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神斬髪切り屋(かみきりや)  作者: 秀時周 冶志 (しゅうじしゅうじしるす)
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神斬髪切り屋(かみきりや) 参の巻 金剛  6、光野 二

 神 斬

髪 切 り屋



参の巻     金剛 7.邂逅 一



壇上伽藍の中門をくぐると、空海、いや、その名で呼ばれると

皆様が振り返るので、今は遍照と呼ばれている僧が

連れ合いの人と神に振り返るように、促した。


遍照金剛 空海

「さて、朱右殿、要子殿、後ろを振り返って門の両脇にある、像を見て何か気づきましたかな?」


朱右

「中門の正面にも、像がありましたよね、門の裏側にもあるのは珍しいですね」


白狐・稲荷要子

「朱右よ、さらに、表の像と、裏の像では、色が違ったのぉ、さしずめ、造られた年代が違うのであろう、遍照殿そうであろうか?」


遍照金剛 空海

「さすがは、要子殿、御察しのとおりです」


遍照金剛 空海

「表の像は、天保14(1843)年の火災による焼失をまぬがれた、黒を基調とした、持国天と多聞天の二天王像、

 そして裏の像は、現在に制作され、広目天像は胸元に、蝉のブローチ、増長天像は胸元に、とんぼのブローチをつけています。」


朱右

「本当だ、オシャレな、像ですね、持国天・広目天・増長天・多聞天ってことは、この中門に四方に配置されてる像は四天王ですか?」


遍照金剛 空海

「さすが、朱右殿、なかなかの、博識ですね」


朱右

「実は、この前、要子さんと、四天王について、話をしておりまして・・・要子さんは、仏様の専門外だと言うので

 今度、友達の仏様の専門家に会いに行くといってました、その時に質問してみてわと言われておりました」


朱右

「要子さん、友達の仏様の専門家って、遍照さんのことですよね?」


要子

「いわずもがなじゃな」


遍照金剛 空海

「なるほど」


朱右

「その時の質問を、遍照さんに聞いてもよろしいでしょうか?」


遍照金剛 空海

「いいですよ」


朱右

「では、ずばり、聞きます、四天王のなかで最弱は、誰なんですか?」


空海は少しだけ、意外な顔をして答えた


遍照金剛 空海

「これは、予想外な質問でした、答えになるかは、解りませんが、仏様についての知識のお話をするのが一番

 答えに近づけると思います」


遍照金剛 空海

「丁度、私がお話したかったことが、仏様の知識でしたので、詳しくは、あちらのお堂でお話いたしましょう」


そう言うと、空海は、中門の正面にある、お堂に向かって歩きだした

空海の後を白と黒の二匹の犬が追いかけた、それにつられて、朱右と白髪の女性が後に続いた。

お堂の前に、白と黒の犬は礼儀正しく、座っていた。

空海は、お堂の入口でこちらを見ている。


遍照金剛 空海

「ささっ、お二方、お堂の中にお入りください」


朱右と白狐は、うながされるまま、お堂に入った。


ここは、光野山 壇上伽藍にある、金堂

本尊ほんぞんの扉は閉じられている。

その扉の左右に、仏様の描かれた、二枚の絵図が飾られている。


朱右と白狐はお賽銭を入れ、本尊の前で手を合わせた


遍照金剛 空海

「さて、朱右殿、目の前にある、二枚の絵図を見たことがありますか?」


朱右

「見たことはありますが、えーと、なんて言うんでしたっけ?」


遍照金剛 空海

「この絵図は、曼荼羅(まんだら)と申しまして。正面に向かって、右に掛けられているのが胎蔵界曼荼羅(たいだいかいまんだら)

 左に掛けられているのが金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)です」


遍照金剛 空海

「この二枚の曼荼羅をあわせて、両界曼荼羅(りょうかいまんだら)または、両部曼荼羅(りょうぶまんだら)と呼びます」


朱右

「今朝、都比売(みやこひめ)神社の鳥居の説明で聞いたお話しにも、両部という言葉がでてきましたが?」


遍照金剛 空海

「そうです、胎蔵界、金剛界を合わて金胎両部と言います、もともと密教(みっきょう)用語ですので

 仏と神が合わさった、神仏習合(しんぶつしゅうごう)の社の鳥居の名称として両部という言葉を使うのです」

 

遍照金剛 空海

「さて、本題の仏の説明をさせていただきます

 我らが宗派、真言密教(しんごんみっきょう)を説明する時

 仏の世界をイメージしやすくするために、曼荼羅(まんだら)は描かれております」


遍照金剛 空海

「朱右殿、右に掛けられている、胎蔵界曼荼羅を見てもらえるでしょうか」


朱右は空海に言われたとおりに、胎蔵界曼荼羅を見た


遍照金剛 空海

「朱右殿、胎蔵界曼荼羅は、真言密教の経典(きょうてん)の一つ大日経(だいにちきょう)の世界観

 すなわち真理(しんり)を解りやすくするため、仏の配置をもって、描き示した図でございます」


遍照金剛 空海

「中心に描かれている仏が、真言密教の中心の仏、大日如来(だいにちにょらい)

 その周り、(はす)の華よう見える、中台八葉院に配置されている

 悟りし仏、如来(にょらい)、悟り求める仏 菩薩(ぼさつ)がそれぞれ四仏づつ描かれています」


遍照金剛 空海

「朱右殿、胎蔵界曼荼羅の、一番外側の枠を見ていただけるでしょうか」


朱右は、胎蔵界曼荼羅の外側に目をうつした


遍照金剛 空海

「胎蔵界曼荼羅は、図の上側を東西南北の東とし、下側を西、右側を南、左側を北としております

 一番外側の枠、外金剛院(げこんごういん)に先ほどのお話に出てきた、四天王も描かれております」


遍照金剛 空海

「東を守る持国天(じこくてん) 西を守る広目天(こうもくてん)

 南を守る増長天(ぞうちょうてん) 北を守る多聞天(たもんてん)

 多聞天とは意訳で音訳で言う毘沙門天(びしゃもんてん)


空海は、それぞれの仏を指さして説明した


朱右

(昨日の夜になんか聞いたような話だな)


朱右は心の中で思い、隣にいる白狐のほうをチラッとみた

白狐は、その仕草に気づいたのか、なんとなく、朱右には白狐がどや顔をしているように見えた


遍照金剛 空海

「そして、インドラこと帝釈天(たいしゃくてん)を中心に仏の世界を守っている様を描き表したのが

 一番外側の枠、外金剛院(げこんごういん)という訳です」


遍照金剛 空海

「胎蔵界曼荼羅は、仏の役割を配置して解りやすくして示した図であります、なので仏には強さというよりは

 それぞれに役割があるのです」


遍照金剛 空海

「なので、先ほど朱右殿が質問なされた、仏様の強さという概念が拙僧には、無かったゆえ、困惑したといいましょうか、

 拙僧が予想外な質問と申しましたのは、そういう理由からでございます」


朱右

「なるほど、すごく、勉強になりました」


朱右は、お辞儀した


遍照金剛 空海

「さて、左側の、金剛界曼荼羅についても、詳しく説明したいところではありますが

 稲荷要子さんが、光野名物絶品スイーツ ゴマ豆腐と白玉団子ミックス和三盆糖(わさんぼんとう)仕上げパフェは

 いつ食べれるのかって顔をしてますので、すごく簡単に説明します」


遍照金剛 空海

「金剛界曼荼羅は、金剛頂経こんごうちょうぎょう)を、元にして、仏に至る道しるべを図に描いたものです、簡単に言うと成仏の仕方を表したものです」


朱右

「えぇぇっ、成仏って、死ぬって意味ですよね」


朱右は驚いて、言った


遍照金剛 空海

「成仏とは、本来、死ぬという意味ではなくて、煩悩(ぼんのう)解脱(げだつ)して、悟りを開くという意味なのです」


白狐・稲荷要子

「朱右、そなたも、明日には、悟りを開いて仏になるはずじゃ、いや、成仏しているかものぉ」


朱右

「要子さん、縁起でもないこといわないでくださいよ」

朱右は焦って言った


遍照金剛 空海

「では、最後に雑学ですが、ここに、掛かっている曼荼羅はレプリカですが、ある有名な歴史上の人物が

 朱色の絵の具に、己の血を混ぜて描かせたので、血曼荼羅と呼ばれております」


朱右

「血曼荼羅って、あの平清盛が奉納したっていう物ですよね」


遍照金剛 空海

「おお、さすがは朱右殿、よくご存じで、では、ここでのお話はこれにて、次に行きましょうか」


そう言うと、空海はお堂の外に向かって歩きだした

外で待っていた、二匹の犬も空海の後を追って歩きだした

朱右と白狐は空海に追いつくように、歩いている。


朱右

「しかし、さっき見た、胎蔵界曼荼羅の右中ほどに描かれていた、青い仏様が、すごくかっこよくて気に入りました、不思議な感覚ですが、何か懐かしく思えました」


朱右が唐突に言った


遍照金剛 空海

「そうですか、その仏様は、蔵王権現(ざおうごんげん)といいまして、

 仏が生まれた、インドラ国で生まれた仏様ではなくて、我が国で生まれた日出国(ひいずるくに)独自の仏様ですよ」


遍照金剛 空海

(やはり、この御仁は・・・)


空海は心の中で思った


遍照金剛 空海

「大和国の吉乃山(よしのやま)金峰山寺(きんぷさんでら)に、大きな、蔵王権現様が祀られているので

 よかったら、今度、見に行きましょうか?」


朱右

「吉乃山だったら、ここ、光野山(こうややま)から近いですよね、是非お願いします」


遍照金剛 空海

「その前に、ここ、光野山、壇上伽藍(だんじょうがらん)の仏様を見ていきましょうか」


そう言うと、空海は大きな、朱色の塔の前に歩いて行った、朱右もその後に続いた


白狐・稲荷要子

(やれやれ、我は、光野名物絶品スイーツ ゴマ豆腐と白玉団子ミックス和三盆糖(わさんぼんとう)仕上げパフェをいつになったらたべれるのやら)


 神 斬

髪 切 り屋

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