13:「スティラーア」【現在】
ウィステラ皇国から遙か西に位置する小国ルモリエン。
首都ローレンから南下した小さな村キャバラで、細々と農業を営む夫婦がいる。
二人は数ヶ月前、とある事情で身も心もボロボロになりながら、キャバラへ来た。酷く憔悴しきった彼らを村人は優しく介抱してくれた。
歩けるまでに回復した夫婦に身寄りがなく、帰る家もない。知った村長は家を与えてくれた。雨風が凌げても稼ぐ仕事がないと知った村の民が、使われていない土地を耕して農地にし、野菜を作れば良いと教えてくれた。
人を疑うことしかしてこなかった夫婦はこの優しさを当初は疑った。
この地に留まらせ夫婦がここにいると、ある人へ知らせるのではないか、と。
介抱してくれた恩はあれどよそよそしい夫婦に、根気強く付き合ってくれた老夫婦に次第に警戒心は薄れた。
「ジェティン」
夫婦が所有する田畑は、二人で管理するには広いが、利便性は悪く、村から二十分程歩いた、道沿いから奥まった場所にある。近頃農作物が盗られる被害が出ている中、立地が良いのか作物が盗られる心配はなかった。
農作業が盗まれるよりも心配なことがある。キルトと同じく畑に来ている妻、ジェティンのことだ。
彼女はよっこらせと、年寄りくさい言葉を発しながら曲げていた腰を伸ばし、キルトへ振り返った。
濃い藍色の編み込まれた髪が風に靡いた。初秋の夏のような強い陽射しに薄い青紫の丸い瞳が柔らかく少し細くなり、思わず魅入ってしまう。
「なに?」
「なにじゃない。そこで休んでいろっていっただろう」
滴ってくる汗を拭いながらぶっきらぼうに言った。
泥と汗で汚ごれた灰緑色の髪は、あの日から一度も切っていない。
長く伸びた髪が農作業の邪魔となり、いまは結んでいる。
毎日畑へ行くキルトをジェティンは村の出入口で見送ってくれていたのが、今日はなぜだかついて行くと言って家へ戻らなかった。
キルトの服の中に隠された畳まれた札にジェティンは両手を乗せ念を込めた。
それは自身服の中に隠された札にも同様に行い、不安を払拭するように明るい声で「行きましょう」と言った。
作物の世話に没頭している隙に木陰で作業を見守っているジェティンは、畑仕事を手伝い出してしまう。ジェティンの滑らかな手は、力仕事を一切してこなかった女性のもの。
「座ってばかりは退屈なのよ。わたくし、暇は嫌いよ。キルトも知っているでしょ?」
「もちろん知ってるけど……」
ならばなぜ家へ戻らなかった。
体力仕事が出来ないジェティンは、畑に来てもなにも出来ない。
「動きたいの。大丈夫よ。このお札が叔母さまの魔法から守ってくれるわ」
ジェティンはそういうと懐から一枚の細長い紙を取り出した。何度見せられても、なんの変りもない一枚の小さな紙にしか見えない。
あの一枚の紙だけで、自分たちの生活が守られているのかと思うと不思議な気持ちだ。ジェティンとの暮らしは幸せだけれど、その紙切れは信用できない。ジェティンの叔母が魔法を使って、ジェティンの居所を見つけるかわからないのだ。見つからない保証は何一つない。
不安なのだ。
いつかこの生活が壊れてしまうのだろうか、目の前から妻が連れ去られてしまわないだろうか、と。
実名は伏せているが、ジェティンの高貴な話し方はそう容易く抜けるものではない。
小さき頃から学んだ作法やマナー、言葉に生活、どれをとってもキルトとは全く違う生活を数年前までしていた。
ジェティンに見せられた札が普段と違うと、キルトは気がついた。
気づいてしまった。
「ジェティン! 札が!」
夫婦の穏やかな日常を守る札は中央で少し破れている。キルトの指摘に、ジェティンは札をじっと見つめ、ゆっくりと破れていく様に、恐怖に瞳を見開き、悲鳴をあげた。手から離れた紙は緩やかに流れる風に乗って耕された土の上に落ちる。
誰も触っていないのに、札はゆっくり破れていき、書かれていた文字は薄れていく。
それを意味することを悟ったキルトは手にしていた鍬を放り出し、自身の服の中から折りたたんだ札を取り出す。ジェティンの札よりもひどく、真ん中で綺麗に破れていた。そこに書かれていた文字は完全に消失している。
特殊な紙が使われたこの札は、ジェティンがかけられた魔法が消失したことを意味していた。
「……大丈夫、大丈夫よ。紙の寿命ね」
しかし、慌てるのはキルトだけで、ジェティンはなんでもないことのように言った。顔色は先ほどよりも良くない。
やはり、紙は寿命ではなく、紙にかかった魔法が打破されてしまったのではないか。キルトの不安が真になってしまったのか。
やっと掴んだ幸せはこの紙切れによって守られている。紙が破れる不安はとてつもなく、キルトを震え上がらせた。
「ジェティン」
大切な妻は、この生活を守ってくれていた破れた紙の残骸をぐしゃりと握り潰し、魔法の炎で跡形もなく燃やしてしまう。新しい紙を取り出して、新たな魔法を描き発動させた。
これで問題ないと、ひけらかしてみせる。
「ジェティン、帰ろう。いや、引っ越しを。もうここにはいられない」
「大丈夫。わたくしが大丈夫と言っているのだから、キルトは気になさらないで」
キルトに新しい紙を渡した。
「更に頑丈にしたわ。大丈夫」
何度も呪文のように、繰り返される大丈夫に、キルトは自身に納得させるしかない。
一度湧き上がった不安はそう簡単に消えるものでもなく。
ジェティンは新しい呪符をポケットに入れ、言葉の練習を始めた。
「わた、わたし。わぁたぁし。よし。話し方って難しいわ」
一人称の言い方を頭に覚えさせるようにゆっくり練習をした。難しいと言われても、なんと言っていいかキルトは困った。難しいのは言い慣れていないジェティンだけなのだ。
ふぅと一息入れるとジェティンはまた作業を開始しようとする。それに気づいたキルトはぎょっと目をむきあわてて止める。
「頼むからやめてくれ! お腹の子に障る!」
がしっと両脇に手を入れ後ろから止めた。女の人はどれだけ男を心配させれば気が済むのか。キルトは気が気でない。今日も家に置いておけば暇だといって外を出歩きかねなかったから、目の届く場所へ連れてきた。大人しくていてくれればいいが、手伝いを始めてしまうのだから困る。
「大丈夫よ。赤ちゃんは安定期にはいてて、あとはおっきくなって、産まれるのを待つだけなんだから」
だから、それまでは……といっても聞かないだろう。
仕事をしなければならないのはわかっているが、これ以上身重の妻を心配しながらの農作物の収穫はできそうもない。
「あと少しで終わるから、あそこで待っててくれ」
「そしたら帰る?」
「帰る」
「なら待ってるわ」
ジェティンはおとなしく木陰に腰をおろした。
キルトはそれを確認すると、収穫した作物でいっぱいになった木箱から順に、村から引いてきた荷台に乗せていく。
六箱目の木箱を荷台へ乗せようと持ち上げた、そのとき。
馬の嘶きと車輪が地を走る音が遠くから聞こえてきた。
キルトの畑は人目につきにくいが、それは木々が人通りのある道からうまく隠してくれているからだ。
馬車の通る道沿いにそるようにあるため、畑にいれば、道を通る音が聞こえてくる。
辺鄙な場所にあるキャバラだが、時折、貴族が休息の地を求めてキャバラに立ち寄ることがある。その馬車がきたのだろうとキルトは最初、そう思った。
しかし、音が近づくにつれて、馬車が走る音にしては違うことに気づく。
貴族が乗るのであれば、ゆっくりと景色を楽しみながら進むものなのだが、キャバラへ向かってくる馬車は急いでいるようにとれた。
車輪の音、馬の足音が違い、足音から、馬は馬車をひく馬以外にいるのだろう。
「村で何かあったのかしら?」
異様な音にジャティンが村を心配し、木陰から立ち上がった。道沿い近くにいるキルトのそばに歩いてくる。
「わからない。何がくるんだろうな」
気になり、二人は木の隙間から道を窺った。
音は徐々に近づく。村へ来た数年。聞きなれない音で、以前はよく聞いていた音。二人の間に緊迫した空気が漂った。
先頭を切って走ってきたのは三頭の馬だった。
その後ろを一台の馬車が走り、その馬車の右側に隣接して馬が一頭。キルト、ジェティンからは見えないが反対側にも馬が一頭いるのだろう。
馬車の次に三頭の馬が走る。馬に跨っているのは、皆、フードを頭にかぶり外套を着た男たち。
男たちはキルト、ジェティンの前を通り過ぎ、まっすぐ進んでいく。道は一本で、先にあるのはジャバラ村しかない。ジャバラ村の先には貴族たちの避暑地だ。貴族はなにもないジャバラ村を抜けて避暑地へ向かうことはしない。
ジャバラ村では食料や、小腹を満たす食べ物、寒さ暑さをしのぐ衣服がなにも調達できないことを知っているからだ。
貴族を乗せた馬車であるなら、馬車に貴族の紋章が刻まれている。内密に訪れるとしても、周囲に不審がられては逆に目立つ。
「なんなのかしら?」
不思議に首をかしげるジャティンだが、瞳はとても輝いている。何か面白いことが起きるとでも思っているかのようだ。
対するキルトは不思議とは違って、不審だった。一台の馬車を囲うように走る馬。異様な空気を醸し出し、フードをかぶり馬にのる男たち。
とにかく、早く村に戻った方がよさそうな気がする。
「ジャティン、荷台に乗れ」
残った木箱を急いで荷台に乗せると、荷台の開いた場所にジャティンを乗せ荷台を押した。
道にでると、走り去った馬車の車輪の跡がくっきりと残っていた。
馬車の車輪の跡は迷いなくまっすぐ村の中まで続いている。
不安を覚えたキルトは村の入口に入る前にジャティンを荷台からおろした。
「ジャティンは人に見えない場所に隠れてろ」
怪しい馬車の跡が村に伸びていることを知るとジャティンは、こくりとうなづいた。
ジャティンが村の外に数本立つ背の高い木の陰に隠れたのを確認するとキルトは何事もないかのように平然と村へ入って行った。
車輪はどこまでもキルトが歩く前に残っている。
入口で止まった形跡もないところから、はじめからこの村に用があったとしか思えない。
村の中に残る車輪の跡を見ても、誰かに尋ねるために止めた形跡もない。
不安が徐々に募る中、キルトは家の近くで馬が6頭いるのを見かけた。六頭……馬車がひきつれていた数は八頭。馬車の前後を走っていた馬だろうか。
さらに先に進むと、自宅の前に馬車が止まり、その周囲に二頭の馬が止まっている。
馬車の近くには村人が群がっていた。何事だろうかと、興味本位に馬車を見ている。
「あ、キルト! おまえ、どこ行ってた!?」
野次馬の一人がキルトに気がつき、上ずり切羽詰まった声で走ってきた。
「どこって、畑だよ。収穫しに」
「あ、ああ、そうだったな。おまえ、ジェティンさんは? 朝、一緒に出てったろ?」
キルトは畑に行く前に、この男にジェティンと一緒に出て行くのを見られていたことを思い出す。
「ジェティンなら、一緒じゃない。途中で別れたさ」
男は、それを聞いて、ほっとしたような、そうできないような、複雑な表情をする。
「どうかしたのか?」
村人の視線がキルトに集中しているのをひしひしと感じながら、男へ訪ねた。いやな予感が頭の中をかすめる。彼らが村へ来た理由はジェティンなのかもしれない。
「ジェティンさんを探しに来たみたいなんだ。だけど、あの人たちが言う人はスティラーアて名の、他国の偉い貴族さんだそうだ」
キルトは驚いた。予感が的中してしまった。途中で、ジェティンを置いてきたのは正解だったようだ。
「そうか」
「おまえ、知っているか?」
「……俺、家に行ってみる」
「どっちなんだよ! はぐらかすなよぉ」
ああ、と返事できない代わりに、荷台をおいて家へ向かう。その後ろから男の答えを求める声が追いかけてきたが気にしない。
知らないと言えるはずがない。その名前は数年前まで妻の名前だった。妻の名はスティラーア・メディ・エ・リラ・ルスメイア。カヴァロン帝国の貴族ルスメイア家の三番目の娘。
ルスメイア家は魔術を操る異色の貴族で、その中でも数多の魔術を扱い研究しているのが叔母のフィリアル。
スティラーアはフィリアルから魔術を習い、自らも研究に勤しんでおり、フィリアルに次いで帝国では有名な魔女だった。
家の中へ恐る恐る足を踏み入れていくと中を外套を着たままの二人の男が家の中を荒らしていた。
部屋の机を倒し、物入れに入っているものは全部床に落ちている。
探しているものはスティラーアがここにいるという確たる証拠が持てるものだ。
たとえば、ジェティンが肌身離さず持っている魔法の札とか。
「そこでなにしてる」
男たちはキルトの気配に気がづかない。キルトは男たちへ挑むような鋭い視線を送りながら地を這うような低い声を出した。
男の一人がびくりと体を震わせ、恐る恐る振り返る。その頭にフードは被っていなかった。
「なんだ。君は」
振り返った男は、人を見下したような眼をしていた。
「ここは俺の家だ。人のいないうちに勝手に上がりこむのはやめてもらいたところだね」
こちらとて、怯んではやらない。自分の家に無断で入られたら怒るのが当然だ。
「おい。…………、……」
キルトの声に驚きもせず物色し続けていた男が、はじめて顔をあげ、キルトと向き合っていた男へ何事かを囁く。
人前で囁き話とはと思うが、どう見てもキルトより偉い人物だ。不愉快だからと口をはさめる立場に、彼はいない。
「ここの家の主人。勝手に上がったのは申し訳ない」
終わるのを待っていると、不意に声をかけられた。
「だが、ここに十九か、二十になる娘は住んでいないか? 名前はスティラーア……いや、今はジェティン、だったな」
「!」
キルトは悟った。彼らはジェティンを連れ戻しにきたのだ。いつまで平穏な生活が続けられるのかと怯えた年月は長く、やっと幸せを掴んだかにみえた自分たちの生活を簡単に奪っていこうとする者たち。
キリトは、ジェティンを守らなければならない。この男たちから。
男の中に一人、やけに態度の大きい者がいるが、ジェティンと離れてしまう悲しみに比べたら、負けていられない。
彼女と共に屋敷を逃げると決めたあの日の夜、必ず守ってみせると決めた。
もう、貴族だとか、兵士だとかそんなものに捕らわれて、ジェティンが窮屈に感じる生活は、もうしたくない。
「外に群がっているやつが言うにはお前の妻だそうだが――どこにいる」
ここにいることは確認済といったところか。
なら、どう切り抜ける?
ジェティンを簡単に奪われてなるものか。
大切な人なんだ。
彼女のために、遠く離れたこの地まで来たんだ。
壊されてたまるか。
「いないさ。彼女は今日の朝、出て行ったからな」
「何処へ?」
「さぁな。俺は何処へ行ったのか知らない」
それでも物色をやめてもらえない。なにもでできはしないのに、なぜ諦めてくれないんだ。
焦りを覚えたキルトに、物色の手を止めた男が、キルトの前に立った。
「おまえ……元ルスメイア家のものだろ?」
それも知っているのか。
キルトが返事をしないのを肯定と取った男は、下卑た笑みを浮かべた。
「ちょうどいい。おまえを捕らえて、ルスメイア家に突き出せばそれは一生遊んで暮らせる報酬が払われるらしいからな」
男から聞いた報酬に、嬉々として男たちが標的をキルトへ向ける。
誤魔化して、こっそりジェティンを逃す方法を探っていたのに。
「スティラーアさまをどこへ隠した」
「隠してなんかない」
「いい、おまえに聞かずどもスティラーアさまは自ら顔をお出しになるだろう。お前が危機に陥れば、いてもたってもいられなくなる。そういうお方だ」
そういうとキルトへつかみかかってきた。獲物をおびき出す餌として使うために、捕えようというのだ。
暴れるキルトを二人掛かりで捕らえる。いくら兵士としての訓練を過去に受け、腕に覚えがあるとしても平兵士だったキルトが一度に二人の男を蹴散らすことはできなかった。
「村の入口へ連れて行け」
男の合図でもう一人の男がキルトを引きづり家から出た。
外では相変わらず村人が固唾をのんで見守っていた。キルトが男に連れ出されたのを見て、村人たちに驚きのさざ波が起きる。
キルトを連れた男は、村の入口に来た。
「スティラーアさま。これをみよ!」
どこからでも見える位置にキルトを立たせる。
来るなといいたいが、言えば近くにいることが相手に知れてしまう。
「スティラーアさま」
どうしたらいいのかと悩んでいるキルトの耳に、妻の名が聞こえばっと顔をあげる。
心配した顔でキルトの前に立っているのはまぎれもなく妻だった。
「スティラーアさま。フィリアルさまがウィステラ皇国でお待ちしております。ご同行、願えますか?」
この男のいいように、迷わずうなずく。
キルトを助けるためなのだろうか――。
(俺はそんなのいらない)
ジェティンがそばにいてくれると選択してくれればそれでいい。
「ジェティン!」
「キルトごめんなさい。わたくしのせいね。この札の効果を過信しすぎていた」
あくまで、偽りの名を呼ぶキルトへジェティンは悲しい顔でつぶやいた。
ジェティンが持っている札は、特定の人物の場所を魔術で探り当てられなくするもの。叔母のフィリアルが編み出したものを盗み出してきたのだ。
それから平穏で暮らせたのはこの札のおかげもあるが、フィリアルがこの札を無効にする魔法を編み出さなかったからでもある。
自分はその対策を練らなかった。これはジェティンの落ち度だ。
「違う! ジェティンのせいでは……」
「大丈夫よ。わたくしは貴方のところへ帰ってくるわ」
逃げるすべもなくなったジェティンは、馬車へ抵抗することなく乗りこむ。ドアが少し乱暴に男の手により閉められる。
ジェティンが自分の元から去っていく。
行かないでほしい。行ってはだめだ。行ってしまったら帰ってこれなくなる。フィリアルが帰してはくれない。
馬車が騎乗した馬に囲まれて進みだす。キルトをおいて、徐々に速度を上げていく。
「ジェティン。――スティラーア!! いくな!!」
着た時よりも速度の落ちた走りでキルトの視界から遠ざかっていき、視界から消えていった。
馬車が遠くへ行ったのを確認した男は、キルトの自由を解放してくれた。
男も馬にまたがり馬車を追う。
キルトの心をやるせない気持ちが支配した。
守ると決めたのに、守れなかった。
もうフィリアルにはかかわらせないと誓ったのに、できなかった。
キルトは人目も憚らず叫んだ。
キルトの気付かないうちに村の入口には、村人がほぼ全員集まり、事の成り行きを見守っていた。村人たちはそうすること以外になにも二人にしてやれなかったのだった。




