そんなことってあるのかよ
「またサボってる」
2階の廊下の窓から中庭を見ると、1人の男子生徒がベンチで両耳にイヤホンをつけて寝そべっている、彼は学校1の問題児の不良、折神結城、制服は着崩し、校則違反のピアスをいくつも開けている、私は生徒会長として彼の素行を直そうと何度も注意してはいるが、直す気配がまるでない
「折神くん、何度言えばわかるの、学校にピアスをつけて来ないでください、それに君は今、校内謹慎中でしょ、なんでこんなとこに居るんですか」
「また、あんたかよ俺がどこに居ようが、あんたに関係ないだろ、てかなんで俺の謹慎を把握してんだあんたはストーカーか」
「なんですか、その態度あなたを心配して言ってあげてるのに、だいたいあなたの謹慎を把握してるのも、先生方から聞きました、私生徒会長なので、さぁ早く教室に行ってください、行かないのなら、謹慎期間を延ばします」
「わかったよ、行けばいいんだろ行けば」
彼は悪態をつきながらその場を後にする、その日の放課後、母親に頼まれた物を隣町のスーパーで買い物途中、見慣れた顔の男がスーパーの制服を着て接客をしていた、その男は間違いなく折神結城本人だ
「折神くん、なぜバイトをしているんですか?、うちの高校は原則バイト禁止ですよ」
折神は驚きながら振り向き、嫌味な顔をする
「なんで、あんたが居るんだよ、そんな事より、俺はバイトの許可だけは貰ってる、生徒会長の癖にそんな事も把握してねぇのかよ」
「君は今、謹慎中の身、謹慎中はバイトが禁止されます、このことは学校に報告します」
私がその場を去ろうとすると急いで手を掴んでくる
「待ってくれ、今バイトを辞めさせられると困るんだ、頼む学校には黙っておいてくれ、頼む」
その光景を見て私は驚愕する、折神が自身から頭を下げ許しをこう姿を
「訳ありですか、理由によっては考えなくもないです」
「わかった、理由を話す、けどバイトが終わってからでもいいか?、あと少しで終わるから」
「わかりました、では近くの公園で待っているので必ず来てください」
少しの間待っていると、見慣れた格好をした、折神が近ずいて来る
「待たせたな、会長」
「来ましたか、なら話してもらいましょうか、あなたが、私に頭を下げてまで、バイトを続けたい訳を」
「わかった」
折神の顔は何時に無く真面目で真剣な顔をしている
「俺の親父が、来月再婚するだよ、ガキの時母さんを亡くして、男手1人で俺のことを育ててくれた、だから、親父に恩返しを新婚旅行をプレゼントしてやろうとおもってよ、けど後少し金が足りなくて、今月分の給料でやっと足りるんだ、だから頼む会長、バツなら受けるだから今月だけど、黙っててもらえないか、この通りだ」
再び頭を下げる折神の姿を見て私は心が揺らぐ
「そんな理由が、条件次第ではあなたの願いを聞いてあげてもいいですよ」
「条件…いいぜなんでも、言ってくれどんな無理難題でも引き受けるぜ」
「ではその条件とは、1ヶ月他の生徒の模範となる、生徒になってください」
「生徒の模範、そんなでいいのか?」
「はい、まずは毎日学校に来てください」
「ありがとう、会長、恩に着る」
次の日、学校に着くと、教室の前で人集りができている、何事かと行くと、そこには、昨日まで金髪で服も着崩していた、折神が、髪は金から黒に染め直し、制服もきちんと着ている姿に皆、驚愕して教室に集まっている、その人集りをかき分け教室に、私は入っていき、折神に話しかける
「おはよ、折神くん、初めてですね、貴方が遅刻しないで学校来るのは、いつもは遅刻ギリギリなのに」
「約束したからな、約束は守る」
「あと1ヶ月頑張ってください、それはそうと、昨日あなたのお父様が再婚なさると言っていましたが、奇遇ですね、私の母もです」
「そんな奇遇もあるもんだな」
「今夜、初めての顔合わせの日です、お母さんには、迷惑ばかりかけていたので、幸せになってほしいです」
「俺もだ、親父には、幸せになってほしい」
その日の放課後、早々と帰り母の新しい結婚相手との初顔合わせのため近くのレストランへ行く
「結奈ちゃん緊張してる?」
「緊張してますとも、私の新しいお父さんになるんですよ」
「そんなに緊張しないで、新しいパパはとてもかっこよくて優しい人よ」
母の言葉が緊張で全く頭に入ってこず、カチカチになりながら、席につく、数分が経ち、スーツに身を包んだ、男性がこちらに歩いてくる、その人は私達の席に立ち止まり挨拶をする
「お待たせしてしまいました、初めまして結奈さん、私が君のお母さんと結婚する、大河と言います、よろしくお願いします」
「は…初めまして、結奈と言います」
「そんなに緊張しないでください、私たちは家族になるんですから」
「は…はい」
「結奈さんは、恒星高校に在籍しているんですよね、生徒会長だとか」
「はい、そうです」
「奇遇ですね、私の息子も恒星高校なんですよ、しかも結奈さんとは同い年で、もしかしたら同じクラスかもですね」
それを聞いて少し驚く、同じ学校で同い年そしてこのタイミングで父親が再婚、私の脳内にはある1つの仮説が浮かびそしてその仮説は確信に変わる
「ご紹介しますね、私の息子の結城です」
結城と顔を2人で向かい合わせ2人ともなにか言いたげな顔をするが、言葉に出さず、崩れ落ちる
「まさか、会長が」
「まさか、折神くんが」
「兄妹!!」