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真莉亜の危機。

「ん?」

モニター画面を監視していた男は対象が移動していることに気付いた。


「兄者、ちょっと」

呼ばれた男は、モニター画面を凝視する。

「追跡するぞ」

「あいよ」


運転席に座っていた男に声をかけると、車はゆっくりと動き出した。


...................................................................................................


「静かにしろ」

布を被せられたせいでくぐもって聞こえるが、耳元で男の声がした。

背中には何か尖ったものがあてられており、瞬時に自分の置かれた状況を理解した。

何も言わず頷くと、口元にガムテープを貼られて、後ろでに両手を縛られ、抱えあげられ何かに乗せられる。


そのままホテルの中を移動して、エレベーターに乗り込んだようだ。

視覚が奪われているので、音で判断するしかないが、地下に向かっているのではないだろうか。


しばらくゴロゴロと運ばれていたが、やがて車のドアが開閉する音がして、身体を持ち上げられ座席に転がされる。そして身体全体に布が被せられた。

わたしが乗せられると同時に、車が動き出した。


不思議と恐怖は感じなかった。きっと狗たちが追ってきてくれるだろうと思っていたせいもあるし、華恵さまの身に起こったことはこれだったのかと思っていたせいもある。


同じ洋服を着ていたせいなのか何なのかは知らないが、わたしと華恵さまを間違えて攫ってしまったのではないだろうか。


それにしても、結構な長い時間を走り続けている。そのうち、舗装されていない道を走っているのか、ガタガタと車が揺れだしてから15分程経った頃、ようやく彼らの目的地に到着したようだった。


抱えあげられて車から降ろされる。そのまま肩に担がれ、どこかの建物に入ったようだ。中は少しかび臭く、すえた匂いのする部屋だった。

ジメっとしたマットレスに転がされる。ダニに食われそうでヤダな。


「うまくやったじゃねぇか 上出来だよ」

「ああ」

「アニキ、ちょっとメシ食ってくるわ」

「ったく、お前はしょうがねぇな 俺が見ててやっからあんたも食ってきな」


まだ布が被せられているせいでわからないが、少なくとも三人の人物がここにはいるらしい。

アニキと呼ばれた男を残して、二人は出て行った。


布を被ったまま、身体を横たえていたわたしのそばに男が近づいてくる。

「よっこらっしょっと」言いながら、わたしをマットに座らせた。ヤニ臭さが鼻をつく。

「さて、お嬢ちゃん、大人しくしてたらお家に帰してやるから、いい子にしてんだぞ」

わたしはコクリと頷いた。


誘拐は成功率が低い上に、結構罪が重かった気がするんだけど、未だにこういうことを考える人間がいるんだと驚く。成功率が低いのは、犯人が身代金を要求する際に、どうしても近親者に接触する必要があるからだ。それに、犯人は誘拐した人物を24時間監視化に置かなくてはならないので、単独犯行はなかなかに厳しい。その結果、不幸な結末を迎えることも多々あるのだが。


今のところは、わたしに危害を加えるつもりはないらしいので、状況を把握することを優先する。

ただ、いつまでもこの布を被せられているのは我慢ならないので、後で交渉してみようと考えていた。



...................................................................................................



「さゆりおばさま」

「何かしら?」

「まりあさま、ぐあいでもわるいのでしょうか?」

「そうねぇ……確かにちょっと遅いわね」

娘のことが気になり始めた小百合だったが、華恵を一人置いて様子を見に行くのも気が咎めたのか、周りを見渡し、美沙子の姿を認めた。


「美沙子さん!」

「小百合さん、ご挨拶だけで失礼したわね」

「いいえ、そんなことは構わないわ ちょっと娘を探しに行きたいのだけれど、華恵ちゃんが一人になってしまうと娘が心配するから」

「まぁ、真莉亜ちゃんはそんなに華恵のことを……さすが小百合さんのお嬢さんね」

「いえいえ、それよりも申し訳ないのだけれど、雄斗をお願い出来るかしら?」

「ええ、もう大体のお客様とはお話出来たから、どうぞ行ってらして」

「ありがとう、雄斗、美沙子さんの傍にいてね」

「はぁい」


小百合は、とりあえず一番近い化粧室へと足を運んだ。だが、娘の姿は見当たらない。

他にもいくつか化粧室を覗いても、娘はいなかった。念のため、控室となっている小宴会場も覗いたが、そちらにもいない。母親の勘なのか、嫌な胸騒ぎがする。


どうしよう、真莉亜が見つからない、まさか、そんな……。

バッグの中のスマートフォンが震えているのに気付いた。

「もしもし」

【奥様、お出かけ中に恐れ入ります 今、真莉亜さまとはご一緒でしょうか?】

「いいえ、いいえ!どうしたの?何かあったの?」切羽詰まって、思わず声が上ずってしまった。

【そうですか……すぐに誠一郎から連絡させますので、少しお待ちください】

「ばあや、どういうこと?」

【大丈夫です、私たちにお任せください すぐに連絡させますから】

そう言って電話は切れた。


時間にしてほんの二、三分だったのだろうが、小百合にとってはとても長い時間に感じられた。

誠一郎からの着信に出る。

「真莉亜に一体何があったの?!」

【奥様、真莉亜さまは今、車に乗せられて、どこかに向かっているようです】

「なんですって?!」

小百合は気が遠くなりかけたが、なんとか足を踏ん張って堪える。

【私たちが追っていますので、ご安心ください お嬢様は我々がお助けしますので】

「そうね、あなたたちがいるもの 大丈夫よね」

【ただ、あちらの目的がなんなのか、わかるまで動かないほうがいいと思われますので、すぐにでもお助けしたいのは山々ですが、少々お時間をいただけますか?】

「なぜ?!なぜすぐに助けないの!真莉亜が怖い思いをしてるでしょうに!」

【お嬢様はしっかりしておられる方です、大丈夫ですよ】

「誠一郎!何を根拠にそんなことを!」

【奥様、申し訳ありません 戻ったらお叱りは十二分にお受けしますので では、失礼します】

「誠一郎!誠一郎!もしもし!」

一方的に切られてしまったスマートフォンを呆然と見つめて、小百合は今度こそ昏倒してしまった。



....................................................................................................


「お嬢ちゃん、お家の電話番号、言えるかな?」

先ほどとは違う男が話しかけてきた。

言えるけど、その前にガムテなんとかしてくんないかな、さっきから口元がムズムズして気持ち悪いんだけど。


「布はそのまんまでテープだけ外してやんな」

乱暴にテープが剥がされる、ちょっと痛いじゃないのよ!


でも、この場合、どっちの家の電話番号を言えばいいんだろう?っていうか、うちならともかく、本城家の電話番号なんて覚えてないんだけど。

仕方ないので、フルフルと首を横に振ってみた。日付からして本城で間違いないとは思うが、万が一大道寺狙いの可能性もあるから、今は相手の出方を待ったほうがいい。


「わかんねぇのか……まぁしょうがねぇか、このガキ、まだ5歳だっけ?」

「そうだな、確か今日が誕生日だったよなぁ おっさん」

「そうだ、今日が誕生日だ クックック……」

やっぱり狙いは華恵さまだったんだな!でも大間違いだよ、あんたらが攫ったのは大道寺の娘だ……5歳児に間違われるのはどうかと思うがな!それにしても、一人、毛色の違うのがいるみたいだ。おっさんと呼ばれた野郎はやけに楽しそうだ。


「あの……出来ればこの布も取ってもらえませんか?」

「お嬢ちゃん、そいつは無理な相談だ 顔を見られたら、あんたを始末しなきゃなんなくなる その意味わかんだろう?」

「わかりました」

「あんた、肝が据わってんなぁ 5歳やそこらのガキじゃピーピー泣かれるだろうと思ってたのによ」

「さすが本城の娘だな だが、いつまでそうやっていられるかな フフフ……」


どうやら、この中で一番警戒すべきは『おっさん』のようだ。他の二人は金さえ積めばってタイプだろう。

おっさんは金じゃなくて、本城に恨みを持ってそうな気がする。


「そんじゃ、ちょっくら調べて電話すっかな」

アニキが気軽に出前でも頼むかのような口調で携帯をいじり始めた。

「へぇぇ お嬢ちゃんの家ってすんげー金持ちなんだなぁ おっさんの話聞くまでは半信半疑だったけどよ こりゃあ相当吹っ掛けても大丈夫そうだな」

「いいからさっさと電話しろ」

「んだと?」

「やめろ おっさんも今から電話すっからそんなに焦んなって」


アニキの調べはついたらしく、本城の自宅に電話をしているようだ。

「娘は預かった、明日15時までに三億用意しろ 警察に知らせたら娘は殺す また連絡する」


「これでよし……お嬢ちゃん、腹は減ってねぇか?」

首を横に振って、減っていないと伝える。こんな状況で食えるか、ボケ。

「アニキィそんなガキどうでもいいじゃねぇか」

「バカ野郎、大事な金蔓だぞ?」

「別に命が無くたって金さえあればいいんじゃないのか、え?」

「おっさん、あんまり物騒なこと言うもんじゃねぇ 俺らは殺しはしねぇ主義なんだ」

「へぇ?そうかい 俺は殺しても殺し足りないがな」


おっさん以外の二人が固まったような気がする。もちろんわたしも固まった。このおっさん、マジでやべぇ奴だ。本城の娘じゃないとわかったら、速攻で殺られる、間違いない。


ああ、また死ぬのかぁ~今度生まれ変わるなら、やっぱりアイドル候補生を立派なアイドルにしたいよねぇ~。でもハンターライフも捨てがたいかなぁ~ネコタク乗って温泉地…じゃなかった、今や飛行船でどこでも行けちゃうんだよね、いい時代になったもんだ…。


ってちがーう!わたしはまだ死にたくない、というか、この世界でまだまだやりたいこともあるんだ、貴彬や綾小路、雄斗のヒロインとのキャッキャウフフを見ないでどうする!死んでも死に切れんわい!


なんとかして、逃げ出す方法はないものか……GPSが拾えない場所でない限り、狗たちが待機しているはずだ。後は本城家が、華恵さまが誘拐されたフリをしてくれるかどうかだが、五分五分だろうと思う。華恵さまが無事とわかれば、おっさんは容赦なくわたしを殺りにくるだろうし、おっさんをなんとかしないと、また華恵さまか貴彬が狙われる。


……これって、結構詰んでない?








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