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レンダとティティの宿  作者: 大石次郎


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レイドミッション3

ナグワドが滅びた直後、カジオ隊は虎のメディシ達『ヌイグルミに戻った守護者』の強力なマナ障壁に護られ飛行して、氷と猛吹雪を突き抜け一気に6層の守護者の間に突入した。


これに呼応し、唸りを上げて風と氷のマナが逆巻き、吹雪と飛び交う氷塊が集まり、氷と吹雪の身体を持つ豚のような魔獣、守護者『ブンスケ』が出現した。

無数の眷属達も割れた氷の床面を砕いて噴出する。


「うおおっ?? この戦力だけで来ちゃったよ?!」


購入すれば高価なミスリル製の装備で身を固めたカジオは身震いしていた。


「大丈夫! 僕らの力はここで使うから!!」


「ナグワドが滅びた! 状況が変わってしまうっ」


「『ブンスケ1人分のパワー』でも暫く凌げるだろうしねぇ」


5体のヌイグルミ達はカジオ達に1人1体憑いて護る形を取った。カジオ以外の仲間達も全員上級冒険者並の装備に身を包んでいる。


「力だけなら1級認定冒険者レベルになってる! いけますわいけますわ~っっ」


「この高みにっ、いつか自力の拳でたどり着いてみせるぞぉ!!」


ブンスケと眷属群は迫っていた。


「だぁっっ、多いっ。ぐぅ、 皆、訓練通りいくぞ!!」


「「「了解!!!」」」


飛行して配置に付くカジオ達。


「『コメットストライク』!!」


小隕石群を召喚して眷属群を蹴散らすノイレミア。


「『分身・木枯らし手裏剣』!!」


旋風を纏う手裏剣を多数投げ付け、さらにそれを分身させて突進するブンスケの『右前肢』に集中させて派手に転倒させるアーママ。


巨体過ぎて転んだだけで爆発的に氷を飛び散らせるブンスケ。


カジオ、ヤッチ、ポポエルは回避しつつ、急降下する。


身を起こそうとしながら、ブンスケは『テラ・フリーズブレス』を吐き出そうとした。


「『テンペストドリル』!!」


ポポエルが高出力の光の螺旋を10発、ブンスケの口内に撃ち込んでそれを阻止する。

その隙にカジオとヤッチはさらに迫った。


メディシの力を借り『爆炎斬り・改』の構えを取るカジオ。

オルメーシの力を借り『火龍突き』の構えを取るヤッチ。


「せぇいあっ!!!」


「チェストォーーッ!!!」


口から漏れるテラフリーズブレスの凍気の嵐を切り裂きながら、カジオとヤッチはブンスケの頭部の上辺を粉砕した。


「フゴォオオォーーーッッッッ!!!!」


頭部を半分失いながらも起き上がって猛り、隕石から生き残ったファンシー個体以外の眷属群を再召喚するブンスケ。


「おぅぉっ??!!! どーやったら死ぬんだよっ?!」


「カジオ、まだ『雨季だから』あと3回くらい殺さないとブンスケは倒せないよっ?!」


「雨季ヤバっ、どぅあぁーー??!!!」


「ぬぉーーっっ?!!」


溢れた眷属群に吹っ飛ばされるカジオとヤッチだった。



この後の激闘で、カジオ達はどうにかブンスケを撃破する事に成功した。

眷属で生存したファンシー個体『オーロラケダモーン』等は「きゅーっ」と鳴きながら遁走していった。


「はぁはぁ、さすがに疲れたな・・」


「こういう急所もへったくれもない相手と忍者職、相性悪いわ・・」


「私は、ふぅ、素直に、イグエル様と、連携した方がっ、いいと思いますけどね! ふぅ~」


メディシ達との隠密行動に不満があるらしいポポエル。


しかしヌイグルミ達は構わず、塵と消えてゆくブンスケが首から提げていたプレートの真上に移動し、光の魔法式を展開し、プレートの魔族言語を平易なスエリア語に書き換えた。途端、


「ふごぉ~~~んっ!! 皆、久し振りじゃん? いえ~いっ」


擬人化した豚のヌイグルミが飛び出し、他のヌイグルミ達とハイタッチしだした。


「ノリ、軽いですわ・・」


「むぅ? プレートが本体であったか」


「いや、『名前』ですね」


「おーいっ! メディシっ、あと、ブンスケだよな? さっさとズラかろうっ! 逃げるのにまた地下に降りるのも変な感じだが」


エリクサーを一気飲みしたカジオがヌイグルミ達に呼び掛け、一同はメディシ達の特殊なテレポート能力で6層を後にしていったのだった。



・・・それからわずか7日後、雨季も明けた頃。


「抜苦与楽っっ!!!!」


「ニャーーゴッッ??!!!」


ユンシエルの光弾の援護を受けたサエモンは灼熱環境の7層守護者、火炎と溶岩の身体を持つ猫型の魔獣シュシュメムを討ち取っていた。

最後まで生存し、しつこく周囲で火炎を吹いていた『フレアケムシーノ』達等のファンシー個体達も慌てて遁走してゆく。


「よ~し、『雨季の弱体化』がまだ利いてたな」


サエモンは砕魂の峰で肩を叩きつつ、レイド団を振り返った。観測所の上級者達と、サエモンが王都から連れてきた生え抜きで構成されている。

全員疲労困憊だが、奇跡的に死亡者は出ていなかった。撃破を喜ぶ余裕は無さそうであったが。


「見事な手並みでした!」


「軽々とっ!」


だいぶ焦がされていたが、タロとミルシコットも参戦していた。


「大袈裟だって。今回はレイド団も組んでるしな・・おっ?」


話しながらエリクサーを飲もうとしたところ、ゴゴゴッッと、7層守護者の間が揺れた。

壁面、地面、天井があちこち隆起、陥没し、マグマや火炎も噴きだす。レイド団は慌てた。


「落ち着いて小グループで障壁を張り、一先ず浮遊手段を取れっ! 順次撤収!」


タロとミルシコットを含め、レイド軍は対策を取り出した。

サエモンとシュシュメムのプレートはユンシエルがマナ障壁を張って浮遊させた。


「迷宮の変動が酷いな」


「恨みを晴らし終わったからじゃない?『私怨で完結する単純な願い』だったようだし、ダンジョンの支配者である事その物には感心薄いのかもね?」


ヘヴンチョコレート+1を齧ってるユンシエル。


「もう崩壊するのか? 早過ぎるだろ?」


「違うと思う。願いは叶い済み、ダンジョンに関心が薄い。元々魔族の干渉が強い気配。となると、主導権が魔族に移りつつあるのかも・・」


「一難去ってまた一難、か」


「お先です!」


「失礼しますっ」


タロとミルシコットも去り、レイド団も次々に7層用の脱出の鏡で撤収していった。


「というか君さ、王都に居なくていいの?」


王都ではサイルカ侯爵が、


「議会と貴族会と教会内で完全に主流派になるまで即位はしない! 戴冠しても3年で退位するっ。孫程の子供と婚姻し直すのも冗談じゃないっっ」


とゴネて、複雑な事になっていた。


「よかないが・・ここもパリカリだけに任せるのも酷だろうし、どの道、最下層攻略には来るつもりだったしよ」


パリカリ達、フラ草原のワーラビット軍は、『何者か』が雨季の終わりに早々に守護者を撃破してしまった為、整理が追い付かない6層対応に追われていた。


「議会のドサ回りが嫌過ぎてさっさと戻って来たんじゃない?」


「違うぜ、高度な政治的判断ってヤツだ。残ってる新王派の貴族連中何かにも立つ瀬ってもんがよ・・」


サエモンとユンシエルは震動を繰り返し、焼け付き、煮え立ち、足場も無くなってゆく7層守護者の間の中空で、暫く軽口を叩き合っていた。



それから程無く、9層、最下層の空虚な枯れた草原と遺跡の欠片が続く、地上1層が年月を経て忘れられたような環境の奥地にある『朽ちた神殿』で、魔族達は狼狽していた。


ダンジョンマスター『焼かれた骨の女』が塵と消え始めていた。


「早過ぎるっっ、押し留めろっ! 意識を奪えないのかっ??」


「ダメだっ! 虚ろだ、捉えられないっっ」


「呪う以外の自我をロクに持たぬ事を好都合と見ていたが・・」


悔しげな、アークデビル亜種となり『ベル・エノバゥム』の固有名を得た上位魔族。

骨の女の背後に設えた魔界への門である、(きず)、はまだ殆んど開けていない。

制限と制約が付きまとう召喚術に頼らず、自由に行き来できるこの『世界の傷』は、彼らに取って極めて有益な物だった。


「挑戦者ども以外にも6層守護者を屠った者はがいるというのにっっ」


「なぜ観測できない?? 残照物か?」


「7層も破られたぞっ!」


「もうここは無理だっ、8層の守護者が使える内にイグエルだけでも潰そう!!」


「最後まで諦めるなっ! これまでの努力を信じろ!!」


「使えない骨女め!」


「いや使えないのはあの新王だ! 我らがこれだけお膳立てしてやったのにあの体たらく!!」


「だから人選を間違えるなとっ」


「魔界で見てただけの後続組が偉そうにっ!」


「何をっ! 貴様、インプからの成り上がり者の分際でっ」


「よせっ、俺達は仲間だ! 勝利を信じろ!!」


「さっきから何だ?! 熱苦しいっっ」


「・・・」


(ダメだ、程度が低い)


ベル・エノバゥムは混乱の中、同士討ちが発生しかねない様子に冷然としていた。


(今、この場で無駄口を吐いてる者どもは下級魔族か後続の中級魔族の成り上がりか、成り損ない。現状、知性を保った最上位魔族を魔界から招く事は困難・・)


いくつかの『違和感』に思考を向けるベル・エノバゥム。


(報復対象以外には攻撃性が低く自我も希薄なダンジョンマスター、王家の血、守護者の生成能力は何故か高い、愛玩的な魔物どもの不死性、歴代の中では脅威度は『平凡』な今回のダンジョンマスターに対し異常に強壮な今回の森の宿・・)


何も確証は無かった。だがある種の都合のよい偶然が重なり過ぎており、答えの輪郭が見えてきた。


「亡き谷の迷宮の永続性が終わろうとしている? いや、『終わらそうとしている』、な」


呟き、近くで争っていた格下の中級魔族3体を「オイっ?」「なっ?」「げぇ??」と驚愕させながら1本の魔剣に変化させて携えるベル・エノバゥム。

周囲の魔族達は騒然としたが、構わずに崩壊しつつある骨の女を観察した。確かに、空っぽであった。


「・・違う」


ベル・エノバゥムは骨の女の抱えた、骨の女と共に燃え続けるヌイグルミの女の子を、見た。


「お前か」


間近に近距離テレポートをしてヌイグルミの女の子に魔剣を振り下ろすベル・エノバゥム。その時、


「ニャーーゴッッ!!」


「フンゴォーッッ!!」


奇妙な魔法式でテレポートしてきた擬人化した猫のヌイグルミ、シュシュメムが魔剣を白刃取りし、同じくテレポートしたブンスケがベル・エノバゥムを蹴り飛ばした。


「ぐっ?!」


その場にメディシ達に囲まれる様にしてカジオ隊がテレポートし、カジオとヤッチが燃える女の子のヌイグルミを抱え上げた。


「アチっ?!」


「ぬぅっ!!」


他の仲間達も動く。


「コメットストライク!」


「分身・木枯らし手裏剣!」


「テンペストドリル!」


最下層の魔族達はこれでも倒し切れず、牽制効果のみ。


「ああ、姫様。貴女の『魂しか』救えなかったよぉ」


泣きながらメディシ達は骨の女を焼き続ける炎を祓い再テレポートを始めた。


「待てっ!」


魔剣で小隕石、旋風の手裏剣、光のドリルを斬り払いながらベル・エノバゥムは突進したが、その凶刃は空を斬り、カジオ達は逃れていった。


魔族達は「失敗だ!」と益々混乱しだす。


「落ち着け!『身体』は我らが確保した、使える。タネがわかればやりようがある・・我らを出し抜くとは、小賢しいヤツら!!」


燃える骨の女を魔剣に喰い尽くさせ、階位が『デビルロード』に進化したベル・エノバゥムはその魔眼に憎悪を滾らせていた。

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