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042●あの人の名

このままでは、全滅だ。民族の対立は根深い。人種や宗教の相違を、どうしても乗り越えられないとは。これも神のご意思なのか。人はなぜ殺し合わなければならぬのか。いや、考えている場合ではない。少しでも歩みを進めなければ。あの谷を越えて隣国に入りさえすれば、流石に追ってこれまい。


国境が閉じられている。一番大きな街道の門、谷の狭間、開けてくれ!たくさんの子どもたちがいるんだ!儂らはいいから!頼む!!


門は閉じたままにせよ。我が国に流民を受け入れるだけの余力はない。かわいそうだが、ここは情に流されてはならん。心を強くもて。王のご命令、我が国民が第一だ。矢をつがえよ。門に取り付くものは射る!


もう、だめだ。・・・何?大きく山を迂回したところで、小さな側道の関所は開いているのか?本当に?いや、真偽を確かめている時間はない。死力を振り絞って、行くしかない。


涙がこぼれ落ちる。ありがとう。あなたの恩はわすれない。通行証をくれた。ちゃんと名前が書かれている。あの人はずっと立ったままなのか。どれだけの間、書き続けているのだろう。あの人は大丈夫なのか?体力的な問題だけではない。いや、今は、ともかく生き延びねば。


随分と年月が流れた。遠いこの地で、我々は暮らしを営んでいる。子々孫々まで伝えよ。あの方のなされたことを。また、我々は、他者を害してはならないことを。同じ轍を踏まぬよう。盗んではならぬ。殺してはならぬ。他人のものを欲してはならぬ。未来に、もし、同じことが起きるのを避けられないのであれば、我が子孫が、あの人のように多くの人々を救いますように。伝えよ、あの人の名を。


・・・わたしの出番はなかったな。門を破壊することはたやすいけれど、やはり、誰かを傷つけてしまうかもしれないし。ココアのサポートに、アークエンジェルズが駆けつけている。マイロードから各世界線を一時的に任されたけれど、ここはこれでいいかな?しかし、経験からのみで、歴史から学ばないのは、どの人類も同じなのか。13番目のわたしとしては、専門外だけど。


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