真犯人
青宮に辿り着くと宮は怪しく静まり返っていた。
《どうしたんでしょうか?人が誰も居ないなんて何かあったのでしょうか?》
《あぁおかしいな。使用人達の姿さえ見えないとは…》
リーフは透視魔法を詠唱して、宮の奥の部屋を透視した。
《フォルスさん!!こちらの部屋に数十名の人間が居ます。行って見ましょう》
部屋の中を覗いて見ると、恐らく青宮で働いていた使用人達が、まるで石像のように立ちつくしていた。
彼らは微動だにせず、声を掛けても反応が無かった。
《フォルスさん、きっとメデルカの忘却魔法ですよ。早くメデルカを探しましょう》
《そうだぜ、このままほっといたら死人がでてもおかしくねぇぜ》
《恐らく彼は自室にいる筈です、こうなっている所を見ると、彼の精神はかなり崩壊しているのでしょう。前にあった時は、公にこういう事をする人間には思えなかった》
《おぃ!フォルス。ぐずぐずしないで乗り込もうぜ。こちらは切り札があるんだ、当たって砕けろだ》
3人は部屋を後にしてメデルカの部屋に向かった。
メデルカの部屋に入ると、中央の椅子にメデルカが腰掛けていた。
《メデルカ!見つけたぜ!覚悟しやれ!》
《メデルカさん、この状態はどういう事です。皆、動かなくなってます。貴方の仕業ですか!?》
《!!!!》
メデルカに近寄ると、彼は微動だにせず固まっていた。
《どういう事だ、こいつが犯人じゃ無かったのか?》
《彼も何者かに操られていたと言うことでしょうか?》
《フォルスさん、この部屋の地下に誰かいるみたいです》
地下に降りて行くと見知った人物が、げっそりと痩せ気力の無い目をして佇んでいた。
《ノートルさん!!まさか貴方が!!》
《やっと気づいたか…。そぅ私がメデルカを操り、忘却魔法を使ったのだ》
《何故こんな事を…》
《この日記で忘却魔法を発見した事で始まってしまった、最初は興味本位だったのだ。私は魔法の力により心の均等が保て無くなり、次第にメデルカが私に不信感を抱いた。彼は私を地下に閉じ込め、隔離した。しかし、私は彼に忘却魔法をかけた。お前達が現れた時地下に居たのは、メデルカを犯人に仕立て上げる為だった。でも次第に忘却魔法が強くなり、今では私だけしか意識が無くなってしまった。こんなつもりでは無かったのだ…》
《何だと!これはみんなあんたの仕業だったのか!》
《アルバ!彼に水を掛けて下さい。恐らく忘却魔法のせいで、正常な精神を保て無いんです。私や貴方でもあの魔法の力には勝てない。彼が悪い訳じゃ無い!!》
《おぅ。任せとけ!お嬢さん、魔法だ。任せたぜ》
《はぃ。分かりました!》
アルバがノートルに近寄ると、ノートルが忘却魔法を使って来た。
アルバは持っていた小瓶を、ノートルの足元にめがけほり投げた。
小瓶が割れ、中の水がノートルの全身に降り注いだ。
《嬢ちゃんいまだ!》
アルバの掛け声でリーフは、反響魔法をノートルに唱えた。
すると、小さな響きとともにノートルが崩れ落ちた。
暫くすると青宮に、人の気配が満ち溢れた。
使用人達が気がついたようだった。
ノートルに近づくと彼は息絶えていた。
恐らく忘却魔法の威力が彼の身体には、もう耐えられ無かったのだろう。
彼の死に顔は穏やかな顔をしていた。
《彼も被害者だったのです…。忘却魔法を見つけてしまった…》
《二度とこの魔法が使われ無いように、私達がこの日記を封印します。》
日記は魔法で守られており、焼く事も出来なかった為、リーフが申し出た。
《そうですね、この魔法は人間族には大きすぎる。オーディ女王なら正しく保管してくれるでしょう。宜しくお願いしますリーフさん》
《はい。必ず悪用されないように封印します》
《お願いします。私はすぐにこれを持って国に戻ります。お二人共フラルの事を宜しくお願いします》
《あぁ、任しとけ。クロウを助けたら、ちゃんと送り届けるぜ》
《リーフさん有り難うございます。オーディ女王にもくれぐれもお礼を伝えて下さい》
《はっはい!フォルスさんもアルバさんもお気をつけて》
そう言うとリーフは足早に部屋を出て行った。
《アルバ、私は王族としてここをほって置く事は出来ません。貴方は先に白宮に戻ってフラルを連れて来て下さい。思った以上に時間がかかってしまったので、分担して動きましょう》
《分かったぜ、2日もあれば帰って来る。それまでにそちらの用事は片付けておけよ》
《えぇ、任せて下さい。宜しくお願いします》
それからすぐにアルバも旅立ち、フォルスはまずメデルカを治療し、彼と一緒に宮の復興に手を貸した。