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今後の方針の決定




薄暗い部屋に光が入ってくる・・・





どうやら完全に夜が明けたようね・・・





昨日の夜はずっと走りづめだった。


私はとにかく屋根づたいで行けるところまで行った。


とにかく無我夢中であの家から離れたからどこをどういったか分からない。


しかし、逃げている最中にボロボロの空き家を見つけることが出来た。


ここはたぶん街の郊外だろう。


今は中に入って休憩をしている。





さすがに疲れた・・・


長い距離を走ってきたせいで凄い汗をかいている。


陸上部の懇親会用に着てきたおニューの黒ジャケットとデニムはすっかり汚れてしまった。


よく考えたら、昨日から・・・というより、この世界に来てからわたし何も口にしていないじゃん・・・


喉はカラカラ、お腹はキュウキュウ鳴っている。


ああ・・シャワー浴びたい・・・


ご飯を一杯食べたい・・・


ふかふかのベッドでぐっすり寝たい・・・


あの兄弟は結局監禁するだけしといて私に何もくれなかった。


お茶くらい出しなさいよ・・・まったく。


でも、なんとか抜け出せてよかった・・・・・


あそこにいるより、ここにいるほうが100倍マシだ。


あ・・・だめだ安心した途端眠気が襲ってきた・・・


ダメだ眠い・・・一回仮眠とろう・・・





私はそのまま眠りの中に入っていった・・・





カサカサ・・・





なに・・・この音





カサカサカサ・・・・





え・・・もしかして、この音・・・・



私は嫌な予感がして・・・目を開けた。



目を凝らすと黒い物体が遠くの壁で動いていた。





え・・・もしかして虫ぃぃぃ・・・!?





何の虫か分からないけど、結構な大きさだ。


ここには来ないと思うけど、寝ている間に襲われでもしたら大変なことになる。


私は自分の中に流れる冷や汗を感じた。





・・・ちょ・・ちょっとちょっと冗談じゃないわ!


虫なんかに捕食されて人生終えたくないわよ・・・!





さっきまでの眠気が途端に吹っ飛んだ。


寝るにしてもまずは身の安全の確保が最優先だった。


私は周囲を見回して、なにか使えるものがないか探した。


ここは廃墟とはいえ、木箱やら物置やらがたくさん転がっている。


木箱の中にはちょうどフタが半開きになっているものがあった。


これは寝床として使えるかもしれない。


私は半開きになっている木箱の中を覗いてみた。





「これは使えそうね」





木箱は縦・横・高さがそれぞれ50cm以上ありそうな大きめの箱だった。


中には当然何も入っていない。


今の私にとっては十分な程のスペースがある。


フタを閉めればこの中なら安全だろう。





・・・





あれ、でも待ってよ・・・


入るのは良いけど私どうやって出ればいいの?


蓋もどうやって閉めればいいのよ・・・


今の私は普通の大きさじゃないのよ?


その考えに至った私はガクッとうなだれた。





参ったわね・・・満足に箱も設置できないなんて・・・


しょうがない、もう少し小さめの箱で我慢しましょうか・・・


さっき星形の小さめの箱があったからそっちにしましょう。





私は星形の箱の近くまで行った。


星形の箱は綺麗な文様が描かれていて上部に小さめの穴がある。


宝石箱っぽい?


これ捨てられたのはもったいない気がする。


まあ、いいわこれに入りましょう・・・そろそろわたし限界・・・





私は星形の箱の中に入りフタを閉めた。


小さめの穴があるおかげで閉めた状態でも空気が入ってくるようだ。





よし・・・これで寝れる・・・





私は安堵したと同時に深い眠りに落ちていった・・・







それからどれくらい時が過ぎただろうか・・・





ゴトッ





意識が戻った私は内側からふたを開けた。


部屋の中は相変わらず暗い。


外から入ってくる光を察するにそろそろ日が沈もうとしている。


結構な時間寝ていたようだ。





「どうやら・・無事だったようね」





この箱を寝床にしたのは正解だったようだ。


身体は五体満足の状態で残っている。





「まったく、眠るだけで命がけね・・・」





これから先の生活が思いやられる。


今後ありとあらゆる状況が今までと変わってくるだろう。


昔の私の大きさだったら脅威にならないものが、今のこの身体では脅威になり得た。


これからの行動には十分な注意が必要ね。


そう考えながら、私は箱から外に出た。





とととと・・・





立ち上がった瞬間立ち眩みがした。


昨日から何も食べていないのだ。


眠気は無くなったが、体がふらふらなことには変わりがなかった。


まずは生きる糧を得なくなちゃね。


外に出ればなにかあるかしら?


でも、なにを、どうやって?



・・・



水は川や湖とかで確保できるだろう。


雨が降ればそれを貯める事も出来る。それにこの街には噴水のような水場もあった。


水質は問題かもしれないが、この際うだうだ言っていられない。


最悪ろ過するなり、火を起こして蒸留させるなり、やりようはあるはずだ。


道具がそろえばだけどね・・・


問題なのは食料の方だ。


食料店にでも行って、恵んでもらう?


いやいや、あの兄弟は私を見て相当驚いていた。


また、同じような目で見てくる人が出てくるとも限らない。


監禁されるのはもう御免だ。


それに人間たちにとって今の私は生殺与奪が思いのままなのだ。


機嫌次第であっさり殺されてしまうかもしれない。


昨日だけでも十分それを味わっている。





それならこっそり頂くか・・・





転生前の自分じゃ考えられないような事が頭にふっと浮かんできた。


人の倫理観についてあれこれ言っていたのが笑える。


私も徐々にこの世界に馴染んできたようだ。


嫌な馴染み方だけどね・・・


だが、生きる死ぬの問題に直面すれば人は変わらざるを得ないんだろう。


今はこの考えにさしたる抵抗はなかった。


しかし、問題なのはどうやってお店までいくかだ。


歩きで行くのはいいとして、屋根づたいで行ける範囲は限界がある。


そうなると道を通るしかないが、周りは全て10倍に巨大化した世界だ。


あらゆる危険が想定された。


最悪、人に踏み潰される可能性だってあるのだ・・・





「なにか身を守る武器が欲しいわね」





ちょっとそこまで行くだけで冒険に等しい。


本当は巨大化して元のサイズに戻れるのが一番だが”グロース”はほとんど役に立たなかった。


昨日、とり籠から抜け出せたのはこいつのおかげだろうが、実生活であれが役立つとは思えない。


なにか他にないかしら・・・


・・・


そこで私はふっともう一つの能力について思い出した。




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