いい加減に
桜も散り、木々には青葉がつき始める頃、母と大河が再婚して、三ヶ月の月日が経つ
「おはようございます」
毎朝、母の作った朝食を食べる大河の姿はもう慣れたものだ、今日は珍しく結城が私より早く起きている、そして朝食は珍しく和食の朝食が並んでいる
「珍しいですね、お母さん和食なんて 」
「私が作ったんじゃないのよ、今日は結城くんが作ってくれたの」
「折神くんが、ですか珍しく早起きしたと思えば、なぜ急に」
結城は、目の下にクマを作り、不機嫌そうに、洗い物をしている
「親父から深夜叩き起された、朝食の魚を釣りに、起こされた」
「大河さん、なぜ急に」
「今日は、私が仕事も休みで結城も学校休みだから、結城少し味が濃いぞ味噌汁」
不機嫌そうに大河の味噌汁に水道水を流し入れる
「深夜の二時に叩き起す、奴がどこにいる」
大河を睨みつける、久しぶりにこんなに怒っている結城を見る
「そんなに怒んなよ、今度は結奈さん一緒にどうですか」
「釣りですか、楽しそうですね、今度ぜひ」
そんな話をしていると、母が少し考え込んで、口を開く
「結奈ちゃん、私たちが再婚して、もう三ヶ月経つのに、未だに折神くんて呼ぶの?、いい加減、結城くんて、呼んでみたら」
母のその発言を聞き、少し照れる、結城のことを名前で呼ぶとなると、やはり抵抗がある
「大河さんにだって、お義父さんて、呼んであげあたら」
「大河さんもですか、少し恥ずかしいです」
「あら、でもお義父さんになったのよ、やっぱりお義父さんて呼んであげて欲しいな」
母は言い出すと、頑固として譲らない節がある、大河をお義父さんと呼ぶのはともかく、結城を名前で呼ぶのは、
「…お、お義父さん」
私は照れながら、大河をお義父さん呼びする、その姿を見て、大河は、微笑みながら返事をする
「はい、やっと呼んでくれましたね、結奈さん」
大河の反応を見て、私は少しホッとする、やっと家族として、1歩前進できた気がする、だが次は、結城のことを、名前で呼ばねば、ならない、私が悩んでいると、それを察してか、大河が結城に何かを耳打ちする
「結城、お前が結奈ちゃんて呼んだら、いいんじゃないのか」
「ごめんこうむ」
「なんで、いつまでも、会長じゃちょっとなぁ、家族なんだし」
「今更、 会長のこと名前で呼べるわけないだろ、恥ずかしい」
「折神くん、無理しないでください、私も折神くんを、名前で呼ぶのは、少し照れるので」
大河はその光景を見て少し、呆れる大河は内心ではまだ結城は2人を家族として見ていないのではないかと、思っている
「結城お前、兄妹なんだぞ、いい加減、結奈て呼べよな、何を恥ずかしがってんだよ」
「だって、急に会長のこと、名前で呼ぶの少し抵抗あるし、俺はそこまで馴染むの早くないし」
「3ヶ月経ってるから、いい加減馴染め、結奈さんも、いつまでも結城を苗字で呼ぶのをやめなさい、君だって折神なんだから」
「わかったよ、呼べばいいんでしょ呼べば、会長、こっち向いて」
結城が改まって、言うものだから、少し照れながら顔をむける、少しか顔を赤らめながら、結城が口を開ける
「結奈」
なぜか、いつも家族や友人たちに名前で呼ばれても、何も無いのに、結城に面と向かって、名前を呼ばれると、なぜだか顔が赤くなり鼓動も早くなる
「結奈さん、照れてますか?、顔赤いですよ」
大河が言っている言葉も聞こえず顔を真っ赤にして照れ続ける、すると結城が近づいてきて、デコに触れる
「結奈、熱か?熱いぞ」
いつにもなく、真っ直ぐな目をして見てくる、結城にさらに顔が熱くなる
「き…気にしないでください、祈神くん、なんでもないです」
私はカタコトになりながら、立ち去ろうとする、すると結城が私の手を掴んで、引き止めてくる
「待てよ、俺も名前で呼んだ、結奈も呼んでもらおうか、逃がさないぞ」
「わ…私も呼ぶんですか、待ってください、まだ心の準備がそれに恥ずかしいですし」
「恥ずかしいなど、知らない、俺だって恥ずかしい気持ちで、結奈と呼んでんだ」
さっきまで嫌だと言っていた癖に吹っ切れて様子で、私の名前を連呼してくる、そんな様子を見ながら、お義父さんとお母さんはニヤニヤしながら見守っている、今この場において、私の味方は一人もいない四面楚歌だ、いい加減、心を決めて言わねばならないのかもしれない、結城とは家族でこれからも一緒にいるのだから、いつまでも祈神くん、と呼ぶ訳にもいかないようだ、仕方がない、結城の手をどかし目を合わせる、よく見ると結城の目は綺麗な目をしている、初めてだ結城と目を合わせるのは
「わ…かりました、呼びますよ、祈神くん、ならよく聞いてください」
私は深く深呼吸をする、そして少し照れながら名前を呼ぶ
「結城くん」
それを聞いて、結城の顔が赤くなる、そしてそれよりも赤く私の顔もなる
「な…なんかすごく恥ずかしい、結奈に名前呼ばれるの」
「私だってそうです、結城くんを名前で呼ぶのなんて、恥ずかしぎて、顔から火が出そうです 」
その会話を聴きながら、大河が大笑いを始める
「なんで名前呼ぶぐらいで照れてんの、可愛いな2人とも、これでやっと兄妹としての自覚出てきたな、改めてよろしくお願いしますね、結奈さん」
私は少し微笑みながら返事をする、今までの心のモヤモヤが晴れた気がした、やっと大河と結城の家族になれたのだから