神斬髪切り屋(かみきりや) 参の巻 金剛 8.奥院 三
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛 8.奥院 三
さて、上杉謙信公の霊屋を後にした一行は、中の橋を越え歩いておりました
ついに日が暮れ、奥院の参道の石灯篭にはライトがともり、夜の時間が近づいておりました。
参道をあるくと、大木が頭の上をおおい、その切れ間の大木がない隙間から、わずかに、今まさに、空にのぼりだした
満月の光が差し込み、幻想的な雰囲気をかもしだしておりました。
さらに一行は進み
奥院の最深部、空海の御廟の霊域と俗世を分ける橋、御廟橋に差し掛かっかておりました
不意に、朱右のスマホが振動した
朱右スマホのマナーモードの、振動音が静寂の中、響いている
白狐
「ここは、弘法大師 空海の御廟前であるぞ、朱右よ、非常時でもあるまいし、ありえぬ事じゃ」
白狐は朱右に注意した
遍照金剛空海
「確かに、この御廟橋を超える場合は、携帯電話の電源をお切りいただき、それと、帽子をかぶっている場合は脱帽もお願いいたしますね」
空海が優しく朱右にフォローをいれた
朱右
「すみませんでした」
素直に謝り、携帯の電源を切る、朱右であった
遍照金剛空海
「いえいえ、初めておいでになったので、知らない事もおありでしょう、では、気をとりなおして」
と言って、空海が御廟橋に向かって歩き出し説明を語りだした
遍照金剛空海
「この橋を渡ると、弘法大師空海御廟への、霊域に入ります
先ず、橋の前で脱帽して、服装を整え、清らかな気持ちで一礼して橋をお渡りください」
遍照金剛空海
「この、御廟橋は、36枚の橋板と橋全体を一枚として37枚と数え、金剛界37尊をあらわしていると言われ、橋板の裏には仏を表す梵字が刻まれております」
遍照金剛空海
「流石に、日もくれましたので、本日は見ることができませんが、風のない日に橋の下の川面に映る、梵字が見えることがあります」
説明を聞きながら橋を渡り終えた時に白狐が御廟橋を振り返り、話を切り出した
白狐
「なるほどのぉ、橋の上を歩くだけでは、気づかぬが、俗世と霊域を分ける仏の結界じゃの、この御廟橋は」
白狐
「しかも、橋板の裏に37尊もの仏の力が隠されているとは、おそれいったのじゃ」
遍照金剛 空海
「要子殿、それは恐れ入ります」
そう言って、遍照金剛空海は、御廟橋の奥に向かって歩き出しました。
白狐と朱右もその後を歩いていきました。
階段を登り、ついた場所に灯籠堂は佇んでいました。
この、灯籠堂の裏に、遍照金剛空海の、御廟があるのですが、灯籠堂の入口は固く閉ざされていました。
遍照金剛空海はくるりと向きを変え、無言で、元来た御廟橋のほうに、戻って歩き出しました
唖然として、朱右もその後を追いかけて歩きました。
白狐は何か言いたそうな顔でしたが、無言で、その後に続きました。
御廟橋を先ほど来た時の反対向き渡り、振り返り、一同、御廟方向に深く一礼をするやいなや、白狐が、乾いた口調で話しだした。
白狐
「遍照殿、そなたの時間の感覚は、大丈夫なのか?あきらかに、灯籠堂は閉館時間を過ぎて閉まっておったぞ、
御廟の霊域は神聖な場所故、敬意を持って、黙ってここまで戻ったが、我は我慢ならぬのじゃ」
遍照金剛 空海
「朱右殿、申し訳、ございません、日が暮れて、17時30分を過ぎて灯籠堂が閉館されておりました、明日の朝には必ずご案内させていただきます」
平謝りの、遍照金剛 空海であった
朱右
「明日の朝に、灯籠堂と御廟見学、するんだ、俺」
魂がぬけたようにがっかりした顔で、何か途轍もないフラグを建てたことを、気づかない朱右でありました。
そして、遍照金剛 空海は御廟橋に背を向けて歩き出しました。
白狐
「こら、我を無視か?よい根性じゃ」
遍照金剛 空海
「本当に申し訳ございません、中の橋の駐車場に拙僧の車を止めてあります、今晩お泊りの宿坊までお送りしますのでご勘弁を・・・」
一行は中の橋の駐車場まで、ダッシュで歩き出しましたとさ、めでたしめでたし。
白狐
「めでたし、めでたし、じゃあるまい キー」
神 斬
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参の巻 金剛 9.宿坊 一に続く
 




