お・お・き・い・よ・?”





人間はもっと大きいよ?


・・・





「・・・ああ!なるほど!」





そこで私はポンッ!と手を打った。


さっきの妖精のジェスチャーが何を意味していたのかようやく理解した。


あの大きく手を広げるような挙動は人間の大きさを表していたんだ・・・


考えてみれば、あの流れからしたら私の正体を確認したかったに決まっているわよね。


妖精のダイナミックなジェスチャーに囚われて、その考えに至ることが出来なかった。


納得できた私は妖精に返事をする。





「私は本当に人間よ。ちょっと”特殊”な状態ではあるんだけど間違いなく人間」



「あなた達と同じくらいの大きさだけど、妖精でもないわ」



「ほら、私には羽生えてないでしょ?」



「・・・・」





そう言いながら妖精の前でくるりと回った。


妖精はその姿を見て、うーん・・・という感じで首を傾げていた。


彼女はまだ納得できていない様だ。


・・・意外に疑り深いわね、しょうがない。


弱みを見せるからあまりバッドステータスの事は言いたくないんだけど、


信頼してもらうためにはやむを得ないか・・・





「私の掛かったバッドステータスが”縮小化”なのよ」



「普通の人間の1/10の大きさになっちゃっているの」



「・・・・!?」





その言葉を聞いて、彼女は私を指差しながら驚きの表情を浮かべる。


そして、エンピツを取りまた紙の上に文字を書き始めた。





”ばっ・どす・てー・た・す!?”



”あなた・はずっ・と・その・すが・た・の・まま・な・の?”





バッドステータス!?


あなたはずっとその姿のままなの?


そう書いているっぽい。





「・・・そうよ。ずっとこの姿のまま」



「ちょっと衝撃的なんだけどね・・・」



「・・・・・」





若干声を落としながらそう返事する。


それを聞き妖精の子はまたエンピツを走らせた。





カキ・・・カキ・・・カキ・・・・





”よ・くい・き・て・いら・れた・ね”





「よく生きていられたね・・・か。それは自分でもそう思うわね」



「本当、あれは大冒険だったわよ・・・死ぬかと思ったし」



「・・・・・」





カキ・・・カキ・・・カキ・・・・





”なに・が・あっ・たの?”





・・・おっ!


こっちに結構興味を持ったっぽい。


少しは信用してもらえたということかな?


これだったら、逃げられずに済みそうね。





「・・・ねえ!話す前に私もあなたの事を教えてよ」



「・・・・!?」





急に質問を返されて、妖精の子はピクッとした。


私はそのまま話を続ける。





「いい加減、お互い”あなた”だとよそよそしいでしょ?名前教えてよ」



「・・・」



「私の名前はレイナ。レ、イ、ナ」



「あなたは?」



「・・・・」





彼女は突然の問いかけに目をパチクリさせていたが、


やがて「コクッ」と頷くと再びエンピツを走らせた。





”り・りー”





「リ・リー・・・」



「・・・あなたの名前はリリーというのね?」





コクッ





妖精が私の問いかけに頷く。





「よろしくね!リリー!」





私はそう言って、彼女の前に再度手を差し出した。





「・・・・・」





リリーはしばらく私の差し出した手を呆然と見ていたが、やがておずおずと手を出してきた。





ギュッ!





私はそれを自分からしっかりと掴みにいく。





「よろしくっ!」





ブンブン!





握った手を勢いよく振る。


それに合わせリリーの顔は前と後ろに流されるまま揺れた。


顔をしかめて迷惑そうな顔をする彼女。


だけど、これでいい。


これでお互いの壁を一つ壊せた気がする。


ふぅ・・・ようやくこれで本題に入れるわね。





「リリー、実はね、あなたに教えて欲しいことがあるの・・・」



「・・・?」





晴れてリリーの”友達”になった私はさっそくお願いを試みる。


「ん・・何?」という感じで彼女は首をかしげた。





「リリーの能力を私に見せて欲しいの!」



「お願い!!」





パンッ!と両の手のひらを合わせて彼女に懇願した。


・・・


エノクの話によると、妖精は”とびきり運を向上させる能力”を持っているらしい。


妖精はそれ自体がとても重宝されている存在だ。


その愛くるしい姿から愛玩動物として”その筋のコレクター”に常に狙われているという。


しかし、彼女たちを実際に捕えたという話はほとんど聞かない。


妖精はその能力を使って、目前に迫っている危機を事前に回避する術に異常に長けている。


それこそ”未来予知”でもしているんじゃないかっていうくらい彼女たちは勘が鋭く、


悪意を持って彼女たちを捕まえる、もしくは危害を加えようとすると、その前にさっと姿を消してしまうらしい。


もし、その能力をセカンダリースキルとして覚えることが出来ればこれほどサバイバルで頼もしい能力はないだろう。


私にとっては是が非でも覚えたい能力だった。





「・・・・・」





リリーは懇願する私の姿をしばし傍観する。


そして、何を思ったのか再びエンピツを持って文字を書き始めた。





おっ・・・♪


文字で教えてくれるということかな?


どれどれ・・・・


私は期待に胸踊らせながら、彼女の書き出した文字を読んだ。





”えぇー いや・だー・め・ん・ど・くさ・い”





・・・・・





おい・・・!マイフレンドよ!


親友の頼み聞けんのか、お主は!





「・・・そ、そんなこと言わずにさ」



「私達”友達”でしょ?ちょっとぐらい見せてくれてもいいじゃない、・・・ね?」



「・・・・・」





私は諦めずにリリーに食い下がるも、彼女はそれを見るなり私の目の前に急に人差し指を立ててきた。


突然の行動に今度は私が驚かされる。





「え・・・なに?」





呆然とする私の前で、チッチッチと指を左右に振らした後、彼女は再び文字を書き始める。





”た・だ・じゃ・いや・だ”





・・・さらに唖然とする私。


書き終わった彼女は私を尻目にそっぽを向き、フフンと笑った。


どうも私が下手に出ていることに優越感を感じているようだ。


ニヤニヤと笑みを浮かべ、腰を低くしながら頼み込んでいる私を見下ろしてきやがった。





・・・こ、この子わぁ・・・!


妖精ってこんな高飛車な性格なの!?


ちょっと・・・いや・・・かなりイメージと違うんですけど!!?




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