kiss 2seconds #8
掲載日:2015/03/16
確かに彼女はときどき黒い日傘を挿していた
そしてそれが理由で、酷い落書きをされていた
トイレや屋上の扉にあるむき出しの侮辱は
異性であるぼくたちの夜の妄想を超えていて
さらなる次元を高めるか、嫌悪感に放棄するか問い詰める
だけど、教室に浮かぶ孤島の住人は
イライラするくらい涼しげで常に寡黙だった
何の転機が訪れることもなく卒業がきて
笑った声も怒った顔も困った気配すら見せず
誰よりも強烈な、空白に似る記憶だけを残した
20年後、彼女と同姓同名の女の子と出会った
ぼくはその娘に、同じ名前だった女の子の話しをした
彼女は自分と同じ名前の女の子のことよりも
落書きした人たちのことを理解できる、と言った
独りきりでいられる謎が、みんなには怖かったのよ
ジーナ キリン/グランジ・ポップ・カラー より




