メガネは体の一部です。
『明日から、メガネは無しで! 』
と言われ渋々メガネ無しで出勤してみた。
不安なので一応、持ってきてはいるが……
メガネが無いと何だかとても違和感を感じる。
無いメガネを下がってきたと勘違いし、鼻あてのところをあげる仕草をしてしまったり、お陰で一人で恥ずかしい思いをしてしまった。
「高木先生! ホントにメガネ無しで来たんですね。」
後ろからニタニタしながら黒川が話しかけてきた。
私のメガネ無し出勤はそんなに珍しいのか……? と考えながら更衣室で白衣に着替え、名札をつける。
その間にも「コンタクトにしたんですか? 」だとか
「雰囲気変わりましたね」など色々言われた。
メガネをかけ始めた頃もよく言われたな……なんて考えていた
臨床実習が始まり、人と関わることが多くなった。
はっきり言って人が好きでない私にとって臨床実習はあまり得意な分野ではなかった、となると今歯科医師を続けていることも疑問なのだが……
しかし、人と関わらないということは歯科医師になるのを諦めるということを指す。それではまずい、歯学部というのは歯科医師になるための学部であり他の道は無い。
色々考えた――。どうすれば極度の人見知りが治るか。
最終的にでた答えは『メガネをかける』という考えだった。
人よりは無口で無愛想ではあるが、普通に話せるようになった。
しかし、その長年の人との会話ツールを禁止されてしまったのだから、恥ずかしくなっても仕方がない……なんて勝手に思う。
「高木先生っ! 」
でかくて無駄に女の子らしい声が廊下の向こうから近づいてくる
須藤由夏の声である。
「おぉっ! メガネ無しにしたんですね、格好いいですよ。」
彼女は目を光らせ私の顔を見つめそう言う。
久しぶりに顔を直視され、少し恥ずかしい……。
「やっぱりメガネかけていいかな? 」
私は何となく彼女に尋ねる。
「え、これからが本番ですよ! 高木先生。」
ということはこれは序章、リハーサルなのか……?
「今から高木先生の印象をもっとガラッと変えちゃいます! 」
彼女は自信満々に言い切った。
彼女は肩にかけていたバックの中からゴソゴソと何かを探し
携帯用のスプレー缶をまるで四次元ポケットから取り出すようにドヤ顔で私に見せつけた。
そして、私をもう患者のいない診察室に誘導し診療ユニットに座らせた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この後も更新する予定?ですので見てくださいね♪