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募集広告の活用法




募集広告の一覧を眺めながら私はポツリとそう呟く。


ぱっと目に入ってきたものだけを見ても募集のレベルの条件が高いのだ!


レベルは最低でも25以上はないと条件を満たすことも出来なさそうな募集ばかりだった!


中にはレベルを条件としていない募集もあるにはあるが、


そういうものは漏れなく初心者パーティの募集だったり、非常に特殊なレアスキルの所持者を指定した募集だったりと、


条件が合わないものや、合ったとしても二の足を踏みそうな内容の募集ばかりだった。





「うーん・・・・ないなぁ」





エノクの唸る声が聞こえてくる。


想像以上に厳しい募集の状況に彼も眉をひそめながら広告を眺めていた。


エノクもレベルがネックだと感じているのだろう・・・


それからもしばらく私達は広告を眺めていくが条件が良さそうな募集が中々見つからなかった。





うーん・・・「レベル」がやっぱりネックなのよね~・・・


レベル以外の条件としてはエノクにも合致しそうなものはいくつかありそうなんだけど・・・





・・・まあ、条件を選り好みしなければエノクが応募できる条件も一応あるにはある・・・


結局それは初心者パーティの募集のものなんだけどね・・・


その場の勢いとノリだけで募集を出した様なとんでもない広告がたくさん出ている。


例えば、募集広告 "No.59880"なんかが良い例だろう。





『回復アイテム作成出来る奴、回復魔法使用できる奴、それと熱い情熱を持っている奴来い!』





↑これなんかいかにも”地雷”って感じの募集よね・・・


募集主が考えなしでノリで出したことが一目瞭然で分かる。


こんな初心者丸出しのパーティに誰が応募するっていうのよ・・・


俺達の夢はでかい?未知の領域の全てを制覇した後、『9つの世界』を巡ってやる?


まだ、新米で実績もないっていうのに、ただ熱い夢とハートだけは持っているから俺のところ来いだって・・・?





「はぁ・・・」





その募集広告を見て思わず私はため息を付きながら頭を振ってしまう。


どんだけ頭お花畑なのよ・・・


こんなパーティに参加したら最期だ。


私達は文字通り”90:90:90”の生存率の法則の洗礼を受けることになるのは目に見えている。


くわばら・・・くらばら・・・





「よし・・・!じゃあ、これかな・・・!」





そして、エノクが何かを決意したかのように意気込みながら”No.59880”の張り紙を取ろうとする。


私はそれを見た瞬間、魔力通信機に無心で触ると、エノクに魔力波を送った。





(おい!なんでやねん!!?)





私は思わずエノクにノリでツッコミを入れてしまった!


まさかこんなに早くこの魔力通信機が役に立つことになると思わなかった・・・


買っておいて良かったわよ・・・


そして、彼は唖然とした感じで私の言葉に反応する。





(えっ・・・レイナどうしたの?)



(いやいや・・・どうしたもクソもないでしょうが!)





エノクの言葉に私は半ば呆れながら言葉を続ける。





(なに、そんな”地雷”募集を取ろうとしているのよ・・・!)



(どう考えても”それ”まともなパーティじゃないでしょうが!!もっと他のパーティを探しなさいよ!!)



(いや・・・だってさぁ・・・)





私が啖呵を切ってエノクに忠告すると、彼は頭の裏をポリポリと掻く。





(・・・仕方がなくない?僕のレベルに合う条件のものがほとんどないんだよ・・・)



(他にも無いわけではないけど、僕が求める”後衛”や”支援”タイプの募集じゃないし、いずれも駆け出しのパーティの募集しかないんだ)



(その中でも比較的条件が良いと思ったものがこれなんだよね)



(とりあえず、リーダーの人は悪い人じゃなさそうだし、会ってみるだけでも良いんじゃないかと思ってさ・・・)





そう言ってエノクは渋々と言った様子で答えてきた。


・・・まあ、確かに彼の言うことも分からないでもない。


この募集主は悪い人じゃないというのは分かる気がするし、純粋で真っ直ぐそうな人物なのは文面からでも伺える。


しかし、だからと言ってそれとこれとは話が別だ。


経験豊富なパーティ・・・出来れば熟練の冒険者以上の実力者がいるパーティに私は参加すべきだと思っている。


一方エノクの方はというと、パーティの実績や実力はどちらかというと二の次の様だ。


彼もパーティの実力を重要視してない訳ではないのだが、どちらかと言えば仲間との関係性によりフォーカスしている。


リーダーの冒険に対する価値観や、情熱。気心が知れる仲間達なのかどうか。また、自分が活躍出来る居場所があるのかどうか。


そういう基準でパーティを選びたいとエノクは言っていた。つまり彼はパーティの雰囲気を重要視していると言って良い。


・・・実は私とエノクでパーティ選びの基準は大分異なっている・・・


エノクとは対称的に私はパーティの人間関係は二の次で、身も蓋もない話なのだが、レベルが高いかどうかが最重要だと捉えている。


私は彼を説得するべく、再度魔力波を送った。





(エノク・・・まだパーティは探し始めたばかりでしょ?)



(流石に右も左も判別がついていない様なパーティに参加するのはどうかと思うわよ・・・)



(レベルがネックになっているのは分かるけど、それを除けば結構良さそうな条件もあるじゃない)



(駄目元で募集主の所に行って交渉してみるのも手じゃないかしら?)





私がそう言うと、エノクが口元に手をあてしばし考え込む。


彼は募集広告を眺めながらコクリと頷いた後、私に返信してきた。





(・・・うん。そうだね・・・)



(確かにちょっと安易に選びすぎたかも・・・)



(・・・その様子だと、レイナの方はいくつか目星となる募集を見つけた感じかい?)



(うん。まあね・・・えっとね・・・)





私は彼の言葉に頷くと、自分の目に留まった募集広告を彼と共有していく。


エノクは私の述べた番号の募集広告を確認していくと、なんとも言えない微妙な表情を返してきた。





(・・・うーん。レイナ・・・選んでくれた募集広告見てみたんだけど・・・)



(これってもしかしてさ・・・この間の"目録”に載っていた、熟練の冒険者から抜粋してない・・・?)



(・・・あっ、やっぱり分かる?)





エノクには目録を参考にして抜粋した事は話していなかったのだが、流石に彼には分かってしまったようだ。


私達が今見ているこの募集広告には募集主のリーダの名前は載っているものの、冒険者のランクの情報まで載っていない。


そこで私が活用したのが、エノクが今話題に出した”目録”だ。


これは先日エノクがファリルから借り受けて、彼がその場で即興で記憶してしまったあの”マルバスギルドの冒険者目録”のことだ。


その目録には冒険者の”名前”と、”ランク”、それに情報提供用の”値段”しか載っていなかったのだが、


この募集広告の”リーダの名前”と照合を掛けることによって、募集主のランクが判別できるのだ。


そして、私が彼に勧めた冒険者のパーティはリーダーが全員『ゴーレム級』以上・・・


・・・つまりレベル【50】以上の熟練の冒険者のリーダーがいるパーティだけを厳選したのだ。


エノクは苦笑いの表情を浮かべながら、私に返信してくる。





(・・・いや、そりゃ分かるよ・・・)



(だってレイナがオススメしてくれたパーティって募集要項の条件を完全に無視しているじゃん・・・)



(向こうが提示してきている”レベル”はおろか、”戦闘職”や”スキル”についても僕と全く条件が合っていないんだもん・・・)



(絶対これ何かレイナが恣意的に選んでいるなってすぐ分かったよ・・・)





彼は呆れながらそう答えてきた。


エノクの言っていることは実はその通りだった。


私は募集主が提示してきた条件は特に考慮せずに、エノクにそのパーティへの参加を促している。


この募集広告で重要な情報なのは2つだけ。


それが、募集主の”リーダーの名前”と”落ち合う場所”だ。


それさえ分かれば、募集広告などどうでも良かった。


企業の求人じゃあるまいし、向こうの条件を「はい、そうですか」と大人しく聞いて、参加候補から外すなんて愚の骨頂だろう。


当たり前だが、冒険には命が掛かっているのだ。冒険者のパーティ選びに妥協は出来ない。


向こうが提示してきた条件を満たせないのなら、パーティのリーダーに直接会って、エノクの成長性と有用性をアピールして参加を認めて貰う他ないだろう。


エノクが私の意図を察したのを受けて、私は頬を綻ばせながら彼に言う。





(ふふっ・・・話が早くて助かるわよ)



(私達はレベルを上げて実力を付けることが先決でしょ?)



(だったらまずは実力のあるパーティに参加する事が何よりの近道よ)



(まずは、その人達にアプローチを掛けてみない?)



(エノクの事を買ってくれる人絶対にいると思うからさ!)




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