ディスヴィアス山脈へ
2日後、アルバがフラルを連れて現れた。
《ご苦労様でした、アルバ。フラルも呼びつけてすまないね》
《いえ、こちらに来た方が港町には近いですから》
《フォルス、ここの後片付けは終わったんだろ?早くクロウを探しに行こうぜ》
《えぇ、でもその前に私はフラルに尋ねたい事があります。クロウの事です》
《...何でしょうか?》
《彼は私達を洞窟探索の仲間として誘った時、私達より遥かに強い冒険者でした。なのに仲間を集めて洞窟を探索した。かといって洞窟内の宝箱には、皆無と言ってというほど無関心だった。何故…目的も無く彼は洞窟に私達を誘ったのか…。そしてオーディ女王から聞いた、彼の功績。ただの人間にしては彼の力は圧倒的に強過ぎる》
《おぃ!フォルス。それってまさか!クロウは人間族では無いとでも言うのか?》
《いえ、恐らく彼はワンダーでは無いかと…。古い文献で見たことがあります。類い希な気力を持ち、世界を変える力を持つもの…》
《クロウがワンダー…おぃ!嬢ちゃんそうなのか!?》
《はぃ。彼はワンダーです。私はオーディ様から教えられました。彼が今までモンスター達を保護し、冒険者達を洞窟探索に誘って居たことも…》
《やはりそうでしたか…。最近モンスター達が、訓練を受けてるような戦闘をしているので、何かが変わったのだと思っていました》
《モンスターの戦闘を手助けしてるって事は、あいつは俺達人間族の敵に回るつもりなのか…》
《それは違います!!どうしてもクロウさんは、それをしなくてはならない理由があるのです。私の口からは語る事は許されていませんので、フォルスさんやアルバさんには話す事が出来ないのですが、クロウさんを助けて下さい。彼はこの国にとってとても重要な方なのです》
《...分かりました。私もアルバも彼には多大な借りがあります。彼の人柄も分かっています、彼の目的が何であろうがお手伝いするのが、私の使命なのでしょう》
《あいつがワンダーだって、俺があったあいつは只の坊やのクロウだ。嬢ちゃん心配しなくて良いぜ…、だがあいつが人を襲うようなら、俺もあいつを全力で止めなくてはならない。そん時は恨まないでくれよ》
《はぃ…フォルスさんアルバさん宜しくお願いします》
この日は旅支度を済ませ、青宮で停泊した。
翌日三人は港町に向かって旅立った。
3人が港町に辿り着くと、町の人たちは恐怖に顔を歪ませていた。
町の北西に見えるデスヴィアス山脈の山頂に、黒い不気味な雲が漂っていた。
《なんだ!ありゃ~。山頂に暗雲がかかってるぞ。あんなの初めて見たぞ》
《えぇ、私も初めて見ました。クロウに何か関わりがあるのでしょうか?》
《分かりません。とにかく酒場のマスターに、クロウの居場所を聞いて見ましょう。》
3人は以前依頼を受けた、マスターに会いに酒場を目指した。
店に入ると店は冒険者達でいっぱいだった。
彼らの話によると数週間前、デスヴィアス山脈の山頂にあの雲は突然現れたそうだ。
山頂に近寄ろとしても、モンスターが強すぎて近寄れないので強者を集めているそうだ。
冒険者達から一通り話を聞き終わった頃、酒場のマスターを見つける事が出来た。
マスターの話では先日クロウに依頼した後、達成の報告に現れたらしい。
その時暫く依頼を断るようにとクロウに頼まれたそうだ。
酒場のマスターはクロウに口止めされているのか、クロウの居場所を教えてくれなかった。
フォルスが魔法を使い情報を聞き出した。
クロウはスプリング村のはずれにある、デスヴィアス山脈入り口に小屋を建てて住んでいるようだ。
先日クロウが酒場に来た時、彼は若い女性を連れていたらしい。
《誰でしょうか?その女性は?》
《彼が一緒に連れていると言うことは、きっと重要な方なのでしょう》
《とにかくそのスプリング村に行ってみようぜ!!》