神斬髪切り屋(かみきりや) 参の巻 金剛 7.邂逅 一
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛 7.邂逅 一
店員さん
「光野名物絶品スイーツ ゴマ豆腐と白玉団子ミックス和三盆糖仕上げパフェでございます」
白狐
「おおっ、これが、光野名物絶品スイーツ ゴマ豆腐と白玉団子ミックス和三盆糖仕上げパフェなのじゃな30分も遍照殿と朱右の話に耐えて待ったかいがあったというものじゃ」
壇上伽藍の朱色の塔、すなわち大塔の中にある仏様
立体曼荼羅を見学、遍照金剛空海の説明を聞いた後
金剛武寺で二匹の犬を預かってもらい、やっとのことで、このカフェに
たどり着いた、稲荷要子こと、白狐でありました。
白狐
「いただきます、うーん、これは美味じゃ、甘さ控えめ、なんぼでもたべれそうじゃ」
そういって、パフェをすごい勢いでたべている白狐でした。
白狐
(痛)
きーんと頭に痛みがはしり、顔をしかめる、白狐
朱右
(やっぱり)
白狐
「霜月だということを忘れて、勢いよくたべすぎてしまったわ」
遍照金剛 空海
「そんなに慌てなくても、パフェは逃げませんよ」
白狐
「遍照殿、そなたが、三十分も待たせるからじゃ」
遍照金剛 空海
「最初から、すこし、お待ちくださいと言っておったのですがね」
朱右
(たしかに、遍照さんは、最初から、すこし、説明に時間がかかると言ってましたよね)
白狐
「我の感覚では、すこしというのは、せいぜい、十分が限界じゃ、それと、朱右そなた
先ほどから一言も話さず、我の顔を時折、見るでない、言いたい事があるなら、ちゃんと申せ」
朱右
「では、要子さん、落ち着いて、食べてください」
白狐
「わかっておる」
心のなかで、やれやれと叫ぶ、朱右であった
遍照金剛 空海
「そろそろ、落ち着いて、話をいたしましょうか」
空海が話をすすめようとする
白狐・稲荷要子
「じゃの」
遍照金剛 空海
「要子殿、朝から、朱右殿に、あなたに言われたとおり、六大の鍛錬と、物の感じ方、六根、仏の知識などをお教えいたしましたが
それらも、すべて、何か考えがあっての事であろう」
白狐・稲荷要子
「それは、ご苦労じゃったの、」
遍照金剛 空海
「昔、この、光野山を開くときに、里立の荒神との契約の時のように、また、何かの策があるのであろう」
朱右
「昔っていつ頃のことなんですか?それと、里立の荒神との契約ってなんですか?」
朱右は自分には、意味が解らない話なので思わず、質問をした
白狐・稲荷要子
「遍照殿、朱右に簡単に説明してやってくれぬかのぉ」
遍照金剛 空海
「承知いたした」
遍照金剛 空海
「その昔、拙僧がこの、光野の壇上伽藍を開くとき、
ここ、光野の南東にある荒神岳から、ただならぬ気配を感じ
荒神岳にて地鎮の法をおこなった、その時、俄かに天地振動し
東の方より黒雲たなびき異類異形の夜叉神が現れて
壇上伽藍の建立を妨げんと種々の障碍をなしければ
暫く修法を止め、汝は何者ぞと問うた。
夜叉神が答えるに、我はこれ荒神岳に住む神也、我別に神体なし
汝は則一切衆生本有倶生障の
惑貪瞋痴【人間のもつ根元的な3つの悪徳】の三毒にして
一切衆生の善根功徳を障うる神なり我に九億九万八千五百七十二神等の眷属ありて
衆生の悪業力に因って、彼の眷属を不信心の家に遣し日々に七難を起し
夜々に七福を滅して貧窮無福の人となさしめ、一切の善事を障うるなり。
若し衆生有て、勇猛精進にして種々の供具を備え
一心に我を祭らば速に本に帰し三宝荒神と現じ一切の障碍悉く消滅し
一切の諸願立所に満足せしめん、七難即滅七福即生は我第一の誓願なり
汝先我を供祭せば必ず大願成就すべしと云えり。
依て拙僧は無二の信心を凝し一枚の板に三宝荒神の御像を画きて本尊となし
一七日の間荒神供を御修法ありて、伽藍繁栄、密教守護の祈誓をなし給うて
檀上の鬼門に荒神の社を勧請あり。
而して後に大伽藍を御建立ありけるに何の障もなかりき
故に拙僧は一生の間は、毎月その頂上、里立の荒神に
お参りしなければならなくなったという訳です。」
朱右
「・・・・・・・」
白狐・稲荷要子
「遍照殿、簡単すぎて、朱右が理解できてないのじゃが」
遍照金剛 空海
「要子どの、すみませんね、簡単な説明でして」
朱右
「まあ、まあ、二人とも落ち着いて」
白狐・稲荷要子
「光野の壇上伽藍を建てる時に、南東にある荒神岳の夜叉神が怒ってきたので
我が策を授けて、夜叉神を説得して伽藍の鬼門の守り神になってもらったのじゃ
その見返りとして、遍照殿は月に一度
里立の荒神にお参りしなければならなくなったという話じゃ」
朱右
「なるほど、説明、理解できました」
白狐・稲荷要子
「ちなみに、里立の荒神こと、夜叉神の正体は火産霊神つまり、火の神じゃな」
朱右
「つまり、要子さんと遍照さんで、火の神を鎮めて、守り神になってもらったということですね」
白狐・稲荷要子
「かれこれ、1200年ほど前の話じゃ」
朱右
「ええっー1200年前!!」
びっくりして大声を出してしまった朱右にカフェにいたお客さんの視線が集まる
朱右
「さすが、光野山は1200年前に建立されたのですか」
ごまかそうとする朱右であった。
朱右
「そんな昔から、二人はお知り合いなんですか?」
遍照金剛 空海
「さらに、その少し前からの知り合いですね」
遍照金剛 空海
「知りたいですか、拙僧と要子殿の出会い、いえ邂逅を?」
朱右
「ええ、是非」
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛 7.邂逅 二に続く
 




