間話:美衣歌の制服
飛ばしても本編に影響はありません。
美衣歌の侍女たちが初めての“制服”を堪能するリクエスト話です。
コーラルは仕事を終えて、自室へ戻ってきた。
部屋の奥にある窓から朝日がはいり、窓の下に机と椅子。
その椅子に座って、ひと休憩した。
部屋に隠し持っている、変わった服一式をクローゼットから引っ張り出した。コーラルが遣える主人が、王城に来たとき、着ていたもので、コーラルが見たことのないデザインの服だった。
アルフォンから「彼女の服を持っているか」と問われ、あると答えた。「本人に返すから、渡してほしい」と頼まれ、断れるわけがない。
洗濯をして、綺麗になった未知の服は、コーラルの興味を惹いてやまない。コーラルは服のデザインを見ることがとても好きなのだ。
ドレスに限らず、ペチコート、コルセット、手袋にまで。なんにでも興味がある。
少しだけ。
興味津々で、服を身体に当てて、小さな姿見に映し出した。
スカートと呼ぶべきか、ドレスと違う服は、上下に分かれていて、スカートは膝丈の長さ。スカートの下の方に横へ濃い青の線がまっすぐに走る。その上に同じ色のリボンが一つ。このリボンがこの履き物の可愛さを引き立てていた。上の服は、首元の裾が外に折り返され、乳白色の色をしている。赤色をした細い紐より、リボンよりも太いものは、両端の太さが違い、片方は細く、かたほうは太い。使い方がわからない。この下のスカートの上に巻くもの、なのだろうか。巻くとしたら、どうやって?
結ぶにしても、結びにくい。端へ行くほど太くなっている側と、細い側が結べるようにできていない。
もう一つ。スカートと同色の上に着るものであろう服は、乳白色の服よりも厚く、羽織ってみると、じんわりと身体が暑くなる。風を通さないように出来ているようだ。
他にも服の下に着る下着は、こっちで使う下着よりも性能が良さそうだ。
「コーラル、開けてもいいかしら?」
「はい!」
ドアを叩く音にびっくりして足を滑らせ、背中をベットの梁に打ち付ける。
じぃんと痛い。
「いたた、どうぞ」
「すごい音がしましたが、なにしてるの、貴女は」
入ってきたイアは、背中をさするコーラルと、ベッドの上に広がる服たちに、なにしていたのか察してしまった。
隠れてしていたことが見つかって、恥ずかしさに頬を染めながら言い訳をする。
返してしまったら、もう見られなくなってしまう。こんなにも珍しい服たちを堪能する時間は今夜だけ。
「スティラーアさまに、明日返さなきゃいけないものだし、少しくらいなら、と思い、まして」
見逃して欲しいと願う。イアに取り上げられてしまったら、もう堪能できない。
「実は、わたくしも気になっていました」
恥ずかしげにイアは告白した。
ベッドに広がる美衣歌の服をおずおずと一つ手に取る。ふわりと両手でもつと、下着らしい薄い布は、可愛らしい薄いピンク色をしていた。
触り心地の良さに、コーラル同様に、目を見張る。
「素晴らしいですね」
「はい! とてもいい素材を使っているみたいです!」
二人は、スカートの横に付いているものを触ってみる。ドレスの後ろに付けられた釦と違う代物に、どうやるのかと首を傾げた。
小さな持ち手を挟み、下ろしてみる。ジー、と音を出しながら、上から開いていく。
金具同士が引っかかっている場所を取れば、大きく開くスカートの上部に、イアが小さく狂喜した。
下げた持ち手を上にあげれば、開いた場所が閉まっていき、その場所を布地が覆う。金具が見えなくなって、感動は計り知れない。
「なんて素晴らしいのですか!? 釦、いりませんよ!」
「はぅあ。こうするのですね! 素敵です!! 履いてみたい」
コーラルの一言に、二人は生唾をごくりと飲み込み、侍女服の上から履いて、感動する。ジーというこの金具は侍女服が邪魔をして途中で止まってしまったけれど、楽に履ける。
機能性がとてまよかった。侍女服もこれにしてくれれば、着るのが楽になるだろう。前釦なのだが、一つ一つを留めていくので、時間がかかる。この金具がついた服ならば、釦よりも楽に着られる。
目を輝かせる二人は、コーラルの部屋で、上着、スカート、足に履く長いもの。汚れや、着た跡ができない程度に美衣歌の服を楽しむ二人の侍女たちの夜は更けていく。
見たことのないデザインに目を輝かせながら。
あまり長く書けませんでした(汗)楽しんでいただけたら、幸いです。




