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ベスドーアの鍵

「これが『ベスドーアの鍵』だ」


ゴゥラスは短杖(ワンド)を使って浮遊させ、オイラ達に鳥と蛇の装飾がされた黄金の鍵を渡してきた。

短剣みたいに結構大きな物で、オイラとティティは2人の掌でそれを受け取った。


「しっかり補修するのに30年掛かった。ロンダのヤツが生きてるウチに見せてやりたかったが、せっかちなヤツだったよ」


「コレ持ってりゃ森の宿の主になれるのか?」


「宿に認められればな。だが、大丈夫だろう。きっとな・・一応初孫のミィルスも連れてゆけ。魔法の才能のある子だが、どういうワケか錬金術師ではなく人形使いになるつもりのようであるがな」


「味方は心強いです。それに、最近のダンジョン攻略ではリスクを減らす為に積極的に人形使いのゴーレムを多用するのが一般的何ですよ?」


人から聞いて本や資料で読んだ知識だけで現場を知ってる風に言うティティにゴゥラスは薄く苦笑をしたが、特に怒る風でもなかった。


「時代によって流行りはある。私の頃は錬金術による積極的な魔法道具の製造、投入が効率的とされたもんさ。ま、そこはいい。今のやり方を今の時代の者がやればいいんだ」


「ですねっ、ふふん」


「とにかく任せとけよ! ゴゥラス爺さんっ」


オイラ達はそんな感じで、宿の主の証! ベスドーアの鍵を爺さんからもらったんだ。



・・宿の周りでの素材収集で、野外でマナ何かが強い素材に触りまくるのに慣れてないティティがマナに当てられて酔ったみたいになってノビちまった。


火には慣れてるヒポグリフの近くで焚き火をして鎮静薬を作って飲ませて寝かし、額に冷気素材の『アイスジェムの欠片』を仕込んだ氷嚢(牛のキ〇タマ袋を加工したヤツ)を当てておくことにした。


「うう~、レンダ兄さんごめん。まさか薬草摘みもできないとは・・」


「まぁ素材収集で酔うのは普通の土地でも珍しくないかんな。休んどけ、後はオイラがやっとく。さてと」


オイラはメモ帳で素材リストを確認する。


「取り敢えずいるのは、+1評価以上の輝き草、輝きの根、輝きの枝、輝きの若葉、輝きの茎、輝きの実、輝きの花、輝きの雫・・『輝き』多いぞっ??」


「レンダ、そないに魔力強うないのにマナやキツい薬効に耐性あんねんな」


暫く他のピクシー達のとこに行ってたマリユッカが急に戻ってきた。コイツ、何か花束みたいな匂いする。


「お? 何だ、飽きたからどっかいったかと思ったぜ」


「別に暇潰しとちゃうわ」


「じゃなんだよ?? ・・ま、耐性は、オイラはティティの行商手伝う前は野外で素材採集とか乗用獣(じょうようじゅう)の牧場の仕事してたのさ」


「さよか~、どうりであんたの職能の鑑定はボヤける感じがすると思ったわ」


「ボヤけてないしっ。いいけどさ」


暇そうなのに構ってられん。1人作業になったオイラはこの数時間で何となく把握できてきた宿周辺の安全圏の素材を素早く回収しだした。


「何や、急にちゃちゃっと動くやん?」


普通にオイラの速さに付いてくるマリユッカ。


「ティティに合わせて手加減してたんだ。まぁ2人作業なら夕方までにノルマ達成できそうだったけど」


「ほぇ~」


「・・・」


「・・・」


「・・おい、ずっと付いて来るの地味に気が散るっ。マジで暇ならティティの看病でもしてくれよっ?」


「そんなヒドないし、処置済みやし。それよりいつになったら『宿の鍵』を出すんや? いや、あんたが持っとるのは気配でわかんねんけど、段取りあるやん?」


宿の鍵? ベスドーアの鍵か。


「ああ、アレか」


オイラは速駆(はやが)けしてた脚を止めた。


「そう言えば宿に認められれば、とかゴゥラス爺さんが言ってたな」


「そやろ? 普通、最初に宿守に見せるやん?」


「いや、お前が素材集めろとかハリセンでシバいてくるからだろ?」


「そういう流れやったやん」


「どんな流れだよっ。たく、コレだな」


オイラは収納ポーチからベスドーアの鍵を取り出し、差し出した。


「ふぅん? さすがゴゥラス! あんだけ傷んどったのにちょっと強化して直しとるっ。執念深い性格やでホンマっ!」


念力で鍵を浮かせるとそれを中心に宙に魔法陣を展開させるマリユッカ。


「おっ? 何だ??」


「・・足り得る資質、『ベスドーアの砦』の主として承認する」


別人みたいな感情の無い声になって宣言するマリユッカ。砦?

だけどすぐに魔法陣を解いて元の調子に戻った。


「ふぅ~っ、認証完了や! でもこの鍵、『持ち主は2人』ちゅう仕様になっとる。先に決め込んで加工されてもない。最初に手にしたあんたら兄弟の認識やな」


「そりゃそうだろ? 2人で引き受けたんだから」


「なる程~、そういうタイプ何や~、ふ~ん」


凄い勝手にオイラの人格を断定されてる感じ。


「とにかく、その鍵は今はオイラ達のもんだ。これで証明になったろ?」


「そやなー」


マリユッカは念力で鍵を俺に返した。


「でも、ふぁ~っと認証してもうたから、もっかい4人宿の前に集まって登場する所からやり直してええか?『神秘的な妖精少女』としてデビューしたいねん」


「知らんっ。お前が段取り飛ばして進行したんだろ? ゼルアンと初孫には後で『済んだ』って言いえばいいしっ。というかオイラは急ぐかんな?」


オイラは鍵を収納ポーチにしまって速駆けで採集作業に戻った。


「ちょおさ~、レンダさぁ~、ウチも宿守初めてやねんからさぁ、段取りとかミスるやん?」


絡まれたけど、夕方にはどうにかオイラ達のノルマ分は採集が済み、それぞれどっさり素材を集めて戻ってきたゼルアンと初孫とも合流できた。よーし。集まった!

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