05 前編
昨日、旅行から帰宅しました。
更新が遅くなりすみません。そして今回短いです。代わりに次回が長くなる予定。
これからはあまり日を空けずに更新していけたら、と思います。
その日の夜の恒例通話にて。
『洋楽とかボカロとか東方とか、マニアックなのも選曲しちゃっていい?』
「むしろ私と選曲被るから早い者勝ちだ」
『旦那さんが好きな曲歌ってたら乱入しても?』
「大声勝負ならいつでも受けて立つ」
『ステキ! 抱いて!』
「おっとこれ以上はCEROの基準に引っ掛かる」
『夫婦の営みがCEROに規制されただと……!』
カラオケの話題が出てから、嫁のテンションは鰻登りだった。
彼も私も音楽の趣味が同年代に比べると特殊である。今までカラオケに行っても、周囲にあわせて選曲を選ぶだけで、自分達の好きな曲を思う存分歌ったことがなかったのだ。
昔からお互いの趣味が合うたび、一緒に出掛けられたら楽しいのにと話していた私たち。
こうしてリアルで会えたのだから、一度くらいは私も彼と遊びたいと思っていた。
だからこそ、彼の提案に乗ったのだ。
『早く週末来ないかな~』
「遊園地に行くのを指折り数える子供のようだぞ。そんなに楽しみなのかい坊や?」
『すっごい楽しみ! ボカロのデュエット曲を歌える日が来るなんて夢みたいだから!!』
「よーし、お前サンドリヨンでミクパートな」
『前奏から殺す気!?』
いつも通りの軽快な茶番を繰り広げながらも、私は内心焦っていた。
さて、どうしたものか……。
勢いで嫁とのカラオケを決めてしまったものの、私には一つの問題が浮上してしまった。
それは、当日の服装。
たかが遊びにいくだけじゃないか。おっしゃる通りです。
でもね、あいつイケメンなの。無駄に顔が整っていらっしゃるの。腹が立つほどにね。人生って不平等!
「嫁さんの普段着は可愛い系ですか? 綺麗系ですか?」
『その質問は、まず性別という前提が間違っています』
「俺の嫁さんにケチつけるとは、お前何様だ?」
『嫁様だ』
「ナ、ナンダッテー!?」
『棒読みワロタ。期待してるところ悪いけど、普通の格好で行かせてもらいます』
「裸エプロンは?」
『俺を変質者にするつもりですか……』
さりげないリサーチも失敗。
普通ってなんだよ。普通が一番わかりづらいんだよ!!
これはもう、あれか? 私がいっそ女を捨てて男装に走るか。それしかあるまい。
『旦那さんもウケ狙いで無理にパンク系とか、シークレットブーツ履いて俺より身長高くしようとか考えないように』
「ひとの趣味にいちゃもんつけようってのか?」
『今まで散々俺に女の子キャラの好み語っておいて、趣味とかありえないわー。学校での旦那さんを見る限り、濃い服装は絶対にない』
完璧にバレてらあ。
くそう、こうなったら奥の手を使う他あるまい!
私はスカイプ画面を見て、目的の人物がオンラインなのを確認した。
「失礼。弟と狩りの約束があるから、そろそろ落ちるわ」
『手伝おうか?』
「うんにゃ。オトモのスキル調整だから二人でやるよ」
『なるほど、了解。じゃあ頑張ってね~』
「悪いな、おつかれさん」
『おつかれ、また明日!』
通話を終えて、無意識にため息が漏れる。
すまん、嫁よ。弟はすでに夢の中だ。
内心で謝りつつ、今度は別の人物へとチャットで話しかけた。
11/18 一部改稿