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第三話 手に入れた日常 3

教室を出た唯人は購買へ向かいつつ小さくため息をつく。

昼休みも終わりに近づき、食事を終えた生徒達が行きかう廊下でそのため息に気付く者はいない。


先の一件は唯人にとって非常に心臓に悪い出来事であった。

それは異常さを指摘されたことそのものではない。


彼を最も驚かせたことは風香の質問に対し自身の名前を告げたとき『アウト』を宣告されたことだ。


多くの人が自身の名前をアウトと宣告されれば多少の動揺はあるだろう。

しかし唯人の動揺はそれとは別種のものであった。


風香の言うアウトとは『唯人』という名前が普通ではないと言う意味であり玲奈もそう理解したようだが、唯人は、『質問に対して嘘をついた』という意味でのアウトと受け取ったのだ。


嘘をついたことを指摘されて動揺した、つまりは『唯人』と言う名は『嘘』であり『相澤唯人』という存在そのものが偽りである、ということである。


(本当に、本当に油断ならないな…風香は)


今日何度目かの風香に対する評価を思い巡らせる。


(とはいえ今回はこっちが勝手に勘違いして動揺しただけか…。初めて話した時もつまらないミスでいらん嘘をつく羽目になったわけだし、結局自業自得か。)



――――約一年半前――――


相澤唯人はこの世に『誕生』した。


海外で仕事をする両親を持ち、今までその両親とともに海外で暮らしていたが十五歳のとき、両親の離婚&再婚を期にその二人の母国である日本で一人暮らしをすることを決め、高校に通いだした。


――という『設定』であるため記録上はその更に十五年ほど前に誕生しているのであるが。



日本と言う国は不便な国だ。

正確に言えば未成年にとっては不便な国である。


何をするにも、親の承諾、あるいは保護者の承諾が必要であり身寄りのないどころかまともな国籍もない未成年では暮らしてはいけない。


『彼』には望みがあった。正確には約束と言った方がいいのかもしれないが『彼』自身も望んだことであったし夢と言ってもいいのかもしれない。


それは普通の人間として暮らすこと。

日本という国を選んだのはその約束の相手が日本人であったからで、『彼』を生み出したもの達が日本人であったことは関係ない。


やや話がそれたが前述の理由で日本で普通の暮らしをする以上国籍が必要な『彼』だったが過去の伝で簡単に国籍、住居、果ては保護者までも手に入れることができた。


日本と言う国はアメリカを始めとする諸外国と比べそういったことは難しいとされるが、なぜこんなことができたのか。


簡単に言ってしまえば、

・日本において『彼』のことを知っている人間は少ない。

・『彼』のことを知っている人間は『そういった』ことができるものたちである。

・『彼』を知る人間で彼の願いを聞き入れないものはほとんどいない。

以上の理由でこのような芸当ができた、といったところだ。



保護者『役』の人間に倣い苗字を『相澤』とし、名を『彼ら』の願い、そして『彼』にとっての真なる名から『唯人』とつけ『相沢唯人』という人間が誕生するに至った。


唯人は普通の生活を望んでいる。

では、日本において十五歳の普通とはどういったものか。


ほとんどの者が中学を卒業し、高校へ進学、あるいは就職するが事情がない限りは進学する者が多いと言ってよい。


多数派=普通


彼は高校へ行くことを決めた。

だいぶ間が空いてしまいました。

三月は忙しくて大変ですね。

まとまった時間が取れないので短く刻んでいくことになるかもしれません。


今回は『相澤唯人誕生秘話』です。

『彼』とは、イッタイナニモノナンダー(棒

彼の正体を明記するのは大分先になると思いますが、この手の話にありがちなアレです。

といっても登場人物にはそんなことわかりませんので内緒ですよ!?


次回は風香&玲奈との出会いの予定です。

長さ次第では新キャラ登場まで行くかもです。

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