正しいRPGに大切なもの。2
懲りずにまた書いてしまった。
後悔はしていない。
短いですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。
「いってらっしゃい、旅人さん」
「貴方の無事を祈っていますわ」
今日も僕たちは城門から旅人達を見送る。
僕が門の右側。そして左側が彼女。
それがずっと変わらない僕たちのスタイルだ。
旅人たちが知っているかどうかは知らないが、僕たちの仕事は町に旅人がいる時だけ。
必然、町に旅人がいなくなれば、僕たちは休憩がてら雑談を始める。
「それでさっきの話だけどさ」
そう僕が切り出すと、彼女はうん、と答える。
「確かにゲームの中の世界って魅力よね。こう、魔法でドカーンみたいな」
身じろぎもしないまま彼女が楽しそうに告げる。
「あー、君は魔法職だもんなぁ。僕は戦士系だからそこら辺は地味かも」
一応、ゲームではかなりの高レベルを誇っているが、僕のジョブに派手な演出の技は少なかった。
「あー、確かに私のと違って質実剛健みたいなキャラだもんねぇ」
「ジョブを選んだ時はアイアムサムライ! って感じだったんだよ」
僕が項垂れながら告げると、彼女は納得したように笑う。
「ははっ、確かに君は最初そんな感じだったよね」
その時の判断を今更後悔するとは思わなかった。
「でもまぁ、今はキャラにも愛着あるからいいんだけどさ」
「そうそう、それに強いんだからいいじゃない」
そういって彼女は再び笑う。
今日は笑われてばかりな気がする。
「うーん、なんか釈然と……あ、また旅人来た!」
「あの装備は新人さんかな?」
「あー、ぽいね。じゃあ気合入れてお見送りしようか」
「ほいほーい」
そうして僕たちは再び旅人たちを見送る。
「いってらっしゃい、旅人さん」
「貴方の無事を祈っていますわ」
そうして彼らがいなくなったのを見計らって僕は告げた。
「今日の狩りどこに行く?」
彼女が答える。
「うーん、ミュロンドまで五時間耐久で。もちろん寝オチ禁止」
「うへ、まじかー。ならポーション買ってくるわ」
「ういうい。いてらー」
そうして僕は店へと歩き出す。
え、僕たちが何者かって?
ただのヒマなプレイヤーさ。
NPCじゃないのかって? 何を勘違いしてるんだ。
僕たちはれっきとした普通のプレイヤーだよ。
このオンラインゲームの一ユーザーさ。
さっきの挨拶は何か?
ああ、あれは僕たちの日課のNPCごっこさ。
もういいかい? ならこれで失礼するよ。相棒を待たせてるからね。
ちなみにこのNPCごっこは実体験だったりします。
地味な戦士職を選んだのも実話さ!
当時は色々やったなぁ。
あ、今回の『大切なもの』は『遊び心』という事でどうっすか。