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宿守の小妖精

撮り終えた辺りで木の葉と花弁のつむじ風と共に、宿から王冠を被った派手な格好の女のピクシーが飛び出してきた。


「ハイピクシー? あ、何かどっかで・・」


「あん?」


ティティが資料を見直そうとしていると、


「とりゃーっすッ!」


掌サイズのハイピクシーは虚空から取り出した旅芸人何かが使う『普通に大きいハリセン』を手に超高速で飛び掛かってきて、俺の頭をハリセンではたいていった!


「あ痛っ?!」


「その間抜けな反応ぅっ! ロンダ・サマークラウンの子孫やな? 自分っ!!」


「何だよ?! オイラは確かにロンダの曾孫だっ。お前こそ何だ?!」


「ウチはハイピクシーのマリユッカ・ウィスプフェス! この宿の顔役やっ」


「顔役っ?」


「マリユッカ! 兄さん、この子、御先祖様の手記にあった宿憑(やどつ)きピクシーのマリユッカだよ。確か当時の宿守(やどもり)妖精の弟子!」


「ああ~、何かそんなの書いてあったな。何だっけ・・そうだ。最後は曾祖父さんに告ったけど軽くフラれた」


「っ?! フラれてへんわーっ!! むしろウチがフったしっ! ロンダのヤツ~っっ、テキトーな事書き遺しやってからにっ!」


何か怒ってるが、ここでゼルアンが前に出てきた。


「マリユッカ、宿守に出世してたんだね。わかってると思うが森の宿がまた必要何だ。宿の補修をさせてくれないか?」


「ん? どこの筋肉ダルマかと思ったらゼルアンかいな。あんたが今の大工棟梁かい」


「ああ、久し振りだね。何度かこの小山の下、辺りまで来てみた事はあったんだがダンジョンが復活するまで、この宿の周囲も閉ざされてしまってさ・・」


「魔法ちゅうんはそういうもんや、『森の宿は亡き谷のダンジョンに対抗できる』その魔法が成立しとる、ちゅう事はダンジョンが死んどる時はこの宿がこの世あったら辻褄が合わへんやろ?」


そんなもんなのか??


「因みに私はゴゥラスの孫だよ? あの頃も話した事はなかったね」


「はぁ~ん? 知らんなぁ。まぁ魂の気配はよぉ似とる。そっちの『ちゃんとしとる方の曾孫』も、同窓会やな!」


「あ、ども。ティティです。経理何かを頑張ろうかと・・」


「俺もちゃんとしてるがっ、立ち退きだ! お前が頭なら他のゴチャゴチャしてるのを追っ払ってくれよ?」


「とりゃーっす!」


またハリセンではたかれたっ!


「あ痛っ?! 2回目??」


「皆でこの宿の『存在性(そんざいせい)』を維持してたんやっ、雑な事言わんときや~」


「もーっっ、じゃあどうしたらいいだよ?! このままだと精霊とか幻獣(げんじゅう)のねぐら、ってだけだろ?!」


「ピクシー達はウチの子分やからそのままおるで? 精霊達は仮住まいの『トーテム』を造って移すんや。ダンジョン攻略に必須やし。幻獣達は『供物』を揃えて食べさせて満足させてからそこらの森に放てば後は勝手に宿を守ってくれる。相性のいい冒険者が来たら同伴することもあるやろしな」


「そう言えば先代はトーテムの管理に四苦八苦してたな・・」


「昔、森の宿の周りにやたら幻獣が多かったのって、それでだったんだ」


何か、面倒そうな話になってきたぞ?


「で! これがトーテムと供物の素材レシピやっ! 全部周りの森で手に入るっ。いい修行にもなるやろ?」


また虚空から人が読むサイズのメモを取り出して突き出してくるマリユッカっ。


「修行ってっ、オイラ達、宿の経営に来ただけだぞ?」


「そうだよっ、僕は経理を・・」


「とりゃーっす!!」


兄弟揃ってハリセンではたかれたっ。


「あ痛いって?!」


「僕もっ?!」


「しっかりせんかいっ! ゴゥラスは腕利きの錬金術師やったし、ロンダのアホも腕利きの鍵師(かぎし)やった。あんたら2人は『商人』の修行を人並みくらいしかしとらんやろ? ボサっとしとったらついてけように何で~?『ぴえ~んっ、マリユッカ姐さん、たちけて~っっ!』でギャン泣きするハメに何でぇ??」


「そんなぁ」


「・・よーしっ、そこまで言われたら

やってやんぜ!」


俺はマリユッカからレシピのメモを引ったくった!


「ゼルアン! 初孫! 道造ってる連中が来るまでに片を付けるぜっ? ティティも手伝うんだぞっ?!」


「まぁ、薬草摘むくらいなら・・」


「乙女かっ、ボウガンとか射つんだっ!」


「え~?」


「ま、なるべく強いモンスターとの戦闘は避けよう。見れば『肉系(にくけい)』の供物も、普通の狩猟の範囲だしね」


「無機物素材の扱いは任せて。何ならストックで済みそうなのもチラホラ・・」


「ちゃんと工夫しいや~」


オイラ達は補修前の立ち退きを完了させる為、まずはトーテムと供物の素材集めをすることになった。

種類と量、結構多いぜ・・ぬぬっ。



となって、小一時間後。

ゼルアンは狩り担当。初孫は十数体のゴーレムを使って、人海戦術が必要な素材を担当。

オイラとティティは基本的に安全な宿の周りで地味に拾える森の素材を拾って回る事になった。


「何か、結局大人しく薬草摘む感じになったね」


「ぐっ」


ゴマメ扱いは避けたいのだがっ。


「地味な素材収集侮ったらあかんで~、宿の周りは特にマナが強いから、薬草摘んで魔石(ませき)拾ったりするだけで、いいウォームアップになるさかいなぁ」


「・・・」


マリユッカがオイラ達んとこ付いて回って来てんだよな。


「お前、手伝わないんだったらどっか向こうで蝶々でも追い掛けとけよっ」


「何やねんっ、ウチ、お花畑ちゃうわ!」


ん~っっ、コイツ何か面倒臭いぞ??

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