ステータスと魔法効果①
「アナライズ!!」
私の前に置かれたポーションへ魔力を発する。
私から飛び出た魔力がポーションへ絡みつき、その中の構造を分析しようと”ウネリ”始める。
”アナライズ”は対象から流れ出る魔力の反響派の形を分析する魔法だ。
このイメージトレーニングを始めて2ヶ月程経つが、初期の頃と比べて私ははっきりと魔力の波を感知できるようになっていた。
ようやくここまでたどり着くことが出来た。
毎日のイメージトレーニングを欠かさなかったことや、エノクに何度もアナライズを見せてもらったおかげだ。
私は巻物を開き自分のステータスを確認する。
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◇転生者基本情報
名前:遠坂 玲奈
年齢:18歳(寿命:未設定)
身長:17.5cm
体重:53g
BWH:8.7 5.6 9.0
Lv:4
HP:6.5
MP:14
STR:4.6
DEF:2.5
INT:1.8
VIT:3.2
CRI:0.8
DEX:2.6
AGI:6.6
LUK:1.3
プライマリースキル:グロース、ミニマム
タレントスキル:大器晩成、酒乱、逃げ脚、テンプテーション
バッドステータス:1/10縮小化(永続)
所持アイテム:転生者の巻物、ディバイドストーン
所持クレジット:0
現在位置:カーラ王都 カーラ王宮 第9近衛騎士団宿舎
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・・・残念ながら、私はまだアナライズを覚えていなかった。
しかし、エノクが言うにはここまでくればもうセカンダリースキルを覚えるのは目前だという。
これまで以上にイメージトレーニングを強化して一刻も早くセカンダリースキルを覚えたいところだ。
”グロース”や”ミニマム”は日常生活を送る中で有効活用する道が今のところほとんど無い・・・
アナライズを覚えれば、私が今最も渇望している情報を得る手段を手に入れることができるのだ。
イメージトレーニングにも身が入るというものだろう。
それよりステータス欄を見てちょっと変化に気づいたかもしれないわね。
そう・・・まずは体重だ。
体重が52.5gから53gに増量しました・・・
もう、これに関しては私は諦めた。
筋肉を増やそうとすれば体重は増えるものだし、これは仕方ないでしょ・・・
ウエストは以前のままなんだから良しとしよう・・・
重いと言われちゃったらショック受けちゃいそうだけどね・・・
さて、それじゃ本題だけど・・・特筆すべきは何と言っても”レベル”かしらね。
エノクがアイナさんの訓練を受け始めてから2週間。
私のレベルは昨日ついに”4”になった。
エノクが訓練を始めて私のレベルも急速に上昇し始めたのだ。
私は首にぶら下げている菱形の宝石を手にとった。
石は銀色の輝きを放ち、そこから不思議な魔力の波が溢れ出て来ている。
”ディバイドストーン”・・・対となる石を持つ者と”経験”を共有するアイテムだ。
経験を共有するというのがどういう事なのかこれまでよく分からなかったのだけど、
エノクが訓練を始めてから私はそれを感覚的に理解できるようになった。
そもそも”経験”の定義は何なのかという事なのだけど、
魔法科学ではこれを「魔素を昇華させる際に身体に発生する”生体魔力量”」と定義しているらしい。
人は魔素を取り込むことによって常人を遥かに超えた身体能力を有する事ができるようになるのだが、魔素をそのまま身体に取り入れることは出来ない。
生体魔力が大気中の魔素を取り入れる際の触媒となり、魔素を昇華させることによって始めて取り入れる事が可能になるのだという。
生体魔力自体は誰でも毎日発生させており、日々生物は魔素を取り込んでいる。
しかし、何もしなければその量は非常に微弱であり、身体を変化させるまでにはまず至らない。
体を鍛え、極限の状態まで自らを追い込んだ時に人はそれまでより強くなるために”生体魔力”を多く発生させるのだという。
ディバイドストーンはこの生体魔力を共有するアイテムだと言って良い。
私とエノクの生体魔力が発生した際には、微弱な電流が流れるかのようにディバイドストーンを通してお互いの身体に生体魔力が駆け巡る。
本当に僅かな感覚なのだけど・・・私は以前よりも身体が強くなった気がする。
それはほとんど気の所為じゃないかと思うくらい変化が微々たるものだが、ステータスを見たら確かに私の数値は上がっているのだ。
今もディバイドストーンを通してエノクの生体魔力が流れ込んできているのを感じる・・・
彼が訓練を始めるまでこんな感覚は無かったのだけど、今は石を通してエノクとの繋がりを確かに認識できるのだ。
私はディバイドストーンをそっと撫でると、再び巻物に目を戻した。
Lv4になったステータスの値を改めて眺めてみる。
やっぱり、予想通りのステータスね・・・
私はLv4まで上がった事により、これで3レベル分のステータスの上昇を経験することになった訳だ。
それで分かったことは、やはりレベルが上がった時のステータスの上昇幅は同じだったという事だ。
具体的に言えば、HPが0.5。MPは3。STRが0.5。DEFが0.3。INTが0.2。VITが0.4。CRIが0.1。DEXが0.3。AGIが0.6。LUKが0.1になる。
だけど、これは当然といえば当然の話だ。
レベルという概念は魔法科学によって定義された身体への魔素の昇華具合を”一定の間隔”で刻んだものだ。
魔素の昇華によってステータスが変化するのだから、それを一定の間隔で刻めば、ステータスの上昇幅も一定になるのは当然の話なのだ。
エノクが以前私に説明してくれたことを改めて確認出来たという訳ね。
「よしっ!・・・じゃあレベルアップもしたし、今回も試してみますかねぇ・・・」
自分自身のやる気スイッチを入れるかのように呟く。
なんでこんな独り言を発したのかというと、これからやる行動がほとんど無意味に終わることを私は分かっているからだ。
だが、それでもレベルが上がったらこれを試さずにはいられなかった。
もしかしたら自分の中の秘められた力が働き、想定外の能力を発揮できるかもしれないからだ。
その淡い期待をもとにLv4になった私は”いつもの魔法”を詠唱した!!
「グローーース!」
ズゥン…
私の目の前の消しゴムは1.1倍の大きさに変化した。
以前と何も変わらない光景が目の前に広がっている。
「・・・・・」
「はぁ・・・まあ、分かってたけどね・・・」
「本当、使えないわねぇ・・・この能力」
呆れながら私はやれやれと首を振った。
効果時間だけは注ぎ込むMPによって変化はするが、結局はそれだけだ。
この能力によって変えられる大きさは1.1倍までなのは変わらない。
・・・しかも私が今この能力を使って”変化させられる対象”というのは実は限られている。
転生者の巻物には”グロース”はあらゆるものを巨大化させる魔法であり、”ミニマム”はあらゆるものを縮小化させる魔法と書いてある。
この表記は確かに間違いではない。だが、その効果が及ぶかどうかはまた話が別なのだ。
私はこれまで身の回りにある簡単に定規で測れるものに対してグロースとミニマムを使用してきた。
理由は単純で、その方が効果測定をし易いからだ。
私の体質上MPの回復まで4時間掛かるし、定規で簡単に測れない様な大きなものは目測で観測するしかないから実感が湧きづらい。
その為、私と同程度の大きさのもので効果検証をしていたという訳だ。
そして先日、エノクに魔法の講義を受けていた時に様々な新事実を私は知ることになったのだ・・・・・




